プロローグ
今からそう遠くない未来、科学は進歩し多くのものが開発され、人々の生活は豊かになっていた。医療も発展し平均年齢は100歳を大きく越していた。この物語は世界最高齡の一人の老人が最後を迎えるまでの断片を描いた物語である。
始まりは一人の少年が老人ホームを訪れるところからだった。
広い草原には一本の道だけが続いており、その上を咳き込むようなエンジン音を響かせながら1つのバスが走っていた。バスには「鹿嶋老人ホーム行き」と書いている。小さなそのバスの中はがらんとしており運転手と最前列に座る少年しかいなかった。
「お客さん、若いのに老人ホームになんて何のようなんだい?」
皴が深く刻まれた顔を正面においたまま運転手は少年に聞いていた。
「中学校の職業体験なんです。介護士になりたいんですけど、今日本で人が介護をしているのは鹿嶋老人ホームくらいなので。」
「そうか、今はなんでも機械が面倒見てくれるからな。バスの運転なんてのも機械がやってくれるはずなんだか、ウチの老人ホームは金がないのでね。一番ハキハキしてる俺が運転なんかやらされてるわけだよ。」
「運転手さんは老人ホームの人何ですか?」
「うんだ、あそこに入会して面倒見てもらってる。はずだったんだが最近の若いのは「車なんて運転デキナイ」っていうだろ、仕方なく俺がしてやってるって訳よ、ぐははは。」
運転手の笑顔につられ少年もにっこり笑っていた。
そうこうしているとバスは丘を登り始めていた。
丘を登る道は左右を木に囲まれておりまっすぐ目の前の真っ直ぐ続く道しか見れなかった。
「この丘を登り終えると目的地に着くぜ、ほうらもう見えてきた。」
「これは、豆腐?」
丘を登りきり視界が広げたそのさきには白く大きな真四角の建物が立っており、近くにいけばその絶壁の白い壁に窓が取り付けられているのがわかる。
「ここにきたやつはたいていみんなそう言う。まぁ、最初は違和感があるかもしれないが馴れると愛着がわいてくるもんだ。」
バスは玄関の前で止まるとプーっと一息つきそのドアを開けた。
「お客さん」
運転手は荷物を持ちバスからおりたとする彼に初めて目を合わせてこう言った。
「この施設からでてきたやつは長生きしない。必ず近いうちに死ぬ。」
「それはどういー」
「お客さんならちゃんと死ねるよ、じゃあな」
そう言い切るとバスのドアは二人の間に割り込み、運転手はまた視線を少年から外してバスごとどこかに向かっていった。
初の投稿作品です
中学校の時に書いた作品をまとめ直したものです。感想、ダメ出しなんでも構いせん。
レビューをいただければ幸いです。




