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11-12 手紙の返事は

「今夜は素敵なお店に誘って頂き、ありがとうございました」


ホットサンドのお店を出て、帰りの馬車の中で私は2人にお礼を述べた。


「うん、いい店だったよね?また一緒に来ようね」


ルペルト様はニコニコしながら返事をしてくれるけれども、肝心のイアソン王子は窓の外を眺めているだけで無反応だった。


…何故だろう?

私は何かイアソン王子の機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか?


「あの…イアソン王子…」


恐る恐る声を掛けた。


「何だ?」


こちらを振り向きもせずに、返事だけしてくる。


「あ…あの、今夜はお誘い頂き…ありがとうございました」


頭を下げてお辞儀をした。


「そうか。なら今度からはルペルトと一緒に食べに行くのだろう?良かったじゃないか」


「え…?イアソン王子…?」


何故か冷たい返事をされてしまった。


「イアソン王子、何もそんな言い方をしなくても…」


ルペルト様が窘めた。


「何でだよ、ついさっき2人であの店にまた食事に行く約束をしていただろう?」


「「あ…」」


私とルペルト様は互いに顔を見合わせた。

確かにルペルト様に誘われて返事をしたけれども、それはイアソン王子も一緒に行くものだとばかり思っていたのに…。


「イアソン王子、何も僕はロザリーと2人だけで行こうとは思ってもいませんでしたよ?」


「はい、私もそのつもりでしたけど?」


「フン。どうだかな」


ボソッと呟くイアソン王子。


「本当ですよ。イアソン王子、今度の週末早速また3人であの店に行きましょう」


「…分かったよ」


ルペルト様の言葉にようやく納得したのか、イアソン王子は返事をしてくれた。

きっとイアソン王子は自分だけが除け者扱いされたのだと勘違いしてしまったのかも知れない。


拗ねた様子で窓の外を眺めるイアソン王子を、少しだけ可愛いと不謹慎ながら私は思ってしまった―。




****


「どうも本日はありがとうございました」


女子寮の前で馬車を降りた私は2人にお礼を述べた。


「いや、食事に誘ったのはついでだ。本当はフランシスカからの手紙をロザリーに渡すのが目的だったからな」


「でも…もうお返事は書けませんね」


私は手紙を握りしめて俯いた。


「ロザリー…」


ルペルト様が私の名を呼んだその時…。


「いや、返事なら書けるぞ」


「え?」


イアソン王子の言葉に顔を上げた。


「フランシスカはレナートの屋敷で暮らすことになっているからな。住所なら知っている。もし返事を書いたなら俺に言えばいい。」


「はい、ありがとうございます」


「それじゃ、もう遅いからロザリーは寮に戻ったほうがいいよ」


ルペルト様が声を掛けてきた。


「はい、分かりました。では失礼致します」


「またね」

「またな」



そしてルペルト様とイアソン王子に見送られながら、私は寮に戻った―。





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