訪れる死の足音に…
ガーラは焦りを感じずにはいられなかった。
それはもちろん、今まで五つ所持していると思い込んでいた自分の能力が四つしかなかった、と言う事もそうだが、自分の『能力』の象徴であった『滅死』が他の者が使っていたという事、そして、その能力者であった者が連合艦隊戦艦を破壊してきた事。
さらには今回の『消滅砲』では死なない命がいくつもあった事。
不安要素が次々と浮き彫りになってきた。
ガーラは、いや、察しのつく者であれば誰しも、ある答えを導くに違いない。
【もし、『滅死』と『光生』の能力者が手を組み、反旗を翻したら…。】
そう考えたガーラは改めて、危機感を感じていた。
ガーラ「艦隊総員!探査班以外は、その場から撤収せよ。ただちに『戦闘会議』を行う。(禁呪の能力者たちを絶対に近づけてはならない。そのためにも…)」
乗組員「…ガーラ様、…大変申し上げにくいご報告ですが…。」
ガーラ「…!?…何だ。」
乗組員「先ほどから、消滅砲の戦艦五隻との連絡が…途絶えました!」
それは銀河連合艦隊にとって、初めての敗北を知らせる報告になるのであった…。
…時を少々遡る。
大事な戦力であったハミナ、ヤオイが亡くなった直後、五隻の戦艦が地球に来襲しようとしていた。
だが、地球にいた者たちは不思議と緊張はしていなかった。
ミーシャ「…レイナ、オレはお前のことを…誤解していた。」
レイナ「!?…つーか、変なところで間を入れたからびっくりしたじゃん!」
ミーシャ「?」
レイナ「と、に、か、く!…ハミナから言われてたのよ、『敵を欺くにはまず仇から。』ってね。…だから、あんたには黙ってた。」
ルネサンス「『味方』からじゃ。」
スー「相変わらず、レイナ様の言い間違いが面白いですね。」
レイナ「…もう、みんな意地悪ね。それに、味方じゃない、ミーシャは仇よ。」
レイナは一息つき、そして、御幸を見て話しかけた。
レイナ「御幸、私もあなたを誤解していたわね。ごめんなさい。最初に会った時も、今回も…。ハミナが船内で力尽きてしまったから、あなたが抱えてくれていたのよね?」
御幸「…あ、えぇ、そうです。ヤオイさんは一刻も早く皆さんの所に到着したいと思って、動かしていたみたいですが…。」
レイナ「…うん、そうだと思った。スーたちがいたのに止めないはずはないもの。…きっとヤオイも同時に倒れたのね。」
御幸「はい、ふらついていたので。倒れたら、ものすごいスピードになっちゃって。」
少しだけ思い出し、風でなびいた髪を抑えつつ、御幸は続けた。
御幸「…ハミナさんを抱えていて、少しだけ想いが伝わってきたんです。レイナさんやミーシャさんたちのことを強く信頼していたこと。私たちのことまで気にしてくれていたこと。それにヤオイさんのことを大切に思っていたことも…。」
レイナ「!?…それで、最後にヤオイのことをハミナのそばに連れてきてくれたのね?」
御幸「はい。何かそうしてあげたくて。きっとお二人ともお互いの事を大切に思っていたんだと思います。」
レイナ「…大切に、か。」
そこにいた全員が再び亡くなった二人の想いを共有した。
御幸「あと、レイナさん、私たちに謝らないで下さい。もし、私が同じ立場でも、やっぱり疑うと思います。それに、ガーラって人が私のような力を持っていて、星を滅ぼしたってハミナさんが言ってました。
…私だってそんな能力者なら許さないと思います。似た能力を持ってたら、敵だって思うかもしれないし…。」
レイナ「…御幸。」
レイナと御幸の会話を聞き、ギャレットは満足そうに笑った。
ギャレット「フハハ!」
スピア「どうしたんだい、ギャレット?」
ギャレット「いや、…御幸とやら。そなたがまだ『光生』能力者だとは認められん。だが、…それを除いたとしても、そなたを死なせる訳にはいかんな。」
ルネサンス「ほう、ギャレットもそう思ったか。…確かに我もこの娘たちからは『希望』しか見えてこぬ。だが、一方であまりにも愚かな『人間』でもある。果たして、この星の『意思』を曲げてまで守る価値があるのか?」
ギャレット「分からん。だが、その答えはこれから出るだろう。」
スピア「まぁ、どっちでもいいんじゃない?ミーシャたちも、御幸たちも敵意はないし、しばらく様子を見てもいいと思うよ。
…た・だ・し!」
周りの者は一斉にスピアを見た。
スピア「敵だと分かったら、すぐに倒してあげるからね。」
スピアはニヤニヤしていた。
幼い祐樹、彩菜はおそるおそるスピアを見て、御幸に話しかけた。
彩菜「お姉ちゃん、彩菜は何をお手伝いすればいい?」
祐樹「僕たちにも宇宙人パワーがあるからね!ドーン!」
御幸「そうだね。」
彩菜と祐樹は御幸から少しだけ離れて、いつもの『作戦』を話し始めた。だが、その時!
