《3章》オーディションなんてうまくいくはず
《3章》オーディションなんてうまくいくはず
「ふぁぁあ。」
間抜けな欠伸をするのは不知火想太である。今は学校の昼休みであり、この学校では50分間も設けられている。だから想太はいつもの北校舎一階のベンチで寝転がって空を見ていた。
相沢流唯が転校してからしばらく経つ。流唯はクラスとも馴染み始めていた。
「いい天気だな。」
想太が言うように今日の空は一切の雲もなく、澄み切った青い空が広がっている。まさしく快晴の空だ。
このまま五限目をサボってここで眠っていたい、そんなことが想太の心を占める。
このまま寝転がっていると夢の世界に誘われそうだ。
「よっと。」
その危険から逃れるためにジュースを買いに行くことにした想太は重い体を起こした。
ガコンッ
そんな音を鳴らして自動販売機からジュースが出てくる。
自動販売機があるのは北校舎の近くであり、今からベンチに戻ってもゆっくりする時間はまだ余ってる。
「やっぱいちごオレだよなー。」
想太は甘党で、いつもこの自販機でいちごオレを買っている。
ストローを刺して口をつける。飲んだ瞬間、いちごとミルクのほのかな甘さが鼻を抜け、想太の乾いた喉を潤す。やはりここで飲むのは落ち着かない。そう思った想太は先ほどのベンチに戻ることにした。
いちごオレを飲みながらベンチに戻ろうと校舎の中を歩いていると相沢流唯が足早に歩いていくのが見えた。
〔何してんだ?〕
早足で歩く流唯が気になった想太は後を追うことにした。
他に誰もいない音楽室の真ん中に流唯は立っている。
「よし、頑張ろう。」
流唯はそう呟いて、少し厚みのある冊子のようなものを開いた。息を整えて、声を出す。
「私、No. 1アイドルになりたい!」
「あなたの力を貸して?♡」
普段の相沢流唯は眠たげな表情であまりハキハキと喋るタイプではないのだが、今の声は普段とは違う喋り方だった。
素人が聞くとそれはプロと言わざるを得ないクオリティなのだが流唯はどうも納得がいかないのか、首を傾げて眠たげな表情は快晴の空に反して曇っていた。
「おおお!ルイちゃんの声!」
「ソータ!?びっくりした。」
音楽室のドアは開かれており、そこにはいちごオレを手に持った想太が立っていた。流唯は急に想太の声を聞いたことで、驚いたようだった。1人で音楽室にいたはずなのに、急に声が聞こえたりすると誰でも驚くだろう。
想太が言うルイちゃんとはアニメ「アイドライブ」の八代ルイというキャラクターであり、相沢流唯は高校生で八代ルイの役として活躍しているプロの声優なのだ。
「何してんだ?」
1人で冊子を見ながら、八代ルイの声を出していたのだ。何をしているのか、それは当然の疑問だ。
「今度ね、アイドライブの新しいキャラCDが出る。」
「どのキャラのCDを出すかを公開オーディションすることになった。」
聞かれた流唯はことのあらましを話し始めた。
流唯の話によると来週の日曜日に公開オーディションがあり、そこで選ばれた5人のキャラのCDが出されるらしい。普段の人気投票と違い、プロデューサー、審査員が直接審査する形になるので、人気投票で下位の者でもCDを出してもらうチャンスがあるらしい。
もちろんファンの人たちも会場でオーディションを観覧することができるので、大抵の「アイドライブ」ファンは自分の推しが選ばれるかを見届けるために足を運ぶのだが、想太は声優なんて三次元の女性には興味がないので当然行くつもりはなかった。
「なるほどな。」
「それで練習してたわけか。」
流唯の話を聞いて想太は納得する。
「ん。」
「でもなんか納得いかなくて‥。」
「昼休みもあと少ししかないが、俺で良ければ協力するぜ?」
「ほんと?、ソータがいれば百人力。」
このような練習はやはり客観的に見ることが大切だ。だから1人で練習するよりも他の人に見てもらいながら練習する方がきっと上手くいく。特に八代ルイのファンである想太がいれば、流唯の言う通り百人力なのかもしれない。
「じゃあ、やるね。」
「おう。」
残りの休み時間を費やして、流唯は一生懸命に練習し、それに想太は付き合った。
「私、No. 1アイドルになりたい!」
「あなたの力を貸して?♡」
「おおーー。」
「どうかな?」
「完璧。」
想太は親指を立てて、流唯にその声が確かに八代ルイであることを伝える。
それを伝えたと同時に昼休みが終わるチャイムが鳴る。
♫〜
じきに5限目が始まるので、2年E組の教室に戻るため、2人は音楽室を出て廊下を歩く。
「これで、選ばれる?」
「んーーー。正直、このままじゃ、難しいと思う。」
「演技だめ?」
流唯は心配そうに想太の顔を見る。
