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6−18 私の決意

『ダミアンは…お前の事を姉ではなく、1人の女性として愛しているんだよ…』


父の言葉が脳裏に蘇ってくる。


どうしよう…ダミアンが私のすぐ後ろに立っている。何とか…平静を装わなければ…。


「な、何?ダミアン」


ダミアンの方を向いて返事をした。


「うん、お茶の準備をしているんだよね?僕も手伝うよ」


「い、いいわよ。1人で出来るから…」


言いながら食器棚に向かってティーカップを取ろうと腕を伸ばした時…。


「僕が取るよ」


ダミアンがすぐ背後に近付き、4人分のティーカップを手に取った。…ダミアンの背丈はとうに私を超え、頭1つ分は大きい。


「ありがとう。すっかり大きくなったのね。昔は私の方が大きかったのに」


わざと姉であることを強調する様にダミアンに言った。けれどダミアンはそれを気にする事もなく、笑みを浮かべた。


「…姉さんは背が小さくて華奢だよね。まさに…誰かに守られるべき存在だって思うよ」


意味深なダミアンの言葉に緊張が走る。


「姉さん、僕は…」


ダミアンが私に一歩近付いてきたその時―。


「兄ちゃん、姉ちゃん!」


フレディが台所の中に入って来たのでダミアンが私から距離を取った。


良かった…。フレディが来てくれて…。


心のなかで安堵しつつ、声を掛けた。


「何?フレディ」


「うん、お父さんに姉ちゃんのお茶を淹れる手伝いをしてくるように言われて来たんだよ」


「手伝いなら僕がやるからいいよ」


ダミアンの言葉にフレディは首を振った。


「兄ちゃんの事ならお父さんが呼んでたよ。話があるから来てくれって」


「え…?」


途端にダミアンの眉が険しくなる。


「ダミアン、お父さんが呼んでいるなら早く行かないと…」


私の言葉にダミアンはため息をついた。


「分かったよ…」


そして台所を出ていった。


「何だろう?変な兄ちゃんだな」


フレディが首をかしげるけれども…何も知らないフレディの存在が今の私には何よりもありがたかった。


「フレディ…ありがとう」


思わずお礼の言葉を述べた。


「え?何でお礼?」


「ううん、いいの。気にしないで。それじゃお茶の準備しましょうか?」


「うん、そうだな」


そして私とフレディは2人で一緒にお茶の準備を始めた―。




 ティーカップに紅茶を注いで、リビングへ運ぶと部屋にいたのは新聞を呼んでいる父だけだった。


「あれ?兄ちゃんは?」


フレディがテーブルの上にティーカップを置きながら父に尋ねた。


「ああ、ダミアンだが今夜は疲れたからもう寝ると言って部屋に戻っていったよ」


「ふ〜ん…」


「どれ、では3人でお茶を飲むか」


父が笑みを浮かべて私に言った。


「うん…」


そして私達3人はテーブルを囲んでお茶を飲みながら私は思った。


…このままでは駄目だ。私がいると…ダミアンは一家団欒の輪に入ることができない。


所詮私は皆とは血の繋がりが無い。


明日…お父さんとダミアンが仕事に出たら早々にこの家を出よう。


私は心にそう決めた―。




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