ルネサンス「お前たち、そろそろ気を引き締めよ。敵が上に来たぞ。」
御幸「!」
スー「…それはいいけど、四つしかいないみたい。」
メイ「上?何にも見えない〜けど?」
ユンピ「空の上…。」
レイナ「大気圏にいるのよ。」
ギャレット「!?いかん!?もう一つは裏側におるぞ!」
ルネサンス「くっ、その二人が…!!」
ルネサンスが彩菜、祐樹の前に現れた瞬間、目も眩む閃光が周りを包んだ。
御幸たちの反対側、つまり地球の裏側から一隻の戦艦が『消滅砲』を撃ち、その後避けた者たちを狙って、更に四隻が一斉砲撃してきたのだ…。
数十秒後、ミーシャが声をかけ始めた。
ミーシャ「ふぅ、大丈夫か、お前たち!」
ギャレット「くっ!羽を一枚撃たれたか。だが、これしき!…むっ、そなた、角が!」
ミーシャ「フッ、これくらい無くなって軽くなったくらいだぜ!おい、レイナ!」
レイナ「…はっ!あんた、何してんの!?」
ミーシャの背中にあった右角が途中からなくなっていた。だが、そんな角のガードがあったからこそ、レイナは救われていた。そして、ギャレットは四枚ある羽の右下が撃ち抜かれていた。
スー「こっちも大丈夫。ユンピは軟体だから、撃たれても平気。普通に『元に戻る』し。
私は『当たらない場所』を見つけてたから、よけてない。」
ユンピ「…少し、心配して。無くなったら痛いし。」
ミーシャ「…うちのエースたちは頼もしいな。…スピア、お前も大した事はないんだろ?」
スピア「流石に今の攻撃は吸収できなかったね。僕もまだまだみたいだ。ねぇ、ルネちゃん?…ルネちゃん?」
しかし、次の瞬間、全員が凍りついた。
御幸はメイと一緒で無傷だったのだが、そのそばにいたルネサンスは体が真っ二つに裂けていて、微動だにしなかった。
そして、御幸はあまりの光景に声が出なかった。
そこには左足から胸のあたりまでえぐられたように貫かれ、大量の血まみれになった彩菜と、右腕がなくなりつつも微かに動いていた祐樹が地面に倒れていた。
メイ「あやな〜!」
メイは彩菜の元に駆け寄った。体は彩菜の血に触れ、白い体毛が真っ赤に染まったが、構わず吠え立てた。
メイ「あやな〜!あやな〜!!」
彩菜はかろうじて生きていたが、もはや時間の問題であった。
そして、再び上空に光の軍勢が現れていた。
ミーシャ「…直接のダメージまである上に、まさか!?」
スピア「計算違いだね、あの攻撃、続くのかい?」
敵司令「ザンネンダガ、キサマラハココデオワリダ。ショウメツホウハ『レンシャ』デキルヨウニナッタノダ。」
ギャレット「ガーラの『永久』能力か。」
レイナ「!?御幸!」
レイナは立ち尽くしていた御幸のもとに駆け寄った。しかし、惨事はさらに続いた。
敵司令「ヨワキモノハキエルノダ。」
彩菜のそばを離れなかったメイに対し、二十発以上の光線が撃たれた。
メイは御幸の目の前で、体をバラバラにされて、頭だけ転がった。
この瞬間、御幸は今まで押し殺してきた感情が湧き上がってきた。そして…。
御幸「もうやめて〜!」
そう言うと御幸の身体の周りに光が集まってきた。