「いや、演技自体は完璧だと思う。でも、八代ルイには元々の人気がないだろ?実際、人気があるキャラのCDを出した方が儲かると思うんだよ。」
「だから、どれだけ演技がよくても、これなら売れるって思わせることができないと選ばれるのは難しいと思う。」
「ソータってもしかして賢い?」
「もしかしては余計だ。」
八代ルイは100人のキャラの中で97位なのだ。人気の低いキャラのCDを作ったところで売り上げが出るとは考えにくい。だからいくら相沢流唯がオーディションで最高の演技をしようが、選ばれる可能性は低いだろう。これはもしかしたら「アイドライブ」を盛り上げるために仕組まれた、出来レースなのかもしれない、想太はそう思っていた。
「じゃあ、勝てない試合?」
「いや、公開オーディションだろ?そこに相沢の勝機がある!」
「俺に考えがある。」
「相沢流唯のオーディション突破計画開始だ!!」
「普段とはテンション違う。」
「俺も八代ルイのキャラCDは買いたいからな!」
想太は不敵な笑みをギラリと光らせながら言う。その顔を流唯は不思議そうに見つめるのだった。
♢
放課後。
先ほど5限目のとき想太に「放課後、来て欲しいところがある。」と言われた結城風花はその指定された空き教室に向かって廊下を歩く。
〔な、な、な、なんだろう‥。告白とかだったらどうしよう‥。そんなのどうしよぉ〜。〕
〔不知火くんが真剣な表情で告白‥‥〕
風花はボッという効果音が入りそうな勢いで顔を真っ赤にする。顔をブンブン振ってその変な妄想を振り払う。
その空き教室に向かっていると、廊下の右側から絵羽彩、左からは北崎裕也ちょうど歩いてきた。
「彩ちゃん、北崎くん、どこ行くの?」
風花は偶然出会った2人に聞いた。
「想太のやつにあそこの空き教室に呼び出されててさ。」
少し先にある教師室を指差し、裕也はいつもの爽やかスマイルで答える。
「え、あたしも。」
〔あれ?あたしだけじゃなかったんだ。告白とかかと思ったのにーー…。〕
彩も裕也と同じ目的であることを風花に伝え、内心では想像していたこととは違っていてかなりがっかりしていた。
「風花ちゃんも?ってあれ?」
「大丈夫?」
裕也は風花も同じなのかと聞いたのだが、風花は先ほどの妄想が消えてしまった悲しさと、1人で舞い上がっていたことの恥ずかしさでいっぱいで、ショートしていた。
「だ、大丈夫だよ。」
〔恥ずかしい、恥ずかしい‥。〕
気を取り直して3人は想太に指定された空き教室のドアを開ける。
「よく来てくれた。」
その教室の真ん中で想太と流唯が椅子に座って、某アニメの司令官のように机に両肘をついて指を組んで待っていた。
「なんの用?」
〔ツッコまなないでおこう。〕
「まあまあ、とりあえず座れよ。」
〔え?スルーなの?〕
想太は彩に本当はツッコんで欲しかったのだが、椅子を指差す。
「今日集まってもらったのは、お前らに相沢が公開オーディションで選ばれるために力を貸して欲しいからだ!」
想太は3人が椅子に座ったことを確認した後、集まってもらった目的を話した。
「「「オーディション??」」」
3人は訳がわからないことを言われて間抜けな声が出る。
「私ね、ソータが大好きなキャラ、八代ルイの声優なの。」
なんの話かわからないという顔をしている3人に流唯は自分が声優であることを話す。
「ええ!?でも、言われてみれば確かに。」
「普段の話し方と、キャラが全然違うから気付かなかった。」
驚きながらもオタクの裕也はすぐにそれが事実だと理解できた。
彩、風花は普通に驚いて声が出ていない。
同級生がプロとして働いているなんて聞けば驚いて声が出ないのも無理はない。
「来週の日曜日にキャラのCDを出すための公開オーディションがある、それに選ばれるために、彩、風花、キタザキの力を貸して欲しい。」
「僕だけ名字なんだね。」
〔裕也だけ名字なんだ。〕
裕也は苦笑いで自分だけ名字呼びであることを残念に思う。想太も同じことを思った。
少し話が遡るが、先ほどの5限が始まる前の廊下。
「具体的にはどうするの?」
「相沢は美人だ。普段なら顔がどうかは声優にはあまり関係ないことだが、今回は公開オーディション、笑顔でセリフを言うことで加点で狙える。」
「なるほど。」
流唯は想太に美人と言われて少し顔を朱くした。
「あとは質疑応答もあるんだよな?」
「ん。」
オーディションは1人ずつ行われ、キャラのセリフを言う。このセリフのチョイスは自由だ。そして会場まで足を運んでくれるファンのために、少し質疑応答もあるらしい。オーディションだけならファンは見飽きてしまうからだろう。
