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10-4 強引な頼み

「そ、それはまた…随分唐突なお話ですね…」


それだけ答えるのが精一杯だった。


「うん、突然の申し出だったから本当に驚いたよ」


レナート様は何を考えているのか知らないが、淡々と話している。


「それで…どうなったのですか?」


けれど恐らくフランシスカ様がレナート様と婚約解消を申し出ても、公爵家とでは身分が違う。

通常身分が下の者が自分たちより上の者達に婚約解消を訴えるなどあり得ない話だ。


「両親は当然聞き入れなかったよ。勿論僕もだけどね。だって僕は子供の頃からずっとフランシスカだけを好きだったのから。彼女以外に将来の伴侶なんて考えられないよ」


「そうですか…」


以前の私ならレナート様の口からフランシスカ様の話を聞かされて胸を痛めながら聞いていただろう。


しかし今となっては違う。


逆にレナート様に執着されているフランシスカ様が気の毒に思えてきた。


お気の毒なフランシスカ様…。


イアソン王子がフランシスカ様の気持ちを受け入れてあげれば、2人は婚約を解消することが出来るかもしれないのに…。


そんなことをぼんやり考えていると、レナート様が声を掛けてきた。


「ねぇ、ロザリー」


「はい、何でしょう?」


「もう一度協力してくれないかな?」


「協力…?」


嫌な予感しか無かった私はそれ以上のことは口に出せなかった。


「うん、もう一度僕とフランシスカの仲を取り持って欲しいんだ」


「それは…」


以前の私なら公爵という爵位を持つレナート様の頼みを聞いていたかもしれない。

けれど今の私にはそんな気持ちは皆無だった。


私はレナート様にフランシスカ様の好きなイアソン王子との仲を疑われて、散々傷つけられてきた。


しかも初恋の相手から…。


私の恋心は無残に砕け散り、レナート様に対する恐怖しか残らなかった。


今だって、こうして2人きりでベンチに並んで座っていることが苦痛でたまらないのにレナート様の頼みを聞くなんてことは到底出来そうに無かった。


「どうかな?ロザリー」


レナート様は真剣な眼差しを向けてくる。


でも、私の答えはもう決まっている。


「申し訳ございませんが…お断りさせて頂きます」


「え?何故なんだい?」


あまりにも意外そうな表情をレナート様は向けてきた。まさか私が断るはずはないと思っていたのだろうか?


「やはり私のような平民がお2人の事に口を出すのはおこがましいからです。…失礼致します」


「そんな!以前は協力してくれたじゃないか!」


そしてレナート様は突然私の右手首を強くつかんできた。


「あ、あの…放して下さい…」


あまりの強い力に眉をしかめたその時―。


「何をしているんだっ!」


突然すぐ傍で声が聞こえた。


思わず振り向くとそこにはイアソン王子とフランシスカ様が立っていた―。





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