表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

バッドエンド

転移者の狂気

作者: 佐田くじら

よろしくお願い致します。

あるところに、歌を歌うことの好きな少女がいた。


彼女の歌が聞こえぬ時は、彼女が飯を食らう時と寝ている時だけだった。


彼女は小さな村にいた。


彼女を知らない者はいなかった。


彼女の歌う歌は、誰も知らない言葉だった。


だが、彼女の歌う歌は誰もが心を引かれる歌だった。


声が綺麗なのもあるが。


歌が魅力なのだ。


不思議な歌だ。


ある人は感謝の歌だという。


ある人は怨嗟の歌だという。


彼女が歌うとき、彼女の表情は抜け落ちる。


感情を押し殺すように。


理性を解き放つように。


彼女の生まれは村ではない。


ある日突然現れた彼女は。


神だとも鬼だとも言われてる。


村人は彼女を恐れる。


彼女に食料が与えられ。


彼女に住居が与えられ。


村人は彼女を崇める。




あるとき、彼女に恋した男が現れた。


曰く、歌に惹かれたと。


曰く、彼女に惹かれたと。


彼女は歌いながら、にっこりと嗤った。


彼女を不気味に思う者さえ、ゾクリとする笑みだった。


彼女は、歌に返事をのせた。


彼は、それを聞いて泣いた。


彼女も、それを見て泣いた。


彼女の、初めての涙だった。


彼はその日から、彼女と共にあった。


彼女は彼の唯一で。


彼は彼女の唯一で。


互いは世界で一人の理解者だった。




暫くして、彼女の声が枯れた。


彼女の美しい声はなくなった。


だが彼女は歌い続けた。


彼と共に歌い続けた。


醜い声で歌い続けた。


狂ったように、歌い続けた。


辛いと嘆くように。


幸せだと喜ぶように。


やがて彼女の喉は裂け。


やがて彼女らの歌は消えた。


共にふたりの姿も消え。


歌の響く村も消えた。


さる人は平和が生まれたという。


さる人は平和が死んだという。


あの人は呪いだったという。


あの人は祝いだったという。


彼と彼女の逝く末は。


誰にも掴むことができなかった。


ただひとつ確かなことは。


彼と彼女の存在の影が。


いつまでも村人の心に残ったことだ。

読んでくださった方、ありがとうございました!

ポイントを恵んで下さい!(直球)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