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2−5 家庭の事情

「あ、あの…でしたら離れて歩きますので…一つだけ案内して頂きたいお店があります」


私の言葉にレナート様は返事をした。


「うん、いいよ。それで?どこの店に行きたいのかな?」


「古着屋さんに…案内してもらえないでしょうか…?」


「え?古着屋…?」


レナート様は戸惑った表情を見せた。あ…そうか。レナート様は公爵家の方でお金だって沢山持っている。そんな方が古着屋さんなんて知るはずも無いのに…。


「す、すみません。今の話は…忘れて下さい。それでしたらどこか洋品店を教えて頂けますか…?」


「洋品店なら知っているけど…でも古着屋さんに行きたいんだろう?何か理由があるなら教えて貰えないかな?」


レナート様が優しい声で尋ねてくる。どうしよう…でもレナート様なら口が固そうに見えるし…身分の偏見や貧しい人を見下すような方にも思えない…。


「あの…それでは聞いて頂けますか…?」


「うん、教えてもらいたいな」


「私…服を買いたいのです」


「服を?ああそうか…。でも服なら…洋品店で…」


言いかけて、レナート様はアッという表情を見せた。


「もしかして…?」


「あの…誰にも言わないと約束してもらえますか?」


ためらいがちにレナート様に尋ねた。


「うん、約束するよ」


「私の実家…とても貧しいんです。ある方の援助でこの学園に入学してきたのです。だから…お金にゆとりが無くて、服も新品を買う事が出来なくて…」


「ロザリー…」


レナート様が沈痛な面持ちで私を見る。


「なので、古着屋さんを探していたのですが…すみません。ご存じありませんよね?申し訳ございませんでした。レナート様に妙なお願いしてしまって」


頭を下げた。


「私、やっぱり…1人でお店探します。これ以上一緒にいるとレナート様に妙な噂がたってしまうかもしれませんから」


そして背を向けるとレナート様を残して正門を出た―。




****


「ふぅ…」


正門を出た私はため息をつき、お金が入っているポシェットをギュッと握りしめた。私の今月自由に使えるお金は3000ルーン。これだけのお金ではとても新品の洋服を買うことが出来ない。


「…こんなことなら弟の洋服を持ってくるべきだったわ…」


ポツリと呟く。本当はどうしても一緒にレナート様と町を散策したかった。けれども同じ学園で、しかも平民である私と公爵家のレナート様が一緒に町を歩いている姿を他の学生たちに見られたりしたら?絶対にレナート様の評判が下がってしまうに決まっている。ましてやフレデリカ様という美しい婚約者がいる方なのに…。


 私は村に住んでいる時は農作業をすることが多かった。農作業はスカート姿ではやりずらい。そこで弟の服を借りて、私は農作業をしていたのだ。帽子をかぶり、髪の毛を帽子の中に隠していると、男の子に間違われていた。だから…古着屋さんで男の子の服を買って、着替えればレナート様と町を歩けるかと思っていたのだが…。


「考えてみれば…レナート様はあんなにも素敵な服を着ているのに…古着屋で買った服を着た私と歩いているだけで…悪い噂が立つかもしれないものね…」


仕方がない…ひょっとすると、今学園に戻ればレナート様がいるかも知れないから…適当に時間を潰してから戻ることにしよう…。


俯くと私はあてもなく、トボトボと町を歩き始めた―。






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