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6-5 私の故郷

「それではロザリー様。お気を付けてお帰り下さいね。『フロン』まで御同行出来ずに申し訳ございません」


ホームに立った私にノーラさんが申し訳なさげに頭を下げて来た。


「いいえ、そんな…。ここまで迎えに来て頂いただけでも申し訳ないくらいです。それに元々『セントラルシティ』には1人で降り立っているのですから大丈夫ですよ」


「本当に…申し訳ございません。あ、一つユーグ様から伝言をお預かりしております」


「伝言…ですか?」


「はい、週に1度は手紙を書いて出して欲しいとの事でした」


「お手紙ですね?分りましたとお伝え下さい」


「ありがとうございます」


そこまで会話をした時―。



ボーッ…


私の背後でホームで待機していた蒸気機関車が大きな汽笛を鳴らし、車輪から蒸気が吹きだし始めて、足元を蒸気で覆い隠す。


「あ…そろそろ出発のお時間ですね。どうぞお乗りください」


ノーラさんがホームに設置された大きな柱時計を見た。


「はい」


手摺に掴まり汽車に乗り込む寸前、私はノーラさんを振り返った。


「あの、ノーラさん」


「はい」


「ユーグ様に…有難うございますと伝えて下さい」


「ええ。勿論です」


ノーラさんはニコリと微笑む。


「それでは…私、行きますね」


「ええ、良い休暇をお過ごし下さい」


「はい」


笑みを浮かべて私は汽車に乗り込んだ―。




****


ガタンゴトン…

ガタンゴトン…



揺れる汽車の中、私は窓の外の景色を眺めていた。

驚くべきことにユーグ様が用意して下さった座席は1等車両で2人掛けの個室の車両になっていたのだ。座り心地の良い椅子に広々とした席…。


「こんなに上等の席を用意して貰えただけでなく…『フロン』に里帰りさせて頂けるなんて…」


ユーグ様に申し訳ない気持ちで一杯だった。公国に嫁げば…ひょっとすると私は幸せになれるのかもしれないが、やはりとてもではないけれどユーグ様と結婚する未来を描くことが出来なかった。それに第一…所詮私はユーグ様にとっての身代わりの相手でしか無い事は分り切っていた。


でも仕方が無い。これが私の運命。


お母様の娘として生まれて来た私の…。


そして、そっと目を閉じた―。




****


 

 午後4時―


汽車に揺られて、約5時間後…ついに終着駅である『フロン』に到着した。私は足元に置いたトランクケースの持ち手を握りしめ、ガラガラと引きずりながら汽車の出口を目指した。



 降りる乗客が殆どいない、さびれた田舎の町『フロン』。


これと言った特産品もなければ、観光地でも無い田舎の辺境の地。その為、この町に住む人々は非常に貧しい生活をしている。ただ不思議な事に花だけは良く育つ大地であった為人々は花を育て、外の町や都市に出荷して生計を立てている。


「フフフ…お父さんたち…私が突然帰ってきたら驚くかしら?」


その時の光景を想像すると笑みが浮かぶ。


そして私は辻馬車乗り場を目指した―。







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