4−6 始めてのアルバイト
噴水広場を私は口を結んで通り抜けた。そうでなければ涙が溢れそうだったから。そして広場を抜けたところで今迄我慢してい涙がポロポロと流れ出した。
「う…うぅう…」
嗚咽しながら、涙を拭いながら1人で誰もいない寮目指して歩き続けた。
辛い…とても辛かった。しかも相手は初恋の人。そう、レナート様は何の悪気も無い。フランシスカ様が大事で…常に一番に考えるのはあの方の事だけ。
フランシスカ様の幸せが…レナート様の幸せなのだから、その幸せを壊す人間は許せないのだろう。
「私…。きっともうレナート様に嫌われてしまったわよね…?」
だって私はレナート様にとってはフランシスカ様の好きなイアソン王子に近付く嫌な人間と認識されてしまっただろうから…。
もうイアソン王子には絶対に関わらないようにしなければ。それだけじゃない、フランシスカ様にも、そしてレナート様にも…。
そして私は泣きながら寮へと戻った―。
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翌朝7時―
「やだ…ひどい顔…」
昨夜泣きながら眠ってしまった為、私の顔は酷いことになっていた。目が腫れぼったく、赤い目をしている。
「今日からアルバイトなのに…顔でも洗えば少しはまともになるかしら?」
顔を洗う為に石鹸とタオルを持って私は洗面所へ向かった―。
「少しはマシになったかしら?」
顔を洗って鏡覗き込んで見る。先程目が覚めた直後に比べると目の腫れは消えている。
「うん、大丈夫そうね」
そして私は着替えを始めた。
今朝も寮母さんと2人で朝食を食べていた。
「ロザリーさんは今日はどう過ごすのかしら?」
スープを飲みながら寮母さんが尋ねてきた。
「はい、今日からアルバイトを始めるんです」
「あら、そうだったの?何時から何時までお仕事するのかしら?」
「はい、10時から17時までです」
「あら、結構長い時間ね?」
「ええ、でも12時から13時まではお昼休みを頂くことになっているんです」
「そうなのね…偉いわね。まだ16歳なのにお仕事するって」
寮母さんがニッコリ笑いながら言う。
「そ、そんな事はありません…」
だって私も2人の弟たちももっと小さい頃から働いていたから。でもその事実を寮母さんに言う事は出来なかった。だって恐らく寮母さんは私の事をお金持ちの平民と思って見ているだろうから。ここ『リーガル学園』はそういう学園だったから―。
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食事を終えて、自室に戻るとアルバイトへ出かける準備を始めた。カバンの中には以前購入した古着が入っている。この古着を来てお店で着替えをさせてもらうつもりだった。
「まさか…こんな古着を着て寮を出るわけにはいかないものね」
時計を見ると9時20分になっていた。
「そろそろ出掛けましょう」
そして私は戸締まりするとアルバイト先へと向かった―。
9時50分―
「おはようございます」
花屋に到着すると私は入り口から覗き込んで声を掛けた。
「あ、来たわね?ロザリー」
カトリーヌさんが笑顔で出てきた。
「はい、今日から宜しくおねがいします」
頭を下げるとカトリーヌさんが手招きした。
「ロザリー。こちらへいらっしゃい」
連れてこられたにはお店の裏口だった。そこにはたくさんの花が木の台の上に乗せられていた。
「さっき、届いたお花なのよ。皆同じ種類の花ななんだけど、それぞれ色別に分けてバケツに入れてくれるかしら?」
「はい、分かりました。着替えを済ませたら始めます」
早速私の仕事が始まった―。




