初めての木こり
アローモンキーの弓については意外と分かっていないことが多い。人間だった頃にアローモンキーの弓は猿にあった小さい弓なのに威力は木の盾くらいなら貫くほどだと聞いたことがある。
「じっちゃん、弓ってどうやって作るんだ?」
実際俺も興味があった。
「ハードウッドを使うからの、ハードウッドを探すのじゃ。」
ハードウッドはとても固い材質の木である。
固すぎてしなやかさがないため弓など作れないはずだが…
「見つけたぞぉぉい!ハードウッドォォ!」
無駄にテンションが高い。
「じっちゃん、テンション高すぎんだろ…」
「いや…そうか…?悪い悪い。弓を作るのは久しぶりでの、お前の親父のを作っていらいじゃから……ッ!」
じっちゃんは急にハッとした顔をした。
「すまん、お前に親の話は酷じゃな…一度も会えんというのに…」
正直言ってどうでも良かった。スライムの時の家族の方が今でも気にかかっている。子供達は無事に大人になっているだろうか…(スライムは生後20日くらいで大人になる[一章を参考]現在、アローモンキーに転生してから2〜3週間は経っているのである。)
「いいんだよ、じっちゃんがいるからさ」
これは本心だ
「ボン…ッ!」
じっちゃんがニカッと笑った。黄ばんだ牙がこちらを覗く。
「よっしゃ、このハードウッドでええ弓作っちゃるでぇ!」
…どこの訛りだ。だがますますじっちゃんが乗り気になってくれた。
「ハードウッドってのは普通は硬くて細かい加工には向かん。」
「じゃあどうするんだ?」
「まずは材木を剥ぎ取ってじゃな…」
そういうとじっちゃんは黄ばんだ牙で幹にかじりつき始めた。
「何やってんだよ!」
「ふがふが、ふが、ふがが!(材木作りじゃ!)」
とりあえずじっちゃんを引き剥がした。
「で?なんだって?」
「材木作りじゃ!邪魔するでないぞ!」
じっちゃんはまた幹にかじりつこうとする。
「そんなんじゃどんだけ時間かかんだよ!」
「じゃが、材木を得るにはこうするしかないじゃろうが…」
俺はあたりを見回した。すると石がちらほらと落ちている。…しめた!
俺はとりあえず石を二つ拾ってきた。そしてそれらを打ち合わせた。石と石が砕けあい、ギザギザとした石ができた。
「ふが、ふがががが?(ボン、なんじゃそれ?)」
またかじりついてんのかよ!
「ふー、ボン、なんじゃそれ?」
今回は自主的に止めてくれたようだ。
「石をぶつけ合って鋭利にしてみた。噛みつくよりこれで削った方が簡単に材木が取れると思うぞ」
そう言って、じっちゃんがかじりついていたであろう2ミリ程しか傷ができていない所を石をあてがって削ってみた。
ゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
ゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリゴリ…
大体30分程で幹の3分の1ほどのところまで刃(と呼んでいいかわからないが)が入った。
「おぉ!なんちゅー速さじゃ!」
じっちゃんが感動している。
「大体ここまでいくのにあのやり方ならどれくらいかかるんだ?」
「大体2日じゃの。」
……アローモンキーはあくまで猿。やはりバカなのかも知れない。