「相沢はいつも眠そうな顔をしてて、笑顔が分かりにくいし、普段からハキハキと話すタイプじゃないだろ?そこで裕也、絵羽、結城の力を借りる必要がある。」
「ソータ天才。」
「あの3人に相沢が声優ってことを伝えるのは嫌か?」
「大丈夫、もう信頼できる友達。」
「よし、じゃあ決まりだ。」
放課後の空き教室に場面は戻る。
「なるほど、流唯ちゃんの公開オーディション突破に向けて僕たちの協力が必要ってわけだね。」
「僕で良ければ協力するよ。」
想太が考える相沢流唯のオーディション突破計画を3人に伝えた。裕也はそれを快く理解してくれたみたいだった。
「もちろんだよ、流唯ちゃん、協力するよ!」
「流唯がせっかくあたしたちを頼ってくれてるんだもん、断る理由なんてないよ。」
風花、彩も流唯に協力すると言ってくれた。本当にいい友達である。
「ありがとう。」
流唯は3人に感謝の気持ちを伝えるのと同時に、こんな友達を持てたことを嬉しく思うのだった。
「協力することは決まったけど、具体的にはどんなことをすればいいんだ?」
「裕也にはそのお得意の外当たりの良さを相沢に教えてやってくれ、オーディションには質疑応答もあるみたいなんだ。」
「なるほど、その質疑応答で完璧な答えが出せるようにしてあげればいいんだね、了解。」
裕也にしてもらうことは質疑応答の方だ。裕也はオタクだが、イケメン、優しい、などいい噂が後を絶たないし、裕也に1聞けば必ず10は返ってくる。裕也のそういう面は質疑応答にぴったりだ。
〔今の相沢は質問されたとしても、「ん。」しか答えなさそうだしな。〕
「私は何をすればいい?」
「結城は絵羽と2人で相沢に笑顔を教えてやってほしい。」
風花、彩はいつも笑顔で、その笑顔にハートを撃ち抜かれる男子も多いという。
対して流唯はいつも眠たげな表情。オーディションで、やる気がないのではと思われてしまっては困るし、なにより流唯は美人だ。その流唯の笑顔での質疑応答、オーディションのセリフを言うことは会場で見ている人にとっては破壊力抜群だろう。
そうはならないとしても、笑顔はその人のイメージを良くする。やはりイメージはいいに越したことはない。
「わかったよ。任せて!」
「あたしも頑張るよ!」
「ああ、2人とも頼りにしてるぜ。」
風花、彩は噂通りの笑顔で意気込んでくれていた。嫌な顔一つせず、協力してくれると言ってくれた姿見て想太は本当に頼りになる友達だと痛感しているのだった。
♢
それから毎日の放課後、空き教室を借りて相沢流唯のオーディション突破計画が進められた。
ある日の放課後。
裕也による質疑応答の練習では、
「今日どんな気持ちでこのオーディションに参加したんですか?」
裕也はオーディションでの質疑応答を想定して流唯に質問する。
「ん、CD出したい。」
「ダメだよ、CD出したいのはみんな一緒だからそれ以外の理由を言わないと。」
「ん。」
「例えば、私の声をみんなに届けたいんです。とか。」
「わかった。」
流唯の質疑応答の練習も順調に進んでいく。
「私の声をみんなに届けたい。」
「あれ?例えそのまま言っちゃった?」
流唯を見て苦笑いする裕也の光景。
またある日の放課後。
今日は彩は空手の練習。
「流唯ちゃん、口角もうちょっと上げてみて?」
「ん。」
「いい感じ!かわいい!」
「やっぱり笑った流唯ちゃんかわいい。」
「ソータもかわいいって言ってくれるかな?」
流唯自身にもなぜこんなことを風花に聞いたのかわからない。けど、風花はしっかりと答えてくれた。
「不知火くん?言ってくれると思うよ。」
「この笑顔で声が出せるかが問題だね。」
「多分大丈夫。」
「じゃあ明日一日中このマスクを付けて、その下で今の笑顔続けてね?」
そう言って風花は流唯に風邪用のマスクを渡す。
「ん。」
またまたある日の放課後。
「風花すごいじゃん!」
「いつも眠そうな顔の流唯が笑ってる!」
「可愛すぎる、抱きしめてもいいかな?」
「ダメだよ、彩ちゃん。」
意識していればだいぶ笑顔でいれるようになった流唯を見て彩の女の子好きの血が騒いだようで、流唯を抱きしめようとしたところを風花に止められる。
「キタザキもだいぶ質問に答えられるようになってきたって言ってたから、いい調子。」
「北崎くんの質疑応答の方も順調なんだ、よかった。」
「明々後日だもんね、オーディション、絶対応援しに行くね。」
「もちろんあたしも!」
またまたまたある日の放課後。
「私、No. 1アイドルになりたい!」
「あなたの力を貸して?♡」
笑顔でセリフを声に出す流唯を見て想太はドキッとした。想定していた通り、流唯の笑顔はオーディション攻略に必須だったことを確信した。
