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決別
それから少年はずっと老人に話しかけていた。どの話も老人を無視した独りよがりなはなしだった。老人は変わらず外を見つめて黙って聞いていた。もしかしたら少年の行いは老婆や若い女性の話す噂話と何も産み出さないという点ではかわりないかもしれない、少年はそんなことを考えたこともあったが話し続けていた。
「触るな!小僧!」
少年が来てから4日目の朝のことだった。
少年は花瓶の中の花が枯れてきたので取り替えようとした時、老人は少年の目を見て怒鳴りつけたのである。少年はとっさのことにビックリして花瓶を落としてしまった。
床に落ちた花は花弁をバラまき、その間を水がはっていた。
「出ていけ!!」
老人は機械音ではなく彼自身の咽で怒号をあげるとうつむいたまま手を固く握って唇を震わせていた。初めて見る老人の感情的な姿は少年を威圧していた。
少年は何も言えずそのまま部屋を出ていった。
部屋にはまたピッピッとい音だけが残っていた。
それから少年は次の日もそのまた次の日もその部屋には現れなかった。
ただ老人だけが静かに外を見つめる。