二人の出逢い
少年は荷物を宿舎に置き、少年に指導をしてくれるという女性に施設を案内されていた。
バスの運転手の言っていたことは気にはなったが年寄りのいうこと、あまり深く考えることもなかろうとそっとしておくことにした。
「学生さんにはこちらの方を担当していただきます。」
白衣の若い女性は最後に少年を1つの部屋に案内した。小さなその部屋の奥にはベッドが1つ置いてありその上に一人の老人が横になっていた。彼は少年のことは気にもせず窓から外をずっと見ていた。皴やシミが刻まれた全身をシーツで隠しておりシーツの下からはカラフルな配線が絡まりあいながら床に延びていた。枯れ木のような老人を前に少年はまったく違う印象を持っていた。
大木。
嵐がふこうが斧を振りかざそうが絶対に折れることのない生命力を感じていた。
「よ、よろしくお願いします。」
少年はその老人の雰囲気に圧倒されながら敬意を込めて挨拶をした。
しかし、老人は窓の外を見つめるばかりであった。宙に漂い行く場のない少年の言葉を若い女性が拾い上げる。
「もう、せっかくお世話になるんですからちゃんと挨拶を返さないとダメですよ。」
その言葉に反応してか老人は少年の方を真っ直ぐ見つめる。
頭は肌色、頬はやせこけ皴が顔中に走っている。
その目は生命力とは裏腹に虚空に満ちていた。
老人は頭をふらふらと下げ、また外を見る。
「それじゃあ、あとはお願いね。困ったことがあったら遠慮なくいってね。」
そういうと女性は忙しそうにかけていった。
これは厄介な人の担当を任されてしまったな。
少年は外を見つめる老人の背中を見つめながら深く後悔していた。
二話目です。物語のペースはゆっくりですができるだけ短く終わらせるつもりです。最後までお付き合いいただけたら幸いです。