死ぬために
老人は考えていた。
このタイミングで少年がつれてくる人とは誰だろうか。老人の友人は皆死んでしまった。老人の周りには老人と同じくらい何もしなかった人が思い付かないのである。ならば誰なのだろうか。
少年は部屋から出ると車椅子に乗った一人の老婆をつれてきた。
老婆の顔はしわくちゃで全身は枯れ木のようであった。かつてどんなに麗しい美女だったとしても誰も分からないだろう。
「、、、古川さん」
だが老人には一目でわかった。
枯れた声が少し咽にひっかかりながら老人はまた目を涙でいっぱいにしていた。
「竹人さん、お久し振りですね。お元気そうなのが残念です。」
「古川さん、なんであなたみたいなすばらしい人がこんなになるまで生きているのですか?」
「あなたと同じですのよ竹人さん。私も何もしなかった。だからここにいるのです。」
二人の目にはかつてのまだ若く自由だったときの姿そのままに見えていた。
「竹人さん、このお花を覚えていますか?あなたが私にくれたお花。
古川さんはこの部屋で見慣れた花を彼女のポケットから差し出した。
「もちろん覚えています。スターチス、花言葉は
永久に朽ちぬ愛」
少年はあの日からスターチスの花について調べてそここらホーム内に同じ花を飾る古川さんに出会った。
「竹人さん、、」
「古川さん、、、」
二人は立てないはずのそのあしでからだを起き上がらせ少しずつ歩みよる。
二人が愛をなそうとするごとに、二人が完成に近づくにつれからだは力を失い思いは声とならない。
しかし、それでも二人はお互いを求め合う。
「私は」
「僕は」
二人は崩れるようにお互いにのしかかりその場で足から崩れ落ちる。
「ずっと」
「好きです」
二人の思いが言葉になり形となった時、二人の魂はここではないどこかに向かっていった。
少年は二人を見届けると何も言わずに部屋から立ち去った。
少年が若くしてこの世を去ってしまうことはいうまでもない
リアルで忙しくなりそうなので今日のうちにまとめて投稿しました。今回は人物描写等が不適切で不快感を抱くひとがいるかもしれません。本当に申し訳ございません。
このお話しでは死ぬためには何かを成さなければならない、簡単には死ねないんだ。ということを伝えようと思い書きました。心の片隅にでもおいていつか思い出していただければ幸いです。
最後までお付き合いいただいてありがとうございました。