10-19 倒れていた人物
「どうしたんですかっ?!」
ルペルト様がうずくまって青ざめているフランシスカ様に駆け寄った。
「あ…こ、この人が…」
フランシスカ様は真っ青になり、ガタガタと震えながら地面に倒れている人を指さした。
「フランシスカ様っ!」
駆け寄って声を掛けると、フランシスカ様は顔を上げて私を見た。
「あ…ロザリーッ!た、助けて…!レナートが…っ!!」
そしてフランシスカ様は泣き出した。
「え…?ま、まさか…倒れている人はレナート様なのですかっ?!」
地面に倒れて、呻いている男性がレナート様だなんて…っ!
「う…ううっ…」
レナート様は右手で顔を押さえている。
そして…。
「あっ!怪我をしているのかっ?!」
レナート様の様子を伺っていたルペルト様が驚きの声を上げた。
「えっ?!」
見ると、顔を押さえているレナート様から血が溢れ、路面を赤黒く染めていた。
「大変だっ!誰か人を呼んでくる!2人はここで彼を見ていてくれっ!!」
ルペルト様はそれだけ言うと、大通りを目指して駆け出していった。
「レナート様…しっかりして下さい…」
私は声を掛けるも、レナート様は呻くだけで返事をしない。
「レナート…どうすればいいの…?わ、私のせいで…」
フランシスカ様は涙を浮かべながら震えている。
フランシスカ様…。
私はレナート様を見た。フランシスカ様の様子気になったけれども、今は一番気にするべき相手はレナート様だった。
「レナート様、今人を呼んできて貰っているので、もう少し我慢して下さい」
「う…」
レナート様は聞こえているのか、いないのか呻いている。
その時…。
「こちらですっ!早く来て下さいっ!」
路地横からルペルト様の声が近付いて来た。
良かった…。
ルペルト様が人を連れてきてくれたんだ…。
****
1時間後―
私とフランシスカ様は救急病院に来ていた。
ルペルト様はイアソン王子に連絡する為に学園に戻っている。
「…」
項垂れて、手術室の前に座るフランシスカ様に声を掛けた。
「フランシスカ様…そろそろ何があったのか話して頂けますか?」
「え、ええ…」
フランシスカ様は手にしていたハンカチを強く握りしめると、ぽつりぽつりと語り始めた。
「わ、私…今朝貴女との待ち合わせ場所に行ったら…、レナートが貴女の住む女子寮の近くで木の陰から様子を伺っている姿を見てしまったの…」
「え?!そうだったのですか?!」
私の言葉に黙って頷くフランシスカ様。
「そ、それで…怖くなって…待ち合わせ場所に行けなくなって…貴女には悪いと思ったけれど…逃げてしまったの…」
そしてフランシスカ様は涙をこぼした―。




