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記憶喪失の星  作者: 神風
第1章 消滅
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技術の違いに…

「母の日」のプレゼントの服を選び終えた香田家だったが、買い物に寄り道は付き物だ。

専門店にあった雑貨やバッグを見つけたものの、値札を見てショックを受け、隣の喫茶店のパフェに誘惑され、食べて落ち着き…。


そして、気がついた。

会計していない服を持ったまま、パフェを食べていたことに…。


会計へと足早に向かった時にはすでに2時間近く経過していたが、三人は終始笑顔だった。




その時、急に周囲が騒がしくなり始めた。


週末のショッピングモールである以上、沢山の客が詰めかけており、騒がしいこともまた当然である。だが、店の中の客全体が同時にざわつき始めたのである。

そして、そのきっかけを作ったのは御幸の前を慌てて走っていった2人の児童だった。



二人が急に店の中に入った途端、レジにいた店員の一人が驚きながら二人を呼びかけた。


?「2人ともどうしたの?店に来ちゃダメって言ったじゃない?」

彩菜「ママ、怖いよ~。」

女性店員は周りの目もあり困惑していたが、彩菜は大変怖がっていた。

彩菜母「彩菜、大きな声を出さないの。…祐樹、いったいどうしたの?」

母親は祐樹に回答を求めたが、その答えはあまりに衝撃的だった。

祐樹「ママ、逃げよう!空から何か降ってくるよ。(横の窓の外を見て)あれっ!」


そう言って窓の外を指差した。







…一時間前に遡る。



NASA(アメリカ航空宇宙局)に人類の歴史史上最大最悪、戦慄の情報が入った。

その内容は国防長官、そして、すぐさま大統領に伝えられたが、それはすべての有事を上回る非常事態だった。


情報源はSETI(地球外知的生命探査)の職員からだった。



会議室には大統領や国防長官、一部の有識者が集まり、報告を聞いていた。

報告する職員も緊張のあまりあいさつすら忘れて始めてしまったが、それを指摘する者もいなかった。

職員「…一時間前、突如、天王星軌道付近に正体不明の光体が現れました。そして、異常な速度で地球に向かってきております。」

その報告に対して最初に質問をしたのは大統領であった。

大統領「その光とは隕石や彗星の類ではないのか?」

職員「いいえ、それは違います。」

国防長官「…何故、言い切れるのだ?」

確かに、正体不明の光であるのに、隕石などではないと説明するのは理解に苦しむ点だ。しかし、職員は緊張感がほぐれてきたからか、即座に応じた。

職員「天王星から木星までの距離を考えると異常に速度が早すぎます。」

大統領「速度が速いだけで彗星ではないとは言い切れ…」

職員「…お言葉ですが大統領、この物体の速さは計算上、光の速度の倍の速さで移動しており、およそ10分程で木星に…」

ここで、会議室が大きくどよめいた。

有識者「光の倍だと?」

国防長官「そんなバカな。」


光の倍という時点で驚きではあったが、職員は更に情報を付け加えてきた。


職員「みなさん、実はそれだけではなく…」

大統領「どういうことだ?」

職員「…光体と地球の間に木星が存在していたのですが…、突如速度が落ち、…貫通したのです。」


途中から職員自身も自分の発言内容が信じられなかったのであろう、声が小さくなっていた。だが、大統領がややいらだちながら聞き返した。

大統領「何!?よく聞き取れなかったが…?」

職員「…あ、申し訳ございません。…ですから、光体が意志を持つかのように木星に接近し、すぐに貫通したのであります!」


大統領を含め、その場の閣僚が凍りついた。もちろん職員の言葉遣いが急に荒くなったからではない。

『ロズウェル』でのUFO墜落だけで手を焼き、また、すでに『異星人エイリアン』とのコンタクト及び交流を行っているアメリカ合衆国にとって、この展開が何を意味しているのかは明白であった。


…大統領は冷静さを取り戻し、確認した。

大統領「…では、その木星はどうなったのか?」

職員「それが…。」

職員はしばらく沈黙した。その表情はテレビ越しからも明らかに青ざめているように見えた。

大統領「…どうしたのだ?」

職員「…まったくの無傷なのです…。」


ニュートリノのように、物質をすり抜ける存在は地球上でも確認されている。しかし、ここまではっきりと光を放つ物質が、太陽系最大惑星である木星に何一つ影響を与えずにすり抜けることができるのだろうか?


そこで国防長官は核心をつく質問をした。

国防長官「…そもそもその正体が何であろうと、その光が地球に真っ直ぐ向かっているとは言え、横をかすめる可能性もあるだろう?」

有識者も大統領も確かに、とうなづいた。が、それは数秒のムダであった。

職員「…いえ、それもありません。」

国防長官「なぜだ!?」

職員「…あの光は地球の公転周期に合わせて、微妙に方向を変えているのです。まるで追尾ミサイルです…。」



…他に質問をする者はいなかった。






もはや地球にある技術で対応できる時間は残されていなかった。そして、『その現象』は、日本の各地においても確認され始め、御幸たちのいた店の上空=東京・品川上空もまた例外ではなかった。


天空に大小様々な光体が現れ、少しずつ降りてきていたのだ。それはまさしく木星を貫通したあの光体だったのである。

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