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7-12 気後れする部屋

「あ、あの…イアソン王子…」


イアソン王子に手を引かれながら声を掛けた。


「何?」


振り向きもせずに返事をするイアソン王子。


「良かったのでしょうか…?あのような態度を取られても…。あの方々はイアソン王子のお知り合いなのですよね?」


「…そうだよ。昔からの知り合いだ。だからと言って別に親しいわけでもないけどね」


「ですが、お見受けしたところ…かなり身分が高い人達だったのではないですか?そんな人達に私は失礼な態度を取ってしまって心苦しい限りです…」


するとイアソン王子は私を振り返ること無く、言った。


「あの2人は隣国の侯爵家の者たちだ。身分だけならロザリーのほうが高貴なんだから気にすることは無いだろう?」


「ですが…」


イアソン王子もユーグ様も、そして父も私のことを高貴な血筋だと言うけれど、私の中では少しもその自覚はない。何故なら私は生まれも育ちもあの家で、母は私を産み落とすと同時に亡くなってしまったのだから。



 イアソン王子と一緒にホテルのカウンターに来ると、ホテルマンの人がすぐさまにこちらへむかってやってきた。


「イアソン王太子様、お待ちしておりました。そちらにいらっしゃるお方が本日から当ホテルにお泊りになるロザリー・ダナン様でしょうか?」


ホテルマンが私を見た。


「はい、私がロザリー・ダナンと申します」


「はじめまして、当ホテルにようこそお越し下さいました。私はこのホテルの総支配人です」


「え…?は、はい。此方こそ宜しくお願い致します」


私は慌てて頭を下げた。


まさか…このホテルの総支配人が直々に挨拶に来るとは思わなかった。私は…とんでもない所へ来てしまったのかもしれない―。





****


「こちらが本日から滞在して頂くお部屋となっております」


イアソン王子と共に総支配人に案内された部屋は私が1人で使用するには広すぎる位の部屋だった。

壁も天井も全て白で、床は水色のカーペットが敷き詰められている。壁には美しい砂浜と海の絵画が飾られ、大きなベッドは寝心地がとても良さそうだった。


「…」


室内のあまりの美しさに言葉を無くしていると、イアソン王子が言った。


「ふ〜ん…中々良い部屋じゃないか」


「お褒めに預かり、光栄でございます」


イアソン王子の言葉に深々と頭を下げる総支配人に恐る恐る声を掛けた。


「あ、あの…本当に私がこの部屋を使っても良いのですか…?」


「ええ、勿論でございます」


するとイアソン王子が私を見た。


「何を言ってるんだ?当然だろう?俺がこのホテルに頼んだのだから。総支配人、後は頼む。俺はもう城に戻らせて貰うことにする」


「はい、後のことはお任せ下さい」


「え?イアソン王子」


そんな…もう行ってしまうなんて!


「じゃあな、ロザリー。休暇を楽しんでくれ」


それだけ言うと、イアソン王子はその場を去ってしまい、後には私と総支配人だけが残された。


「それではロザリー様。ホテルの説明をさせて頂きますね?」


総支配人は笑みを浮かべて私を見た―。




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