波長を合わせよ
ゆっくり目に更新いたします。
キィイイイッンンン
白い閃光が走る。
吾の撃った白光線が、敵に弾かれたのだ。
反射した光線が、こちらに跳ねる!
「ミミ、防御!」
「はいはい、すくるど!」
ミミの防御で光線を弾き、白い光が消滅する。
すかさず、吾はスペクトル調整を終えた白光線を、オーバーサイズ気味で狙う!
「ミミ、大防御を展開!」
「はいはい、すくるでしあ!」
一帯が円いフィールドに護られて、反射光の防御を固める。
その一瞬後ーーー
吾の撃った白光線が、敵の陣の少し上ーーー何も無いはずの空間を撃ち抜いた。
「グガァッ!!!」
干渉波が揺らぐ。空間に何者かが現れた。
サイララル陣営の一人、マララ・サイララルだ。
「グッ……ウウゥ……」
なかなかの痛手を与えたようだ。
マララ・サイララルは腹部に風穴が開き、青い出血をしている。
「【青】のマララ確認」
「はいはい、【青】のマララ確認!」
ミミは吊り下げ型通信機に報告する。
「―――了解」
これで、本部が【青】対策用に調整した、可変波長兵器ーーー空に在します光を送られるはずだ。
「一旦後方に!」
他の仲間に聞こえるように、陣営に下がりつつ、敵陣営に閃光弾を投げた。
眩い光が敵陣営を包み、すかさず敵の誰かがたゆたう霧を展開、無効化するのが見えた。その直後、
ガラララララ……!
吾は天を仰ぐ。
「ミミ!来た!」
「はいはい、空に在します光受け取りますよー」
ミミが光線道路から空に在します光を受け取り、吊り下げ型通信機で本部に報告する。
「はいはい、受取完了ーーー白の彼方へ」
通信終了の合図を送り、空に在します光を吾に渡す。
首から通し、肩に乗せた空に在します光に吾の白光線を充填すると、【白】から【青】へ光線の波長が変わった。
「ギーメ、リーメ、頼む」
[……35][41/22]
吾の右眼と左眼が射程距離と角度を測り、確度を上げる。
「タイメ、最終調整を」
[(青波長微調整完了、射出用意)]
額の吾が第三の眼が、波長微調整を完了した。
吾が発動条件となる最も適した言葉を唱える。
「青き光よ、炎となれーーー空に在します光」
射出された青き炎が、大輪の花のように広がり、【青】のマララごと敵陣営を包み込んだ。
マララを取り込んだ青き炎の花は、そのままさらに大きくなり、やがて大量の青い花びらを降らす。
ーーー敵陣営一斉殲滅。作戦は成功した。
「ミミ、報告を。ナッハーは残存兵がいるか確認。ギーメ、リーメ、タイメ、ご苦労だった。吾に戻れ」
「はいはい、報告入れますよーーー遥か白より」
ミミが報告を入れる間、吾の鼻が残存兵の臭いを嗅ぎに去る。右眼、左眼、第三の眼が戻ってきた。
「報告通り、【青】だけだな。【黄】もいるかと思ったが」
[……【黄】は西の方][87/100の確率]
[(サイララル西、ハグマタイル山脈に異変あり)]
三つの眼が一斉に話す。
「【黄】の狙いは何だ?」
[残存兵ナシ!臭いナシ!西はキナ臭いヨ!爆薬の臭いプンプン!]
ナッハーが報告する。
【黄】は爆破し、山を崩したのか。
「ミミ、本部に連絡を。ハグマタイル山脈に異変。恐らく爆破し、山が崩れた。規模不明」
「はいはい、サイララル西、ハグマタイル山脈に異変。爆破の可能性」
「ーーー了解。脳髄より司令、白の光線士よ、ハグマタイルへ向かえ」
「了解。ミミ、伝えておけ」
「はいはい、本部、了解。直ちに向かいます。ーーー白の彼方へ」
通信終了の合図を送って、ミミを戻す。
これで、吾の顔は揃った。
「では、撤収後、ハグマタイル山脈へ向かう。あそこへは光線道路が未開の地になる。ヒザンとウディはどこだ?戻り次第、吾の移動形態をとる。各部伝達を行う」
吾はセキカンを取り出し、同調をし、各部一斉伝達を行う。
ある波長に同調させた仲間の骨を伝い、共鳴させる。
指示が伝わり、離れた位置にいる仲間達が一斉に動き出す気配がした。
次は西、ハグマタイル山脈へ向かう。
高山であり、鉱山でもある。
そこを、爆破とは。
「自滅覚悟か……。それとも」
嫌な予感がする。あの山脈の近くには何があったか。
吾はヒザンとウディが揃うのをじりじりと待った。