赤い糸
僕は彼女と僕を繋ぐ赤い糸が忌々しい。
この糸は証明、僕らが離れることも変わることもない証明だ。
運命の糸、血と血を繋ぐ赤い糸、こんなにも近くにいるのに、こんなにも遠い存在。
僕は彼女と同じ場所に生まれたことを後悔する。
兄妹の距離はいつまでも一定、それ以上にも以下にもならない。
全てこれが悪いのだと自分の中に流れる血を憎んだ。
同時に、私は感謝もしていた。
この赤い糸のおかげで自分は何があろうと彼女から離れることもないのだから。
モニターが彼女の呼吸を教える。
真っ白な汚れ一つない部屋のベッドで彼女は横になっている。
医療的ケア児、彼女が生まれながらにして背負っている呼ばれ方の一つだ。
彼女は呼吸器がなくては生きていけない。
両親は彼女を、妹を捨てた。
彼女を愛せる人間はきっと僕以外にいないだろう。
可愛い妹、大切な妹、せめて僕は僕が終わるまで君の隣で君を愛そう。
僕は彼女の手をそっと握った。
赤い糸は僕を逃がさない。