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記憶喪失の星  作者: 神風
第2章 始まり
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二人の宇宙人は…

宇宙には様々な星があり、そこに住むものたちは等しくその環境に適応しなければならない。そうでなければ、その時点で死を意味することとなる。その摂理は地球の生物とて同じである。

故に空気が無ければ宇宙空間で無くても生きていけない生物が地球には圧倒的に多いのだが、『その星』には空気が存在しない。ましてや、まだできて間もない星ゆえに地表からマグマらしきものまで噴き出していた。気温にすれば80度ほどであろうか。

よって、そのような環境の中でも普通に会話をしている『この二人』は、ただの生命体ではない。


また、彼らの『会話』には言葉を必要としていない。精神同調伝達、言い換えれば、『テレパシー』を使ったコミュニケーション能力を用いて対応しているからだ。しかも、この二人に関しては、文明値が同レベルでなければ使えないこの能力に『絶対理解能力』が加わっており、あらゆる星の全ての生物と会話することさえ可能だった。

これだけでも地球人を遥かに越えた宇宙人なのだが、そこまで環境に適応できるこの二人が、現時点でかなり追い詰められていた。



?「…くっ、ヤツの力は…異常だ…。このままでは…宇宙…全てが…滅ぼ…される…。」

?「だからって、あんた一人で挑んで、敵う訳ないじゃない?…って、その体でどこに行くつもり?」

傷だらけの青い宇宙人は細身の宇宙人の忠告を振り払うかのように立ち上がった。その視線は鋭く、また、覚悟を決めたものであった。

?「…ヤツに…『光生』の…力が…渡ったら…全てが…。オレが…必ず…。」

?「ミーシャ…。」


ため息をついたあと、細身の宇宙人は青い肌の宇宙人『ミーシャ』に手をかざし、エネルギーの光の玉を作り始めた。

?「…ふぅ、あんたがどうしても死にたいって言うんなら、見極めてあげる…。」

ミーシャ「…!?…くっ、…同じ…『第三勢力』と…言えども…オレを…殺すか…『レイナ』…。…確かに…オレは…お前に…恨まれて…当然…か。」


今のミーシャの状態では至近距離の攻撃をかわせる余力はない。ついに諦め、死ぬ覚悟を決めて、眼を閉じた。

…が、そうはならなかった。むしろ、とても穏やかで温かい流れのようなものを感じていたのだ。

ミーシャ「!?」

レイナ「…確かにあんたには恨みがあるけど、今、殺しても納得できない。…それより、あんたが生き恥を晒してでもガーラに挑むって言うんなら、もう止めない。」

レイナは赤く光る手をかざし、ミーシャの傷を治していたのだ。

レイナ「今回だけ、だから。別に…助けるつもりじゃ…ないんだから。」

顔を背けつつ小声でつぶやいたレイナは、どことなく気恥ずかしそうだった。

しばらくするとミーシャの傷は全て消え、体力も戻っていた。もはやこの能力は魔法に近いものであった。

ミーシャ「…ありがとう。借りは必ず返す。」

傷が完治したミーシャもまた、照れ臭そうにレイナに礼を言った。

レイナ「むっ…礼なんか言わなくたっていいわよ…。…そ、それより、本気でガーラを追うつもり?」

レイナは照れ隠しのように語気を強めたが、ミーシャも力強く返した。

ミーシャ「あぁ、ヤツは『力』を手に入れるまで、命のある星を徹底的に狙う。こっちは玉砕覚悟で奇襲をかけ…」

レイナ「無謀よ。さっきだって発射する時の隙を狙ったのに、光体攻撃を三発も受けたじゃない!」


打って変わって、認めたくない事実を突きつけられたミーシャの言葉は続かない。

ミーシャ「そ、それは…」

困惑するミーシャをよそにレイナは冷静に考える。

レイナ「それよりも今は一人でも多くの仲間を集めなきゃ。あんたの攻撃がまともにガーラに当たらなきゃ、意味がないでしょ。」

ミーシャ「そうだが…。…くっ、『あいつら』が揃ってさえいれば…。」

レイナ「勝利できる可能性が『1%』くらいは上がるかしらね。無事に生きていればいいんだけど…。まずはそこね。」


どうやらこの2人には他にも仲間がいたようだが、何らかの理由で離れ離れになったようだ。

だが、ミーシャは別の点を気にしていた。

ミーシャ「…それにしてもずいぶん他人事のように言うが、レイナ、お前は戦わないのか?」

レイナ「バカなの?こんなか弱い乙女がわざわざガーラに殺されに行く!?」

ミーシャ「そうか?か弱い、か。お前、歳はいくつになった?」


深刻な内容から、不意な問いかけをされレイナも驚いた。

レイナ「は?いきなり何を聞くかと思ったら…。50よ。」

ミーシャ「…!!ッハッハッ。50ババァが笑わせるぜ。か弱いとか笑えるな。」


いきなり高笑いを始めたミーシャにレイナはついにキレた。

レイナ「!!?あんた、私と、とことんケンカしたいみたいね。そもそもあんたはいくつなのよ?」

ミーシャ「49だ。」

レイナ「な、あんたの方が『年上』?あまりにガキすぎてそっちの方が笑えるわ。」

そう言ったもののレイナの顔はまったく笑っていない。

ミーシャ「全然顔が笑ってないみたいだぜ、おばさん?」

レイナ「むーっ!こうなったら、あんたの死に際の顔を見てやるからね。」

ミーシャ「…分かった。好きにしろよ。」



だが、この二人はお互いに同じことを思っていた。


『こうでも言わなきゃ、一緒に行かないか。』


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