「八代ルイちゃんの声にも磨きがかかってきたな。」
「ん。」
普段の眠たげな流唯からは想像できないような不自然のない笑顔、風花、彩がするような笑顔に似ているような気もした。
「しっかり笑顔もできるようになってるし、絵羽も結城もさすがだぜ。」
「裕也も質疑応答だいぶ出来てるって言ってたしオーディションまでになんとかなりそうだな。」
「ん。」
「ソータ、かわいい?」
流唯は笑顔で想太に聞く。
「ああ、すげーかわいいぜ。」
想太はその流唯の笑顔を絶賛する。誰が見てもかわいいの一言が必ず出る、そう思わせるような笑顔だった。
こうしてオーディションまでの日々は流れるように過ぎていく。毎日学校で授業を受けた後、順番に流唯の練習に付き合った。流唯の頑張る姿を見て全員が流唯をオーディションに受からせてあげたいと思った。
オーディション2日前の放課後、今日の分の練習も終わり、想太と流唯は2人で帰ろうと校門に向かっていたところ、担任の道千に見つかってしまい、想太は誰かが忘れていたゴミ出しを任された。
「なんで俺がゴミ出しをせにゃならんのだ。」
「バッグ持ってすぐ帰ろ。」
そんなことを愚痴りながら、想太は空のゴミ箱を持って校舎の外にあるゴミ置き場から教室に戻ろうと歩いていた。
ゴミ置き場から教室までに2年E組の教室が少し見えるのだが、教室には人影が見えた気がした。
「誰もいないはずだけどな。」
流唯には待ってもらうのも悪かったし、先に帰るように言っていた。
もしかしたら担任が何かしているのかもしれない。
ガラガラと教室のドアを開ける。
そこには帰ったはずの流唯の姿があった。
「おま、帰ったんじゃなかったのかよ。」
帰ったと思っていた人がいたので想太は驚いた。
「ん、なんか不安で帰れなかった。」
そう言う流唯の手にはオーディションの台本が握られていた。
「みんなが協力してくれたから、なんかオーディションで選ばれないといけない気がして、プレッシャー?そんなのがある。」
そんなことを言う流唯に想太はため息をつく。
「アホか、せっかく勝機が見えてきてんのに、プレッシャーなんかのせいで結果出せなかったら、何のためのプレッシャーだよ。」
「確かに、そうだけど。」
「まだ明日があんだ、体調壊したりしたら最悪だぜ?」
「ん。」
「ソータ、相談。」
「なんだ?」
「4人にはずっと練習に付き合ってもらってる、どれくらい感謝しても仕切れないくらい、どうしよう。」
「気にすんな。」
「あいつらは相沢の「ありがとう」だけで満足するさ。」
「そうかな。」
そんな話をして流唯は台本をバッグの中に入れ、想太と流唯は学校を出た。
♢
オーディション前日の土曜日。
休日にわざわざ学校にやってきた5人は今日も一日、最後の確認として、流唯の練習を手伝った。
それも終わり、もう日は暮れようとしていた。
想太、流唯、裕也、彩、風花の5人はいつものE組の教室で椅子に座っていた。
「よし、俺たちができるのはこのくらいか。」
想太が椅子にもたれかかりながら言い、それに裕也、彩も頷いた。
「そうだね、流唯ちゃんの力になれたかな?」
風花は流唯を見て言った。
この一週間ちょっとだが、流唯がオーディションで選ばれるためにみんなで頑張ってきたのだ。結果はどうなるかわからないが、自然と一息ついてしまう。後は流唯の頑張り次第だ。
「みんな本当にありがとう。」
流唯が4人を見て話す。
「どうしたの?、急に改まって。」
流唯の改まった表情を見て風花が言う。
「私、小さい頃から声優一筋でやってきて学校もたくさん休んだ。だから友達もできなかった。声優をするのが楽しかったからそれも我慢できた。」
「けど、八代ルイを演じてから変わった。ルイは人気が出なくて97位だったから。」
想太には転校してきた日に話した辛い思い出の話を始めた。
しかし感謝を伝えようと話し始めたはずだったのに流唯の目に涙が溜まってきた。
「それから私のことを昔から妬ましく思ってた人たちにたくさん嫌がらせを受けて、、悪口もたくさん言われて、、八代ルイってキャラは私を不幸にするんだって思ってた。」
堤防が壊れたように流唯の頬をぽろぽろと涙が流れる。
「でも、、八代ルイのことをこんなに好きって言ってくれるソータに出会えて、それから不思議と欲しかった友達もできて、、八代ルイは私を幸せにしてくれた、最近はそう思うことが多くなって、、」
涙を流して思いを話す流唯を見て、彩、風花も涙を流す。
「なんで言えばいいのかわからないけど、ソータ、風花、彩、キタザキ、」
そう言いながら流唯は想太、風花、彩、裕也を見る。
「大好きだよ。」
