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巧真を待っている間、決意が揺らぐ。ハルもこんな気持ちだったのかなとふと思えた。
「お待たせ」
巧真が駆け寄ってきた。
「……じゃあ、帰ろう」
心に決めた事なのに、巧真に何て言われるのか怖くて、結局、自分から言い出す事が出来なかった。智也が自転車置き場に向かって歩きだすと巧真が「……、ちょっと、聞きたい事が、あるんだ」と言ってきた。智也は覚悟を決め、歩くのをやめてうつむいたまま、巧真の方に振り向いた。
「……噂のボールを持ってたのは、智也、だったんだな。さっき先輩が言ってたのを聞いてピンときた。なんで……、すぐに言ってくれなかったんだ?」
「それは……」
やはり、言葉に詰まる。だけど、ちゃんと言わないといけない事だから。智也はハルやソウが『大丈夫』と言ってくれた言葉を勇気に変え、ゆっくり話し出した。
「巧真に「気味が悪い」とか、「変なやつ」って言われたくない、思われたくないんだ。もちろん、巧真がそんな事を言わないのはわかる。だけど、幼い頃に言われた事がトラウマになってて、言い出せなかったんだ」
思ってる事を正直に言い、恐る恐る顔をあげると、巧真は「なんだ」と言った後、「でも、怖いよな」って言ってくれた。
「先輩が言ってくれたんだ。智也は霊感がある事をよく思ってないかもしれない。そのことでトラウマがあるかもしれない。だから、その事を聞くときは気をつけるんだって」
「……、あり、が、とう」
野球部の先輩の心遣いに嬉しくなった。
「それにしても、すごいじゃないか!」
「えっ……」
智也が驚いていると、巧真が「ボールの声が聞こえてたんだろ? どんな声なんだ?」とか「霊感があるからって、友達をやめるとか言わないから大丈夫だ」と言ってくれたのがすごく嬉しい。
「ありがとう。そう言ってくれたのは、巧真が初めてだ」
智也はすごく安心出来、モヤモヤ漂っていた不安の塊が巧真の一言で消えた。
『智也! よかったね!』
道具倉庫の中にしまわれたハズのハルの声が聞こえてきた。
「……、うん!」
「声が聞こえたのか?」
「うん。ボールのハルがよかったねって言ってくれた」
「そうか……」
巧真はそう言った後、「智也に、勇気をくれてありがとう」とハルに向かって言った。
『どういたしまして。こっちこそありがとう』
ハルの返事を聞いて智也は、笑みがこぼれた。
「聞こえたかな?」
「うん。どういたしまして。こっちこそありがとうって言ってる」
「そっか。明日からハルの叫び声が聞こえないんだろ? 寂しくないのか?」
「うーん。寂しいけど、僕には巧真がいるから!」
智也が笑顔でそう言ったのを聞いた巧真が「なんか……、照れるな」と言った後、「帰ろうぜ」と言い、2人で自転車置き場に向かった。
智也と巧真が自転車を漕ぎ、誰もいない校庭を通り、道具倉庫の前を通るとハルの笑い声が聞こえてきた。それを聞いた智也は自然と「よかったね、ハル」と呟いていた。
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