3−3 私からの提案
「本当かい?フランシスカは何が欲しいと言っていたんだい?」
レナート様が真剣な瞳で尋ねてくる。
「はい。フランシスカ様は最近あまり眠れない日々が続いているようで、安眠効果が得られる品物が欲しいそうです」
「安眠効果…。それはどんな品物なんだろう…」
腕組みをして考え込むレナート様に言った。
「あの、でしたらハーブなどはいかがですか?」
「ハーブ?」
「はい。私の住んでいた村は花やハーブを特産品として生産していました。ハーブの中には安眠効果を得られる種類もあるんですよ?」
「そうなのかい?ロザリーはハーブに詳しそうだね。そう言えば町には女の人達に人気がある雑貨店があるんだ。そこの店に行けば安眠効果のある品物が買えるかな?」
「さぁ…どうでしょうか?私はそのお店に行った事が無いので、何とも言えないのですが…」
すると、レナート様が言った。
「そうだ、ロザリー。もし良かったら今日、放課後付き合って貰えないかな?一緒にその雑貨屋さんに付き合って欲しいんだ」
「レナート様…」
レナート様のお誘いは本当に嬉しい。だけど私は平民でレナート様は公爵家。そして何より婚約者がいらっしゃる。
「申し訳ございません…。以前もお話しましたが、やはり私は一緒に出かけるわけには参りません」
「そうか…残念だな…でも仕方がないか…」
レナート様がため息を付いた。本当は…役に立ちたい。一緒にお出かけだってしたい。
「あの、お店の名前はご存知ですか?」
「ごめん…店の名前まで分からないんだ。場所もうまく説明できなくて…でも学園からはそれほど遠くないし、メインの大通りを歩いていけば辿り着く店なんだけどね」
レナート様はガゼボにいる2人を悲しげな目で見つめながら言う。きっと、本当なら2人の前に言ってイアソン王子に文句の一つでも言いたいかもしれない。でも相手は王子様なので、言いたいことが合っても言える立場では無いのだろう。
「レナート様…。やはりフランシスカ様のお心を射止めるには…望んでいるプレゼントを差し上げるのが一番の近道かもしれません。私が本日、放課後お店を探して安眠効果のある品物が売っているか見てきます。そして明日レナート様に報告するというのはいかがでしょうか?」
「え…?でもいいのかい?そんな事してもらっても…」
「はい、大丈夫です。私もハーブの品物が欲しいので良いものがあれば買ってこようと思っていますから」
「ありがとう、ロザリー。それじゃ悪いけど、頼んでいいかな?」
「はい、お気になさらないで下さい。ついでですから」
「あ、2人とも立ち上がった」
その時、レナート様が声を上げた。ガゼボで話をしていたフランシスカ様とレナート様が立ち上がり、手をふるとそれぞれ別の方向へ向かって歩き出したのだ。
「ごめん、ロザリー。僕はフランシスカの所へ行ってくるよ」
「はい、では私も教室へ戻ります」
「うん。それじゃあ」
レナート様はそれだけ言うと、1人で歩いているフランシスカ様の元へ走っていく。
「…」
私はその後姿を悲しい気持ちで見送ると、教室へと足を向けた―。