そう言って笑う流唯の眩しい笑顔を夕日が照らしていた。その笑顔はあまりにも美しくはかない。
そんなガラス細工のような笑顔。
「ば、ばかやろう、まだオーディションで選ばれたわけじゃないんだからそれを言うのは早ぇよ。」
想太は少し照れを隠すように顔を背けながら言う。隠したかったのは照れだけだろうか、想太の目にも夕日に照らされてキラリと光るものがあったように見えた。
「流唯ちゃんこんなに頑張ったんだ、その悪口だったり、嫌がらせをしてきた人たちを見返そう!!」
裕也は熱い男の涙を流しながら言う。
「流唯ーー。そんなことがあったんだ、あたしはずっと流唯の友達だから。」
彩が大泣きしながら涙を拭う流唯に抱きつく。
「流唯ちゃん、私もずっと友達だから、北崎くんの言う通り悪い人たちを絶対見返そう。」
風花も泣きながら彩と同じように流唯に抱きついていた。
しばらく全員ですすり泣いていた。
「明日頑張るから、応援しにきてほしい。」
「最後の最後まで力貸してほしい。頼ってばっかりだけど。」
全員が泣き止んだ後、流唯は不安そうに話した。
「もともとそのつもりだ。最後まで付き合うぜ。」
想太に彩、風花、裕也も頷いて同意していた。
そんな想太の顔を見て流唯の中にあったある感情が少し芽を出したのだった。
♢
今日は公開オーディション当日。ついにこの日が来た。
「でっけぇ会場でやるんだな。」
想太が思っていた会場よりも一回り大きい会場であった。
ここは大木簿市にあるホール、大木簿ワールドホールだ。なにがワールドなのかはさておき、そのホールの入り口には「アニメ アイドライブ 公開オーディション」と書かれた垂れ幕がかかっている。外では物販なども行われており、多くのファンがそれに列をなしていた。
「想太は並ばなくていいのかい?」
「大丈夫だ!相沢が八代ルイの全てのグッズをただでもらってきてくれるって言ってたから!」
「くれるって言ってたから!」
「二回も言わなくていいよ。」
やけにハイテンションな想太に裕也がツッコミをいれる。
「相沢はどこ行ったんだ?」
「流唯ちゃんは準備のために先に行くって言ってたよ。」
「そーいや言ってたな。」
「もー不知火くん。」
そんな話をしながらホールの中に4人は入っていく。風花の言うように流唯はオーディションの前に衣装の準備、発声練習などをしないといけないため、流唯を始めとするオーディションの参加者は一足先にホールに入っているのだ。
「すごい人じゃん。」
「なんかペンライトみたいなの持ってる人もいるし。」
今日のオーディションではペンライトを振ることが許可されている。しかし今日の目的はあくまでオーディションなのでファンは静かに応援しなくてはならない。
「俺も持ってきたぞ、お前らの分もあるぞ。」
そう言って想太はピンク色のペンライトを裕也たち3人に手渡す。八代ルイちゃんのメンバーカラーはピンクなので想太はピンク色のペンライトを持ってきたのである。想太はアイドライブのライブとかには行かないが、八代ルイのグッズなら当然持っている。
「ガチじゃん。」
「ガチだよ。」
「ガチだね。」
彩、風花、裕也の3人は想太に軽く引いていた。
その頃舞台裏では。
「よし、できた。」
発声練習を終えた流唯が今日の自分の衣装を着終えたところであった。緊張しているのか少し震えているように見える。
少し離れたところから声をかけられた。
「あ、ルイルイだ!今日出るんだ。」
「千、ん。私今日は負けない。」
流唯を見つけて話しかけてきたのは明月院千尋、流唯は千と呼んでいる。彼女はアイドライブ人気一位のキャラ本生アカリの声優で、そのルックスと小悪魔オーラから大人気の売れっ子声優である。
「97位のキャラが一位に勝てるかな〜??」
「私の友達の応援がある、だから勝つ。」
2人の間には目に見えるほど激しい火花が散っている。オーディション前にはよくある光景だ。
「大木簿高等学校だっけ?友達できたんだ。」
「私にはソータがいる、負けない。」
「ソーダか、ソータか知らないけどーー、、千尋に勝てないから今日だって参加してない人たちもいるんだよー??」
「ルイルイは千尋には絶対勝てないよ。」
千尋の言う通り、普段アイドライブのキャラは100人いるのだが、今日のオーディションには50人ほどしか参加していない。明月院千尋が圧倒的な実力の持ち主だから人気が下位のキャラの声優は戦場にすら立てず、繊維を喪失する。
そんな中、97位の流唯がこのオーディションに参加してきていることが、千尋にとっては勝てると思われているようで気に食わなかった。
そろそろスタンバイお願いします。というスタッフの声が聞こえた。オーディションが始まるのだ。
