主の不在
今回は第85部の直後の時間軸です
「フィリア、泣いてる場合じゃない。ご主人様を安静にできる場所に連れて行って」
「分かりました。そうですよね、今はご主人様の手当てを優先しないと....。こっちです」
フィリアはルナとリサをある一室に案内する
「ここは?どこですか。今まで来たことがない部屋ですね」
「この部屋は今のご主人様のような重症の患者を治療したりする部屋です。なので常に高い濃度の魔力が湧き出ています。治療魔法でしたら常に使い続けていても魔力切れにはなりません」
「じゃあ、ご主人様は死なないの?」
「ごめんなさい。それは分かりません」
「どうして?」
「重症の状態からいくら治癒魔法を使っても最終的にはその人個人の心、意思の強さで生死が分かれるんです。私ができるのは、魂の宿る肉体の治療だけ、体を離れた魂の治療まではできないんです。本当にごめんなさい」
「でも、ご主人様が私たちを置いて死んじゃうわけないから、治療やって、おねがい」
「分かっています」
フィリアがカイウスに手をかざすとカイウスの体が光に包まれる
「何をやっているのですか」
「この光が消えると治療が完了です。後は待ちましょう。それしかできません。ルナさん、他の皆さんもここに呼んできてください。一人でも多い方がカイウス様も元気が出るはずです」
「分かりました」
ルナと入れ替わるように、ルシが入ってくる
「すまないフィリア、少し来てもらえないか」
「分かりました。リサさん、他の方が来たら事情を説明してあげてください、私は少し席を外します」
「分かった」
連絡事項を伝えフィリアはルシともに部屋を後にした
「カイウス殿はご無事か」
「リサお姉さまご主人様は」
アリシアとサーシャが部屋にやって来た
「今はフィリアの治癒魔法がかかってる。だけど、治癒が完了しても目を覚ますかは分からないって」
「そんな....」
「どういうことなんだ」
「生死を分けるのはその人の心、意思の強さ。肉体はあくまでも魂の器でしかない。いくら器を綺麗に直しても中身が帰ってこなければ永遠に目を覚まさない」
リサの言葉を聞いた2人は衝撃を受けている
「でも、大丈夫。ご主人様だから。ご主人様は私たちを置いて死んじゃうような人じゃないから」
「そ、そうですよね。ご主人様はご主人様ですものね」
「リサ殿の言う通りかもしれんな」
みんな主の危機と言う事実に気が気ではない様子だ
特にサーシャがひどい
いつも着こなしているメイド服のボタンを掛け違え、スカートの裾も折れてしまっている
「みんな、ご主人様が危ない状況っていうのは分かっていると思うけど、まずは自分のことをちゃんとやろうよ。そうじゃないとご主人様が目を覚ました時、笑われちゃうよ。今の姿をご主人様に見せられる?たとえ目を覚まさなくてもご主人に笑われないような振る舞いをしようよ」
リサの一言にみんな落ち着きを取り戻してきたようだ
「リサお姉さま、ご主人様みたいです」
「リサ、流石ね。いつもご主人様のそばに居るだけあるわね」
皆緊張がほぐれてきたときクゥゥゥと可愛らしい音が響く
「サーシャ、何か軽く食べられるものを頂戴」
「分かりましたすぐ作ります、待っていてください」
緊張がほぐれたのはリサも同じのようで、今まで感じなかった空腹感を一気に感じたようだ
「サーシャ殿の食事を食べた後私は周辺の警戒をしよう」
「アリシア、ご主人様の近くに居なくていの?」
「リサ殿に任せよう、何人もいてはカイウス殿も迷惑だ」
「じゃあ、私も」
「ルナ殿戦闘は苦手では?」
「戦闘は苦手でも魔法の練度はアリシアよりは高いはずだから」
「あるものでサンドイッチを作ってみました」
サーシャが部屋に入ってくる
メイド服がきっちりとなっているので、どうやらサーシャも冷静さを取り戻しつつあるようだ
「サーシャ殿にも警戒の手伝いを頼みたいのだが」
「構いませんが、リサは?」
「リサ殿にはカイウス殿のそばに居てもらおうと思っている」
「分かりましたご一緒しましょう」
食事を終え3人は部屋を後にした
「ご主人様....早く、目を覚ましてください。私、寂しいです」
リサのつぶやきがむなしく部屋に響く
次回は、エルフの国の襲撃の深層が明らかになります




