10-20 泣き崩れるフランシスカ様
やっぱりフランシスカ様は待ち合わせ場所に来ようとしていたんだ。
けれど、レナート様が隠れて様子を伺っていたから…怖くなって逃げてしまった。
「いいんですよ?そんな事は気にしなくても…。それでその後はどうしたのですか?」
泣きじゃくるフランシスカ様に優しく尋ねた。
「え、ええ…。そ、それで…その後は何処へ行こうか迷っていたのだけど…ロザリーが教えてくれた…雑貨屋さんに買い物に行こうかと思って…店に…行ったの」
「そうだったのですか?実は私もフランシスカ様を探しにあのお店に行ったのですよ?」
「え…?貴女も…私を探してくれていたの…?」
「はい、そうです。お店に行った後はどうされましたか?」
「そこで買い物をして…お店を出て歩いていたら…知らない男の人達に囲まれたの。一緒に何処かへ遊びに行こうって…すごくガラの悪そうな人達だったわ…。私、怖くて声も出せなくて…」
その時のことを思い出したのか、フランシスカ様が自分の肩を抱きしめてガタガタと震え始めた。
「そ、そして…無理やり路地裏に引っ張り込まれて…。その時、レナートが…駆けつけてくれたの…」
「え?レナート様が…?」
まさか、レナート様はフランシスカ様を探し回っていた…?
「それでレナートは私を助けようと、1人で男の人達に立ち向かって…それで…」
そこでフランシスカ様は一度言葉を切ると、泣き崩れた。
「1人の男の人が…ナイフを取り出して…いきなり切りつけてきたの…レ、レナートの目を…!」
「…!」
私はその言葉に息を飲んだ。
そんな…よりにもよって目を切りつけてくるなんて…!
「レナートは左目を押さえて…叫んで…お、男の人達は驚いて逃げて行ったわ…」
「そうだったのですか…」
きっと男の人達は刃物で切りつけるつもりは無かったのだろう。ほんの脅しのつもりが…実際はレナート様を切りつけてしまった…。
「レナートは地面に倒れてしまって…それで私…助けを呼ぶ為に大きな声を上げたら…あなた達が来てくれたのよ…」
フランシスカ様は涙で濡れた瞳で私を見つめた。
「フランシスカ様…」
「ど、どうすればいいの…。レナートは私を助ける為に…もし、万一彼に何かあったら私…!」
「落ち着いて下さい、フランシスカ様。まずは…先生を信じましょう?」
「ロザリー…」
その―。
バタバタと廊下を走る音がこちらにむかって近付いてきた。
その足音はイアソン王子とルペルト様だった。
「フランシスカッ!ロザリーッ!」
イアソン王子が私達の名を呼んで掛けつけてきた。
「どうなんだ?!レナートの様態は?!」
イアソン王子は私達の元へ駆けつけてくるとすぐにフランシスカ様に尋ねてきた。
「あ…イアソン王子…!」
フランシスカ様はイアソン王子にすがりつくと泣き崩れてしまった。
「レナートが…レナートが…っ!」
「落ち着けっ!フランシスカッ!」
イアソン王子はフランシスカ様に声を掛け続ける。
「ロザリー、レナートはどうなったのかな?」
ルペルト様が私に尋ねてきた。
「はい、それが…」
そこまで言いかけた時…。
ガチャッ
手術室の扉が開いた―。