「千、絶対勝つ。」
「千尋は絶対負けない、一位だから。」
そんな開幕前からとてつもない火花を散らしながら、公開オーディションの幕が開けた。
「まもなく!アイドライブのキャラCD発売をかけた公開オーディションを開始いたします!!」
綺麗目なスーツを着た司会者らしい人が声を上げた。それと同時に男の雄叫びが会場を揺らす。
「なんか俺が緊張してきたわ。」
「あたしも。」
想太たちは会場の観覧席のど真ん中の4席に座っている。想太と彩はこの会場に入ってからずっとソワソワしているようであった。
「流唯ちゃんの方が緊張してるだろうね。」
「僕も試合前とかは緊張するけど、こういうのは未だに慣れないものだね。」
「アイドライブ」のプロデューサーと今回のオーディションの審査員がステージに入ってきて、そのまま観覧席の1番前にあるプロデューサーと審査員の専用の席に腰を下ろした。ステージの上にはマイクが立てられているだけだった。
「後は信じて応援するしかないな。」
想太の言ったことは風花、彩、裕也も同じ気持ちであった。
「では、早速始めましょう。エントリーナンバー1!アイドライブの絶対的女王、明月院千尋ーーー!!!」
司会者のコールに呼ばれてステージの袖から綺麗なドレスを纏った赤髪のツインテールにしている女の子が出てきた。その瞬間、先ほどとは比にならないファンの雄叫びが会場に響き渡る。それだけで彼女がどれだけ人気なのかがわかる。
「めっちゃかわいい子出てきた!」
彩のかわいい子センサーが反応する。
「明月院千尋だね、アイドライブで1番人気のキャラ本生アカリの声優してる子だよ。」
「いきなりこの子か、きついな。」
「一位⁉︎、勝てるのかなぁ?」
裕也の説明を聞いて風花は不安そうにしている。
「一位になる必要はない、あいつに負けたとしても2位が取れれば相沢の勝ちだ。」
想太は自分たちに言い聞かせるように言う。このオーディションで選ばれるのは5人である。すなわち5位以内に入ればキャラCDは出せるので、一位を狙いにいく必要はないのだ。
マイクの前に千尋が立つ。その瞬間会場は一つの音もしない無音へと変わる。
「私はCD出したいなんて思ってないんだからね!」
「あんたたちが応援してくれるなら頑張らないでもないけど!」
セリフを言い終えた千尋はお辞儀をした。
想太は驚いた。これが一位。ステージに立っているのは明月院千尋ではなく、本生アカリだった。そう見えてしまった。
しばらく何の音もしない時間があった、会場が明月院千尋に魅せられてしまっていた。
圧倒的魅力に魅せられていたファンはすぐ我を取り戻し、声を上げた。
「アカリたん最高だーーー!!」
「かわいすぎるーぶひっ。」
「これは一位決まりですな。」
オタクたちのなかには立ち上がって拍手している人もいる。
「なんかモブオタク共が騒ぎ出したんだけど⁉︎」
彩が結構ガチ目に引いていた。
〔これに勝てんのか?〕
想太は口には出さなかったが、明月院千尋は声だけでなく、抑揚、声の出し方、すべてにおいて凄すぎたのだ。素人にもわかるほど。
続いて質疑応答に入った。
「千尋ちゃんはどう言う思いで今日のオーディションに参加したのかな?」
プロデューサーが聞く。こんな質疑応答なくたってさっきのセリフだけでこの子が5人のうちの1人であると確信できた。
「千尋はいつだって一位なの。誰にも譲らない、そのために来ました。」
「さすが、千尋ちゃんだ。では最後にもう一つだけ、千尋ちゃんにとって本生アカリは何だい?」
「千尋にとって本生アカリは、千尋を頂点へと押し上げる力‥ですかね?」
「千尋を一番の声優にするためのキャラって感じです。」
「なるほど、わかりました、ありがとう。」
明月院千尋の質疑応答も終わってしまった。そのままステージの袖に退場していった。
「凄かったね、、。」
想太だけでなく風花も明月院千尋の凄さに圧倒されていた。
「流唯、大丈夫だよね?」
彩も不安感を感じていた。一番最初の人がこのレベルじゃ不安になるのも当たり前だろう。
「確かに明月院千尋は凄かったが‥‥、
俺らの友達、相沢流唯もすごいだろ?」
「うん、そうだね!」
想太の言葉で意気消沈していた風花、彩も元気を取り戻す。想太の言う通り、相沢流唯も只者ではない、後は信じるしかないのだ。
会場が明月院千尋に飲まれたままオーディションはどんどん進んでいく。
「続いてはエントリーナンバー2!意外とこの人縁の下の力持ち!!木村冴子!!!」
〔さっきからその名前の前のやつが気になるわ!〕
「エントリーナンバー15!心熱き熱血バーニング少女!!!アレクサンドリア真紀子!!!」
