イレギュラーと共に (2)
...知らない天井だ。頭痛が酷い。身体が怠い。
周りを見渡そうとしても首が動かない。目に見える光景も霞んでいる。
「~^%$¥{$>?」
...何語だ?
「ああーうぅー」
答えようとして出てきた言葉は可愛いうめき声。
あれ?俺って、死んで...。
キーーーーーーーーーーン‼
う"あ"っ!酷い耳鳴りだ。同時に頭の痛みも強くなる。身体が暑い。気がつけば、気絶していた。
...知らない天井だ。なんかデジャブを感じるが、本当に知らない天井だ。緑色だ。というか、壁も窓ガラスさえも緑色だ。変な趣味だな。
今回は頭痛もしないし、身体も怠くない。
...さて、考えよう。俺は、死んだ。そして、自分の記憶が消えて行くことに気がついて必死に抵抗したんだ。死んで行くとしたら天国か地獄か女神様が微笑む謎の白い空間と決まっているのだが、ここはどう考えてもそんな所じゃない。
やっぱり、転生か?そうなのか?だとすれば、凄いワクワクする。...いや、だってさ?神童とか言われてちやほやされるんだろ?
...正直、未練はある。だが、そこまで多くはない。童卒してないことくらいだ。親孝行は済ませといた。友達や同僚もいたが、プライベートで会うことはほとんどなかったくらいの仲だった。そこまで会いたいわけじゃない。まあ、そんなわけで新しい人生を楽しんでみたいのだ。
ってことは、今俺は赤ん坊なのか?
そんなことを考えてたら、俺の身体を浮遊感が襲った。なんだこれ!?まだあまり動かない頭をなんとか動かして状況を確認しようする。赤毛で、巨乳で、アホ毛がある美人が俺を抱っこしていた。なにこれ凄い良い。じゃなくて、なんだこの状況?もしかしてこの人が親なのか?だとしたら凄い嬉しい!
その後、赤アホ毛さんに連れてかれた俺は、赤アホ毛さんの家にやってきた。デカイ。貴族か?やべえ。俺、勝ち組か?うぃー。
そしてベッドに寝かされる。俺も眠くなってきた。寝るか。お休みぃ...zzzz 。
...知らない天井だという天丼ネタをしつつ、まじでここどこだよ?謎の白い空間。そして俺残の目の前にいるのは...白髭お爺ちゃん。...女神様じゃないのかぁ。
『なんだよ失礼だなぁ』
口調が"~じゃ"じゃないだと!?
『驚くとこそこかよ』
...心が、読まれている!?
『いや、遅くね?』
...なんか、ノリが良いね。
『僕神様だよ?何でそんな友達感覚で話すの?普通は僕を恐れたり、媚を売ったりするものだよ?』
いや、なんか気が合いそうだからかな?神様を見ると落ち着くっていうか、安心するっていうか。
『まあ、神だからねぇ。存在するだけで生き物に安らぎを与えるくらいの力はある』
すげぇ。...で、その神様が俺になんのようなんだ?
『ああ、やっと本題に入れる。...君を鎖の魔王に任命する!頑張れ!』
なにそれカッコいい。鎖?大抵の作品で強キャラポジな能力のあの鎖ですか!?
『うん。そだよ。良かったね。』
うぃー!...の前にちょっと待て。魔王なの!?
『スキル《魔王の鎖》を与える』
うぃー!
『呪い【呪い好かれ】を与える』
うぃー...え?呪い?
『スキルと呪いの説明は、念じれば出てくるから後で確認してね』
はい。...え?呪い?
『僕は勇者と魔王をそれぞれ12人ずつ選んで、一人一人にスキルと呪いを与えるのさ』
あー。魔王とか言われて興奮したけど、12人もいるのか。まあ、勇者討伐を他の奴に任せられるって考えればいいか。
『魔王には、運命的に引き合う魔王と、引き合う勇者が一人ずつ居る』
ほう。よくある設定だな。ということは勇者には引き合う勇者と引き合う魔王がいるということか。
『そうだよ。察しが良くて助かるよ。そうして最終的には全ての勇者と魔王が集まるというわけだ』
なるほど。
『で、だ。君、鎖の魔王と引き合う存在は、逃亡の魔王と融合の勇者だよ』
...なんじゃそりゃ。融合の勇者はまだしも、逃亡の魔王て。どんな能力だよ。
『そんなわけで、頑張ってね』
はーい。頑張りまっす。
俺の記憶はそこまで。
そして今俺はベッドの上で知らない天井を見ているわけだ。
残念だったな!頭痛が痛いなんて初歩的なミスを犯す作者ではないのだよ!