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前奏曲~異世界において神とは、全てを超越することである~

気づくと、俺は不思議な空間にいた。

病院かとも思ったが、どうもそうではないらしい。

眼下に広がるのは、果てしなく続く見たことのない世界。

恐らく、これは異世界と言うやつだろう。

となると、俺は向こうで死んでしまったようだ。

ならば、これはライトノベルでよくある転生と言うやつだろうか。

いや、俺はそんなこと望んでなかった筈だ。

それに、結局あいつに伝えられなかったな、心残りだ。

そんなことを考えていた俺の前に、変なものが現れる。

光る思念体のようなものだ。

此方の世で言うならば、幽霊と言ったところか。

此方の世界でなんと言うのかは知らないが。

俺が観察を続けていると、あろうことか思念体が声をかけてきた。

「こんにちは、至恩。私の名はアステル。この世界における、最高神であり、創造神だ。君はあちらの世界ではすでに死んでしまっているんだが、その様子を見ると受け入れているようだね?」

「ああ、トラックに引かれたのも覚えているしな。そもそも、これで死んでいないと言うのなら俺の想像力は豊かすぎることになる」

俺がそう答えると、思念体……アステルは面白そうに体を震わせて笑った。

だってそうだろう。これで死んでいないとすれば、ここは俺の夢世界ということになる。

とんだ想像力だ。いや、ここは創造力と言うべきか?

「ふふ、面白いやつだ、君は。では、私が何故君をこの世界に呼んだのか、それはわかるかな?」

「チュートリアル過ぎるな。世界を救う勇者……ではなさそうだ。なら考えられるのは一つ。俺を憐れんだ、そういうことだろう」

俺がそう答えれば、アステルは驚いたように笑うのを止める。

当てることはできない、とでも思っていたのか。

アステルとの会話は、少し不愉快だな。

会社で年上のやつからネチネチ弄られてる気分だ。と言えば分かってもらえるだろうか?

兎にも角にも、このまま向こう優先で話されるのは癪だな。

今度は、こちらから質問させてもらおうか。

「お前は俺を憐れんだ。それが正解だろう。だが、俺は転生なんてたいそれたこと、望んでいなかった筈だ。なのに何故、お前は俺を転生させた?それも、この異世界に」

俺の問いかけに、アステルは少しの間なにも言わなかった。

が、やがて口を開き、告げた。

「・・・君はとても賢いようだ。でも、少し難しいことを考えすぎているようだね。私が君を転生させたのは、君のあちらでの行いを称賛したからだよ。本来、私がすべきことはあちらの世から勇者を見つけ、連れてくることだ。でも君は違う。ただ、私が君に人生をやり直す機会をプレゼントしたかっただけなんだ。君の意思を無視して悪かったね」

「・・・そうか。確かに、俺の考えすぎだったようだ。俺の方こそ、恩を仇で返すような無粋な真似をして、悪かったよ」

恐らく、アステルは嘘をついていないだろう。

裏があると言うわけでもない、純粋に俺を転生させたようだ。

ならこれ以上疑うのはお門違いというものだ。

そう考え素直に謝れば、アステルは気にしていないと言うように首をふり、この世界について話してくれた。

話は以下の通りである。


この世界の名はサンスフィル。

この世界は大きく分けて、七つに分類される。

ウォータースフィル、ファイアスフィル、ウッドスフィル、ソイルスフィル、ウィンドスフィル、サンダースフィル。

そして、ダークスフィル。

それぞれの国の名は、その地の特徴によって決められている。

ウォータースフィルは、その名の通り水に恵まれた国であり、魚などの水産業が盛んである。

ファイアスフィルは、世界で初めて炎が誕生した歴史ある国で、ウォータースフィルと同盟を組んでいる。

ウッドスフィルは、木にかこまれた鎖国じみた国。

ソイルスフィルは砂漠の国で、ウッドスフィルとは現在戦争中。

ウィンドスフィルは大いなる風に護られた、平和な国。今まで戦争をしたことがないと言うから、驚きだ。

サンダースフィルは魔導師や冒険者などが多く存在し、大きな冒険者育成学校がある。

最後はダークスフィルなのだが。。

「・・・?アステル、ダークスフィルは魔族しかいないのか?」

そう、話を聞く限りではここに棲んでいるのは魔族や魔物などの、人々に恐れられる存在ばかりなのだ。

「ん?そうだね。ダークスフィルにいるのは、魔族や魔物、魔王くらいだ。あとは魔帝と呼ばれる存在だね」

「そうか。俺は何に転生するんだ?」

そこを知らなければ、何も始まらないからな。

「ん~、まだ考えている途中なんだけどね、外見とかの希望はあるかい?年齢とか」

外見と年か、そうだな。。

この世界ですぐに死んでも面白くないよな。

なら、ここはやはり十八歳くらいだろうか。

見た目は・・・・うん、人様に嫌われないような顔でいいよな。

不細工でもなく、イケメンでもなく。

これが一番だろう。

「そうだな、年は十八。外見は得てもなく負てもなく、だな」

「わかった、そう手配しよう。最後に……君はこの世界で、何を望む?」

・・・・望み、俺の望みは。


「今度こそ、幸せをつかんで見せる」


今度こそ、大切な人に悲しい思いをさせないように。

幸せをこの手につかんで見せる。

それが、俺の望み。


「ふふ、分かったよ。さぁ、そろそろ君とはさよならだ。新しい世界で、二度めの人生を楽しんでくれ。・・・・ああ、忘れてた。その前に元の姿に戻してっと」

「!?」

光に包まれていたアステルの体が、より強い光を放つ。

あまりの眩しさに目を閉じた俺は、目の前の光景に戦慄した。


俺の目の前に立っていたアステルの姿は、何処からどう見てもあの時助けた幼女の姿だった。

「行ってらっしゃい、至恩!そして助けてくれてありがとう!!」

「おい待ててめぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」




こうして、俺の異世界転生記は幕を開けたのであった……



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