8-14 知らされた事実
「私は…別に周りに流されているだけのいい子と言う訳ではありませんから…」
「ふ~ん…それはどう言う意味なのかな?」
イアソン王子は頬杖を突きながら私を見た。
「別に…言葉通りの意味です」
イアソン王子はまだ知らない。私とユーグ様の間で取り交わした、ある賭けを…。
「まぁ、別に関係ないけどね…。けれど、ロザリー。もう君がこの国に来ている事は大公は御存知だよ。だから君を貴賓として扱わないといけないんだよ」
「えっ?!」
その言葉に驚いた。
「ど、どうしてユーグ様は御存知なのですか?」
「それは君を『ヘンデル』に連れて行くと決めた日に大公に電報を打ったからさ」
「何故そのような事を…?」
自分の声が震えているのが分かった。
「それは当然だろう?『ローデン公国』と言えば、独立国家だ。王族と同等の権力を誇るユーグ大公に内緒にしておけるはずはないじゃないか。何しろ君は将来大公の妻になる方なんだしね。」
「…」
イアソン王子の言葉は尤もだ。けれども…。
「な、何故…今頃になってこの話を…されたのですか?もし、知っていたら…」
「知っていたら、この国には来ていなかったか?」
「え?」
「俺はね、ユーグ大公に頼まれたんだよ。今年の冬期休暇はロザリーを頼むと。だから君をぞんざいに扱う訳にはいかないんだ」
「そうだったのですね…」
知らなかった。そんな事情があったなんて…。
「だから、ロザリーをあのホテルから移すわけにはいかない。いいね?」
「はい、分かりました‥‥」
もう私は頷くしかなかった。
「あ、あと一つ。君に伝えないといけない大事な事があるんだ」
「大事な事…?」
「後5日後はクリスマスだ」
「ええ、そうですね」
「この日は城でクリスマスパーティーが開催されるから、ロザリーも参加するように」
「えっ?!」
「集まる客は全員貴族ばかりだ。この国は世界でも有名なリゾート国でもあるから、諸外国の王族や貴族も招待されている。だから当然君にも参加してもらうよ」
「そんな、無理ですっ!私は貴族としての教育も何も受けていないのですよ?!」
そのような場所に出ても私は恥をかくだけだ。
「いいや、出て貰う。これはユーグ大公からの命令だよ」
「え…?」
「いずれにしろ、ロザリーは学園を卒業後は大公家に嫁ぐことになるのだから、貴族社会の交流に慣れて置いたほうがいいだろうからとユーグ大公から提案されたんだよ」
「ユーグ様の…?」
「そうだ。だからイヤです、参加しませんと言うのはナシだ」
「で、でも…ドレスが…」
「勿論論分かってる。それもすべて手配済みだ。明日、ロザリーの滞在先のホテルに午前中に仕立屋がやってくるからどこにも行くなよ?あ、そうだ。確認しておかないといけないことがあった。ロザリー、君は踊れるのか?」
イアソン王子はとんでもない事を尋ねてきた―。