〔熱き熱血バーニングってどんだけ熱いんだよ。〕
「まだまだ行きます、エントリーナンバー28!なんかすごい!村瀬佐織!!」
〔なんか雑になってきたな。〕
「エントリーナンバー35!‥‥‥‥、吉田奈緒!!」
〔言うことないんかい!〕
「エントリーナンバー42!I'LL BE BACK!! 田網寧多!!!」
〔もうツッコまねぇ。〕
そして数々の猛者たちがオーディションを終えていった。
〔かなり雑に行ったけどな。〕
「そろそろじゃねーか?」
相太が言った後すぐに待ち望んでいた名前が呼ばれた。
「エントリーナンバー50!!!最後の1人!!声優への愛なら負けない!相沢流唯!!!」
綺麗な白のドレスを纏った流唯が出てきた。他のオタクたちは流唯に全く興味を示していないが、想太たち4人はできる精一杯の拍手をした。
「相沢ー!!がんばれよ!!」
「流唯ちゃんー!頑張ってーーー!!」
「自分の出せる力を出せば大丈夫さーーー!!」
想太、風花、彩、裕也の順で流唯にエールを送った。
それを見た流唯は想太たちを見てにこっと笑い、マイクの前まで歩いてきた。
想太たちはエールをやめて固唾を飲んで流唯を見ている。流唯だけでなく想太たち4人の心臓の鼓動も速くなる。
〔私は勝つ、ソータたちがついてるから不安じゃない〕
「私、No. 1アイドルになりたい!」
「あなたの力を貸して?♡」
「大好きだよ‼︎」
流唯はお辞儀をした。最高の笑顔、最高の声、流唯の出せる全力が出せた。流唯としても完璧と言わざる終えない出来だと感じていた。
しかしさっきまでならお辞儀の時には観客席の拍手があったはずなのに、今拍手しているのは想太たち4人だけだった。
「97位が勝てるわけないだろ。」
「誰もお前の声なんて求めてないよ。」
「ヘタクソが!」
「早く出てけよ。」
客席の所々からこんな声が聞こえ始めてきた。このような声に引き起こされるように次々に客席から声が聞こえ始め、次第にブーイングのコールへと変わっていった。
「かーえーれっ」
「かーえーれっ」
「かーえーれっ」
会場のオタクが97位の相沢流唯を邪魔だと声を合わせていた。静まるようにとアナウンスが入っているが一向に静まらない。流唯がステージ上から去るまで静まらないだろう。
「流唯凄かったじゃん‥。なんで‥?」
「何これ‥。ひどい‥。」
彩と風花がこの異常な現状に言葉をこぼす。
流唯はこの後質疑応答が残っているので、客席が静まるまで涙を堪えながらこのひどいコールを耐えていた。
「‥‥けんな‥。」
「‥ざけんな‥。」
「不知火‥くん‥?」
風花が想太の顔を見ると怒りを堪えているような顔。想太がこんな顔をすることなど滅多にない。
オタクの1人が空のペットボトルを流唯に投げつけ、それが流唯の額に当たる。それを見て想太の頭の何かが切れた気がした。
「ふざけんな!!!!!!」
想太の声が会場に響き渡る。1人の人間から出るとは思えないほどの大声。それにびっくりしたオタクたちはコールをやめた。
「さっきから黙って聞いてりゃ勝手なことを‥、コイツがどれくらい努力して、どれだけの思いでここに来たとおもってんだ!ルイを誰も求めてない?ここにいる!八代ルイ、相沢流唯の声に救われたオタクが!!相沢流唯の声を求めてる奴、応援してるやつは確かにここにいる!文句ある奴はかかってこい!!」
それだけ叫んだ後、想太は腰を下ろした。想太が叫んだ後会場はずっと静かだった。
「ソータ‥。」
そんな想太を見て流唯は心の中に確かにあの感情が生まれたことを感じた。
流唯の質疑応答が最後に行われる。
「では気を取り直して、流唯ちゃんはなぜこのオーディションに参加したのかい?」
プロデューサーは流唯に質問した。
「応援してくれる大切なファンのためです。」
「なるほど、ではもう一つだけ、いい友達を持ったんだね。」
「はい!大好きな友達です!」
流唯の質疑応答もうまくいったと思う。裕也との練習の成果はしっかり出ていただろう。最後の質問に答えた時の流唯の笑顔は眩しかった。
「それでは本日のオーディションの結果を発表します。」
このようなアナウンスが流れて結果発表が始まった。何度も言うが、選ばれるのは今日参加している50人から5人だけである。
ドラムロールみたいな音が流れて名前が呼ばれる。
明月院千尋!!
とてつもない拍手が会場を揺らす。想太たちも明月院千尋の実力は痛感していたのでここまでは想定内という感じだった。
秋本美優!!
新田巡!!
順に名前が呼ばれていく。ステージ上で流唯は指を組んで願うようなポーズをしていた。観客席では彩と風花も同じポーズをしていた。
春奈ユウ!!
最後の1人は‥
相沢流唯!!!!
