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10-21 レナート様の怪我

ガチャ…


手術室の扉が開き、手術衣を着たお医者様と数名の看護婦さんが中から現れた。


「先生っ!彼は…レナートはどうなったのですかっ?!」


フランシスカ様は泣きながらお医者様に駆け寄った。


「彼は…命に別状はありませんでしたが…左目は…残念ながら…失明してしまいました…」


「「「「!!!!」」」」


私達は一斉に息を飲んだ。


「そ、そんな…」


真っ青になったフランシスカ様は、そのまま糸が切れたかのように崩れ落ちてしまった。


「キャアッ!!フランシスカ様っ!!」


既のところで、すぐ側に立っていた私は身体を支えた。


「フランシスカッ!!しっかりしろっ!」


イアソン王子が駆け寄り、私からフランシスカ様を抱き上げると直ぐ側のベンチソファに寝かせた。


「先生…し、失明って…ほ、本当ですか…?」


私は声を震わせながら尋ねた。


「ええ、残念ですが…大事な目の神経を切られていました。もう…切られた目を開けることも出来ないでしょう」


「そ、そんな…!」


足元から崩れ落ちそうな感覚になってしまい、身体がぐらりと傾いた。


「危ないっ!ロザリーッ!」


背後からルペルト様が支えてくれた。


「それで…彼の様子は今どうなのですか?」


ルペルト様がお医者様に尋ねる。


「彼は今、手術が終わり…麻酔が効いて眠っています。ですが、まだ16歳ですよね?すぐに御家族に連絡を入れて来ていただいたほうがいいでしょう」


「俺が連絡を入れます」


すると、フランシスカ様の側についていたイアソン王子が名乗りを上げた。


「俺は彼の家族のことをよく知っています。すぐに電報を打ってきます」


そして次にイアソン王子は私とルペルト様を見た。


「ロザリー、ルペルト。フランシスカとレナートを頼む」


「はい、分かりました」

「ええ、王子」


私達が返事をすると、すぐにイアソン王子は急ぎ足で去って行った。


「先生、この女性を休ませて上げる場所をお借りできませんか?」


ルペルト様は気を失ってベンチソファに横たわるフランシスカ様を見た。


「ええ、今患者を特別個室に移しますので…一緒にそちらで休むと良いでしょう」


こうして私達は皆で一緒に特別個室に行くことが決定した―。



****



 未だに意識が戻らないフランシスカ様をストレッチャーに乗せた時…



ガラガラガラガラ…



手術室から数人の看護婦さんたちがストレッチャーに乗せられたレナートを連れて現れた。


「レナート様…」


ストレッチャーに乗せられレナート様は左目は完全に包帯で覆い隠され、真っ青な顔で意識を失っている。

初めてその様子を目の当たりにした時、改めて実感した。


ああ…本当に…レナート様は左目を失明してしまったのだと―。

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