主人公のメイドさん
今日はダイライズ様に会いました。
黒髪に、"あの一族"の象徴と言われるあの金のメッシュ。整い過ぎている完璧な顔で、大きさ存在感を出している赤黒く燃えているような色の瞳。
その瞳で見られるだけで身体中に喜びが走ります。生きてて良かったと思えました。
そして、
「君には頼みたいことがあって呼び出したんだ」
と、これまた全てを魅了するような低く優しい気品が溢れる声で言いました。
はぁ...幸せ。
「はい」
高鳴る鼓動を抑え、声の大きさも大きくならないように、それでいてできるだけはっきりと綺麗に答えました。
「新しく産まれた俺とロイナの子供のことだ。
君におの子守りを任せたい
あの子...ハライズの専属メイドをやってくれるか?」
なん足る光栄!ダイライズ様とロイナリア様のお子様の専属メイドとは!
「はいっ。喜んで」
なんとか落ち着いて答えました。もしかしたら声に喜びが出てしまったかもしれません。
「ま、そんなわけで頼むよ」
「はいっ」
その後ハライズ様のことを寝かせようとしましたが、ロイナリア様が、
「せっかくだし私が寝かせてもいいかしら?」
とおっしゃったことで私の仕事は明日からとなりました。
この感じだと私の仕事はロイナリア様が不在の時のみになりそうです。
ロイナリア様はちょっと茶目っ気があるお方ですので、興味からやってみただけなどということが多々ありますが、今回は三日坊主にはならなそうです。
長くメイドをやっていると分かります。あの母性的な雰囲気はハライズ様を思ってのものでしょう。
そんなわけで私は今日は寝ます。お休みなさい。
今日の朝は隣の部屋からの音で目が覚めました。
隣の部屋はハライズ様がいらっしゃる筈なのですが、どうしたのでしょうか。
そこまで大きい音ではなかったのでハライズ様がベッドから落ちたのではないとは思いますが、それでも心配だったので急いで様子を伺いに行きました。
そうしたらなんと!ハライズ様が魔方陣を出し、そこから鎖を召喚していたのです!!魔方陣と鎖が放つ赤黒い光はダイライズ様の瞳の色と同じでした。
やはりハライズ様も天才でいらっしゃいました!
魔力は感じないのでスキルを使ったのかもしれません。
どちらにせよメイド長に報告しに行かなければということで、急いで報告しに行きました。
メイド長は戸惑いつつもとりあえず一緒にハライズ様の部屋に来てくれました。
ハライズ様は起きていらっしゃり、さっきのように魔方陣を出していました。
メイド長は唖然としていました。しかし、しばらくたってやっと正気に戻り、私に指示を出して来ました。
「あなたはハライズ様と遊ぶか、寝かすかしてください。そして異常があったらすぐに報告してください。私はダイライズ様に魔道具でこのことを報告します」
さすがメイド長です。こうした異常事態でテキパキ指示を出せるのは凄いです。
その後早めに帰って来たダイライズ様とロイナリア様が鑑定の魔道具を使うとハライズ様の情報がズラズラと出てきました。
本当は貴族たちが集まるお披露目会で、初めて鑑定をしなければいけないのですが、この際仕方がないことです。それにそんなルールを守る貴族はほとんどいませんし。
そんなことより皆の視線はこの鎖の魔王という文字に集まっていました。もちろん私の視線も。
メイドさん。
...この響きがいいですね。