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僕の想いは永遠に。  作者: TAIKI
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ある夏の二人の物語 〜練習〜

中学生活の中で繰り広げられていく翔の片想い。様々な出来事を通して、縮まる二人の距離だが、うまくいきそうで行かない甘酸っぱい青春ストーリーを描いていった小説。

広田翔。僕グラウンドに立っていた。そのグラウンドでは太陽が照りつける中、大声が飛び交っている。

「そんなんじゃ、優勝できないぞ! もっと声出して、動きも素早く!」

そんな先輩指示に従い、僕たち黄団一年は言われた通りに動く。だが難しい箇所はいくつかある。

「難しいのはわかるけど、一生懸命取り組んでね。三年生の最後の体育大会だから、張り切って頑張るよ!」

声を掛けてきたのは、二年生の川越春樹先輩だ。一年生の評判も良く、優しい先輩だ。

「細かいところでわからないことがあったら無理なく聞いてね。頑張って!」

そう声をかけると他の一年生の指示に回っていた。

あれなら人気がでるなぁ…。そう考えて練習に取り組もうとした時、ふと目に入ってきた。

「ここってこうであってるよね?」

「うん。でもここの動きをこうするともっといいかも。」

一生懸命、人に振り付けや応援のやり方を教えている。身長から見ても一年生だ。

「かっこいいなぁ…」

そう独り言をつぶやくと、

「熱中症予防のため十分間の休憩をとります。各団テントで水分補給をしてください。」

言葉を遮るように放送がかかった。一斉にテントに向かっていく。テントにおいてある、自分の水筒をとってお茶を飲む。すると背後から、

「はぁ、あっつい。夏ってなんでこんな暑いん?」

「季節あるから仕方ないだろ。」

タオルで汗を拭いて、水分補給しながら愚痴をこぼしているのは幸田涼介。入学してから仲良くなったクラスメイトだ。多分、親友と言える仲だろう。だが、そんな会話も暑さであまり続かず、二人ともぼーっとしていた。その視界にあの女子が入ってきた。

「そうなんだ。あっ、そういえば昨日さぁ、家の周りの草抜いっとったらセミ出てきて、転んでさぁ、マジ痛かった笑。」

「まじで!? 大丈夫? 急にセミ出てきたらビビるよね笑。」

汗はかいているけれど、涼しげな顔をしている彼女。夏の暑さを気にもしないような楽しげな二人の会話。

『いつかあんな風に会話して見たいなぁ。』そう思っていると、

「大丈夫? すごいぼーっとしてるけど。」

涼介が声を掛けてきた。それと同時に一気に現実に引き戻された。もしかして、見惚れてた? そう考えていると暑さも遅れてやってきた。

『生徒の皆さんは、グラウンド中央部に開会式の順で整列してください。」

実行委員会の放送がかかり、一斉に生徒が中心部に向かって歩き始める。

「よぉーし! 気合いいれていくぞ!」

涼介と僕は気合いを入れてみんなが進んんでいく方向に向かって歩きだす。


「これで今日の練習を終わります。じゃあ実行委員長挨拶お願い。」

進行していた先生が委員長に挨拶を任せる。

「気をつけ! 礼!」

ありがとうございました!

他の生徒も一斉に声を出して挨拶をする。

「やっと終わった〜。運動したから腹すげー減ったよぉ。」

「だね。でも教室戻ったら給食だからもう少し頑張れ。」

午前中、ずーっと外で練習してたから俺たち以外にも元気がない男子が多い。

「昼飯早く食おーぜ!」

そう言って、涼介は駆け足で教室へ戻っていった。

「ねぇねぇ、広田君。」

背後から突然聞こえた声。聞きなれない声だ。振り返って見るとあの女子がいた。体操服には、『小崎』と書かれていた。

「団のことについて話したいことがあるから昼休みに教室に集まってくれる?」

「う、うん。何時ぐらいに集まればいい?」

少し戸惑いながらも返事をした。

「一時十分ぐらいで。他の団員にも伝えといてくれる? じゃあまた。」

会話は長く続かなかった。彼女はこの暑さで汗を流していたけど、疲れている様子は見えなかった。教室に戻ると、すでに給食の準備ができていた。あとから考えてみると、給食当番だけ少し早く解散してたっけ?でも気にすることではない。

「遅かったね。何しとったん?」

涼介はすでに給食を用意していた。

「団リーダーと話してて、『言いたいことがあるらしくて昼休みに集まって』って小崎さんいってたよ。」

「えぇ〜、面倒。まあ団リーダー言うことなら行かんと。それより腹減っているから飯食おうぜ。」


「…の場所が変更になったから、覚えておいてね。じゃあ今日はこれで。集まってくれてありがと。もうすぐ練習始まるから移動してね。」

彼女の説明が終わり、団員が離れていく。その中で僕に向かって歩いてくる人がいた。彼女だ。

「広田君、今日はみんなを呼んでくれてありがとう。助かったよ。またよろしくね。」

少しはにかみながらお礼を言う彼女に少し惚れてしまった。今までで見たことのない表情だ。こんな可愛い表情があるのか?と思うぐらい。そんな彼女の指示を覚え、来週の体育大会に向け、全員が一生懸命練習に取り組んでいる。午後からは式の隊形練習。ほとんど立って、歩くだけの結構だるい練習だ。しかも気温が一番高い昼過ぎに…。隊形移動とか『こんな練習いるか?』と毎回思う。

「この指示がかかったら右を向いてぶつからない程度に広がってください!」

「そのあとは〜があるので最前列の人は、こう移動して、三列目の人は前列の人に合わせて動いて…。」

そんな面倒な練習を終え、今日はもう帰宅だ。夕暮れの空はオレンジ色から少しずつ紺色に変わっていく。風も少し冷たく感じる。気温も日中に比べ、気温が下がっている。

「今日も疲れたなぁ。」

今日一日の練習を振り返って見ると一番印象に残っているのは、あの彼女のはにかみ顔。今までで見たことのない顔。布団の中で、彼女の顔を思い浮かべてみる。何度思い返しても忘れられない。そんな毎日を過ごしていった。

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