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5-8 招かれた部屋

 花屋を出て20分後―


私はユーグ様が宿泊しているホテルに到着した。


「ふぅ…やっと到着したわ…」


台車をホテルのエントランス前で下ろすと私はため息をついた。


だけど…。

嫌だ…怖い。会いたくない…。


どうして卒業までそっとしておいてくれないのだろう?どうせ卒業すれば私はユーグ様に嫁ぐことになっているのに…。それとも私が条件を満たしているか確認に来たのだろうか?


「行かなくちゃ…お待たせしてしまうわ」


ホテルの脇道の細い路地裏に台車を置くと、大量の花束を抱えてフロントマンに案内してもらいユーグ様の宿泊している部屋に向かった。




 5階建てホテル最上階の豪華客室。


そこがユーグ様が宿泊している部屋だった。


コンコン


扉をノックすると扉の中から声が聞こえた。


「どちらさまですか?」


それは若い女性の声だった。


「ロザリー・ダナンと申します」


するとすぐに扉が開かれ、現れたのはジャケットにロングスカート姿の若い女性だった。


「はじめまして、私はユーグ様の秘書を務めておりますノーラ・クリントと申します。どうぞノーラとお呼び下さい」


「は、はい…宜しくおねがいします。ノーラさん」


頭を下げて挨拶するとノーラさんが怪訝そうな顔をした。


「ロザリー様、貴女は特別なお方なのですよ?どうぞ私の事はノーラとお呼び下さい」


「い、いえ…そんな。仮にも年上の方ですし…」


思わず恐縮するとノーラさんは言った。


「…分かりました。ではその呼び方で結構です。どうぞ中へお入り下さい」


「はい…失礼致します」


大きな花束を抱えながら部屋の中に足を踏み入れ、私は驚いてしまった。部屋の中は私の通う学校の教室よりもずっと広かったからだ。


「広いお部屋ですね…。」


「ええ、でも部屋はここだけではありません。あちらの奥にも部屋がございまして、ユーグ様はそちらの部屋にいらっしゃいます。どうぞこちらへ」


「はい」


ノーラさんに案内されて私は部屋の奥に向かった。すると大きな扉が目に止まった。


コンコン


ノーラさんが扉をノックすると奥からユーグ様の声が聞こえた。


「誰かね?」


「ノーラです。ロザリー様をお連れしました」


「ああ、そうか。では中に入ってくれ」


「はい」


ノーラさんは返事をする扉を開けた。




ユーグ様は部屋に置かれた書斎机に向かって仕事をしていた。けれども私が部屋に入ると顔を上げてこちらを見た。


「ロザリー、花を届けてくれたのだな?大変ではなかったか?」


「いえ…大丈夫です。お花はどうすれば宜しいでしょうか?」


緊張しながら尋ねるとユーグ様が言った。


「ああ、それならノーラに渡してくれ」


「はい。ノーラさん、お花お願いします」


「お預かり致します」


ノーラさんは花束を受け取ると、失礼しましたと言って部屋を立ち去っていった。


そして残されのは私とユーグ様だけになった。


「さて…とりあえずそこのソファに座って話でもしようか?」


ユーグ様は笑みを浮かべて私を見た―。


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