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5-3 店に訪れた人物

「そう?辞めないでくれるのね?嬉しいわ」


フランシスカ様は私の手をキュッと握りしめて来た。


「あ、あの…。そ、そんな事をすると手を汚してしまいますから…」


私の手は花をいじっていたから汚れている。


「いいのよ、そんな事気にしなくて。でもレナートに何か嫌な事を言われたら私に言ってくれる?彼にはきつく言っておくから」


フランシスカ様は私の手を握る力を強めると言った。


「は、はい。ありがとうございます…」


顔を赤らめて頭を下げる。そんな様子を見つめていたイアソン王子がやがてフランシスカ様に言った。


「そろそろ行こうか。ロザリーの仕事の邪魔をすると悪いから」


「え、ええ。そうね…あ、そうだわ」


フランシスカ様は私の手をパッと離すと、店先で売られている花を吟味しながら手に取っていく。そして10本程の花を抜き取ると私に手渡して来た。


「このお花…頂ける?」


「はい。ありがとうございます。今おいくらか聞いて来るので少々お待ち下さい」


花を受け取ると頭を下げ、私は店番をしているカトリーヌさんの元へ向かった。



「カトリーヌさん」


「あら、どうしたの?ロザリー。その花…ひょっとしてお客さん?」


「はい。同じ学園の侯爵令嬢の方なのです。このお花を買って下さるそうです」


するとカトリーヌさんは目を丸くした。


「まぁ…さすがは侯爵令嬢ね。選んでくれたお花…すべて高級品だわ。ランやバラ、ダリアを選んでくれるなんて」


「え?そうなのですか?」


まさか…フランシスカ様…ひょっとしてお店の為に…?


「それで、全部でいくらになるのですか?」


「4000ダルクになるわ」


「え?!4000ダルク?!」


私のアルバイトの時給が800ダルクだから…5時間働かなければ買う事が出来ない。それを惜しみもせずに…買えてしまうなんて。やっぱり私とフランシスカ様ではまるきり釣り合いが取れっこない。


「どうかしたの?ロザリー」


「い、いえ。何でもありません。では花束にして置いて頂けますか?金額を伝えてきますので」


「ええ、了解」


そして私はフランシスカ様とイアソン王子の元へ向かった―。



「あ、フランシスカ様…」


店先にフランシスカ様とイアソン王子の姿が見えたので、声を掛けた時―。


え…?


私は息を飲んだ。何と2人と向かい合わせにレナート様が立っている姿が目に入ったからだ。


な、何故レナート様がここに…?


思わず物陰に隠れて、私は3人の様子をうかがった。




「…どういうつもりだ?レナート。一体何故この店に来たんだ?」


イアソン王子の非難めいた声が聞こえて来る。


「この店に花を買いに来ただけです。でも…今日も2人は一緒だったんですね?」


レナート様の声だ。


「そうよ?悪いの?それよりも貴方が花を買うとは珍しいわね」


フランシスカ様が強い口調でレナート様に言っている。


「悪いとは思っていないよ。2人はこれから一緒に出掛けるんだよね?楽しんでくるといいよ」


「…本心でそんな事言ってるのか?」


「ええ。本心です。イアソン王子」


「兎に角…花なら他の店で買って頂戴。二度とこの店には来ないで」


「…分ったよ。他ならぬフランシスカのお願いだからね」


それだけ言うと、レナート様は背中を向け、店から立ち去って行った―。







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