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11-11 気付かなかった私

「フランシスカ様からの手紙…」


封筒を見つめながらポツリと呟いた。


「実はフランシスカとレナートだが…明日、自分たちの国に帰ることになったんだ。レナートが明日で退院するからな」


イアソン王子の言葉に驚いた。


「え?!明日退院で、もうその日の内に国に帰るのですか?」


「そうだ。あの目では慣れるまでには生活に不自由するからな。入院期間中は病院が面倒を見てくれるが、退院すればそうはいかない。それにもう学園は退学しているんだ。今更ここに残っていても仕方ないだろう?」


その時…。


「お待たせ致しました」


店員さんが私達の前に出来上がったホットサンドを持ってやってきた。そしてテーブルの上にお皿を置いていくと、「ごゆっくりどうぞ」と言って去って行った。


「これがホットサンドですか…とても美味しそうですね」


お皿の上に乗ったきつね色に焼けたホットサンドは食欲をそそられる。


「うん、このホットサンドはとても美味しいんだよ。僕はまだ食べるのは2度めだけど、すっかりこの店がお気に入りになったよ」


ルペルト様が嬉しそうに話してくれた。


「そうだな、ホットサンドは出来立てが一番美味しいから、食事をしながら食べよう」


「そうですね」

「頂きましょう」


イアソン王子の言葉に私とルペルト様は返事をし…3人で出来たてのホットサンドを頂くことにした。




「美味しいですね…」


熱々のパンに溶けたチーズがこんな美味しいとは思わなかった。


「そうだろう?この店は価格も安いし…週末はの夜はこの店で食事をしたらどうだ?もし、1人で入るのがどうしても嫌なら…俺が…その、まぁ付き合ってやらないことも無いが…な」


何故か言葉を濁すような言い方をするイアソン王子。


「いえ…私の方から王族であるイアソン王子をお誘いなんて、そのようなこと出来ませんから…」


どうしてイアソン王子はいつも私を困らせることばかり言うのだろう?


「又お前は…もういいっ!」


すると何故か王子は不機嫌になって、ホットサンドを口にしている。


「アハハハ…イアソン王子。もっと素直に言ったほうがいいですよ?」


ルペルト様は笑いながイアソン王子を見ている。


「え?」


どういう意味だろう?

すると次にルペルト様が私に声を掛けてきた。


「それじゃ、ロザリー。週末はお互いに寮の食事も出ないし…時々ここのホットサンドを一緒に食べに来ない?1人で部屋で食べるのは味気ないよね?アルバイトが終わる時間に迎えに来るから」


「ルペルト様…」


心臓の音がドクンドクンと煩いくらい鳴っている。

何故…ルペルト様は私にこんな私に優しく接してくれるのだろう?そんな態度を取られると勘違いしてしまいそうになる。


ルペルト様には婚約者がいるのに…。


けれど、気づけば私は返事をしていた。


「はい、お願いします」


「!」


返事をした時…私は浮かれていたので全く気付いていなかった。


私が返事をしたその瞬間…イアソン王子が酷く傷ついた表情でこちらを見ていたということに―。

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