想太たちは一瞬頭が真っ白になった。もちろん流唯も。少ししてから流唯がオーディションに選ばれたことが理解できた。
「やったーーー!!!」
「よっしゃあー!!」
「流唯やったーー!」
「僕はもう感動したよ!!!」
風花、想太、彩、裕也は声を上げて喜んだ。むしろ流唯より喜んでいた。大ブーイングの嵐からの逆転、なんてドラマチックだろう。
想太はこのオーディションを出来レースかと思っていたが、プロデューサー、審査員はブーイングを無視して真剣に選んでくれていたことに感謝した。
「「「「バンザーイ、バンザーイ!」」」」
「静かにしてくだい。」
こんなアナウンスが入る。
「「「「はい、すみません。」」」」
4人は声を合わせて謝った。そんな想太たちを流唯は嬉しそうな目で見ていた。
「今日のオーディションはこれにて終了致します。」
このようなアナウンスがあった後想太たちはすぐに会場を出た。
流唯たちオーディション参加者は衣装を着替えるためにステージ裏に戻っていった。
「すごくうれしい。」
流唯の顔は眠たげな表情に戻っており、つい言葉に出してしまうほど嬉しさを感じていた。ブーイングしてきたオタクたちを見返すことができた。
「ルイルイ、おめでと。」
明月院千尋が流唯に話しかけてきた。
「ありがとう。千もおめでとう。」
「千尋が選ばれるのは当然。言っとくけど、千尋が負けたわけじゃないからね。」
「わかってる。」
お互いオーディションに選ばれたということはどちらも勝ちということである。
「ルイルイ?あのさ、、」
千尋が両方の人差し指をツンツン合わせながら流唯に何かを聞いてきた。
「なに?」
「あのルイルイの出番の時立ち上がって叫んでた人がソータくん?」
「ん、あれがソータ。」
「ふーーん‥‥。」
「どうかした?」
「なんでもない!じゃあ、またねルイルイ!」
「次はボコボコにしてあげる!」
「ん。」
千尋が変なことを聞いてきたがそれもすぐに忘れてしまうほど、今はオーディションに選ばれたことが嬉しかった。
♢
会場を出た後、着替え終わった流唯と合流して帰り道を並んで歩いていた。
「流唯ちゃん、おめでとう。」
「ん、ありがと。」
風花に言われて流唯はうれしそうだ。
「相沢のお祝いでなんか食べて帰るか?」
もう日も暮れ始めており、晩ご飯を食べるのもおかしくないくらいの時間だったので、想太はこんな提案をした。
「賛成ー。」
「うん、いいよ。お祝いしよ。」
彩、風花も晩ご飯を食べて帰ることに賛成なようだ。
「僕もいいよ。」
「それより、、想太が立ち上がって叫んだ時はビックリしたなぁ。」
裕也も食べて帰ることには同意したが、先ほどの想太の一件を蒸し返す。
「うるせーよ。」
想太は少し恥じるような顔で返事する。
「よくあるスカッとする番組より、スカッとしたわ。」
「スカッとマンじゃん。」
「誰がスカッとマンじゃ。」
彩も先ほどの想太をいじる。
「不知火くんがあんなになるの初めて見たよ。」
「結城までやめてくれよ。」
そう言って想太は笑っている流唯、風花、彩、裕也の4人より少し早く歩いて、前に出た。
それについて行くように流唯も1人で前を歩く想太の横に並んだ。
「ソータ‥。」
「なんだ?」
「ん。」
想太の頬に柔らかい何かが触れた。簡潔に言おう、流唯が想太の頬にキスをしたのだ。
「な⁉︎」
想太驚いて流唯から体を離す。
「サヤちゃん?痛い、首取れるよ‥。」
今の流唯のキスを後ろで見た彩は荒れるように隣に歩いていた裕也の肩を揺らす。裕也の首がぐわんぐわんなっている。
風花は顔を手で覆っているが、その隙間から想太と流唯を見ている。
〔面白いことになってきたね。〕
裕也はそんなことを考えながら彩に揺らされていた。
「ソータ!」
流唯は体を離した想太の腕に抱きついた。
「今日は助けてくれた。ありがとう。」
「ソータ、大好き♡」
「え、ええ⁉︎」
想太はなにが起こってるのかわからなかった。
〔流唯も不知火のこと好きになっちゃった⁉︎〕
〔強敵出現だよぉ〜。〕
彩、風花は当然焦っていた。
「ソータ、私と結婚して?」
「はぁー⁉︎」
恋をしたことがなかった少女、相沢流唯は今日初恋をした。その男の子はオタクで、三次元には興味がない変わった男の子。でも、友達のために力を貸してくれる、周りに怒ってくれる、そんな熱さを持っている男の子。
こうして、オーディションは終わった。
相沢流唯にも、不知火想太にも今日が忘れられない日であることは間違い無いだろう。
しかし、想太を中心とする恋の嵐がこれからもっと激しさを増して行くことになるとはこの時点ではまだ誰も思いもしていなかった。
読んでいただきありがとうございました。いかがでしたでしょうか。
ついに流唯ちゃんが想太に恋に落ちてしまいましたね。あんなピンチ救ってもらったら好きになっちゃいますね笑
次回は春の林間学校行きます。そしてあのキャラがまさかの転校してきます。
誤字脱字有れば書いてくださいね。これからも木枯ショウをよろしくお願いします。