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記憶喪失の星  作者: 神風
第3章 関西崩壊
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絶望の中で今…

老いた宇宙人たちに従う形となり、戦闘機らしきものに乗った御幸たちは、その技術力の高さに驚いた。

祐樹「え、僕たち浮いてるの?」

彩菜「今、そこから入ったのに?」

メイ「不思議な〜のね。」

御幸「…うん、何でだろう?」


驚いたのも無理はなかった。

扉が開き、戦闘機の中に入ったはずなのに、機内ではなく再び外にいたからである。しかも、自分たちの足は地面から少し離れて見えていた。

もう少し具体的に言うならば、足と地面の間に隙間がある=浮いているようであった。

御幸「これは…?」

ハミナ「これ、ヤオイや。『わしら』の見え方じゃと、『帝様』たちが驚かれる。中を見えるようにするのじゃ。」

ヤオイ「はい、そのように。」


その直後、一瞬外の景色が歪み、見えなくなった。そして、銀とグレーを混ぜたような色合いの丸みを帯びた壁が御幸たちの周りに現れた。中の広さは10メートルくらいであろうか。


ヤオイ「私たちは見つからないようにするだけでいいから、普段は透明にしております。」

そんな説明を受けたものの、御幸は疑問に思った。

御幸『(え?見つからないようにするのなら、透明にしたらいけないんじゃ?)』

ハミナ「これで良いかの?」

祐樹「うん、中は広いね。これってどこで動かすの?」

ヤオイ「この『ビーズリ』には、あなた方の言う『操縦席』というものは存在しないのですよ。」

御幸「え?それで動かせるんですか?」

ヤオイ「えぇ、『飛ぶ』と思えば飛ぶのです。」

御幸「え?」


あまりに簡単に答えられてしまったものの、御幸にはその意味が分からなかった。当然の事ではあったが、宇宙人の話す内容に理解が追いつかなかったからだ。だが、老いた宇宙人は続けた。


ハミナ「…さて、『帝様』ではなく、普通の命あるものとして、話をすればよろしいかの、御幸殿。」

ハミナはゆっくり確認するかのように御幸に尋ねた。相手は祐樹の体の中にいるので、御幸は祐樹の胸あたりを見て答えた。

御幸「あ、はい。お願いします。」

ハミナ「うむ。先程も申したが、我々は急ぎ『ある方』にお会いせねばならぬ。この『ビーズリ』を…お主らで言う『西』に向けて飛ばしながら話をするが、良いかの?」

御幸「分かりました。…えっと。」

ヤオイ「…どうぞ、後ろにいすがありますよ。」


…やはり明らかに心を読まれていた。御幸は疲れている幼い二人を休ませるために座らせてあげたいと思っていたのだが、彼らはすぐに対応してきた。

そもそも機内に入ったばかりだから、自分たちの後ろにいすがあることなど考えられなかった。…おそらく、これも何かの能力なのだろう。

だが、幼い二人は珍しさもあってか、すぐにいすに座って、その感覚を楽しんでいた。

祐樹「このいす、ふわふわだ。」

彩菜「うん!やわらかくて、気持ちいい。」


すると、二人の胸あたりから電球ほどの光が飛び出てきて、御幸の前で静止した。

こうして見るとずいぶん小さな光で、襲撃を受けた時に降ってきた光とは明らかに違うようにも見えた。


ハミナ「ヤオイや。二人は問題ないかのう?」

ヤオイ「えぇ、…眠りましたよ。」

御幸「え!?」

見ると、彩菜も御幸もいすに座ったまま眠っていた。まだいすに座って5秒も経っていない。これも人間の技術では考えられないことであった。


御幸「あ、あの、二人とも無事なんですか?」

ハミナ「もちろんじゃ。じゃが、手荒なことをして、申し訳なかったのう。

本当なら家でゆっくり休ませたかったじゃろうに。

…実はいすに細工をしておってなぁ、どんな屈強な者が触れても寝てしまう『力』をまぶしておったのじゃ。」

ハミナはこうべを垂れるかのように謝罪の意を示していた。だが、分かってはいながらもメイは穏やかではいられなかった。

メイ「なんで?どういうこ〜と?」

ヤオイ「今からハミナ様が話す内容はすべて真実です。ただ、それを証明するための時間がありません。また、あなた方が理解すること、受け入れることにもまた、時間がかかるかと思われます。…特にその二人にとっては残酷な話になるかと…。」


二人にとって残酷であれば、それは御幸を含めた人類にとっても同じこと。それだけは御幸にも分かった。

御幸「…聞かない方がいいって事、ですよね?」

ハミナ「…うむ、遅かれ早かれ分かることになる。じゃが、ワシらが論じても余計に混乱を招くだけじゃからな。」

そう言ったハミナはやや間を置いて、静かに切り出した。



ハミナ「御幸殿、正直に申すが、現在この星にいるお主と同じ種族は、そこの眠っている幼な子の二人だけじゃ。」

メイ「え?そ、そ〜んな…。」

メイの反応はもっともだった。これだけ地球で栄華を誇っていた人類が、現時点でわずか三人のみ。到底信じられるものではない。

だが、御幸は違っていた。

御幸「…そう…ですか。…やっぱり…。」

ヤオイ「!?…意外ですね。分かっていたのですか?」

ヤオイは初めて驚いた口調となったが、御幸はほとんど顔色を変えなかった。

御幸「…何となく、ですが。世界中に同じ事が起こっていたらしいし、私たちと同じように何人かは生き残ってるんじゃないかと思っていたんだけど…。そんなに甘くは…ないですよね。」

そう言って、御幸は少し肩を落とした。ハミナとヤオイもその無念さを思いやっていたが、そう時間もかけられない。


ハミナ「…話を続けて良いかの?」

御幸「あ、はい。」

ハミナ「実はのう、わしらの住む星も、この星と同じように滅ぼされたのじゃ。」

御幸「え?」

メイ「ここだけじゃ〜ない〜の?」

御幸もメイも聞き返してしまった。このような事態が宇宙で繰り広げられているなど、誰が予想しただろうか。


ヤオイ「えぇ、私たちの住む『四連惑星』は様々な進化を遂げた命が集まり、それはそれは麗しい土地でした。それに、先代の『四皇帝』の慈悲深い、平和な導きで、宇宙の星々の中でも有数の平和文明だったのです。」

ハミナ「…しかしのう、ある日『ガーラ』と言うならず者が『銀河連合艦隊』などと名乗る軍勢を率いて、戦いを挑んできたのじゃ。…もちろん、先代の『四皇帝』とて争いはしとうなかったのだろう。直々に話をしに行かれたのじゃが…。」

メイ「直々に?皇帝〜が?」

重要な案件ではあるが、そのような危険な場に皇帝自らが赴くなど考えられない。メイの疑問も当然だった。だが、話は淡々と続いた。

ヤオイ「『皇帝一人は戦艦十隻にも勝る』と言われるほど、武芸の達人でした。そして、何より心温かい方々でした。私たちが諌めたものの、『必ず戻る』と…。」

ヤオイの光は打ち震えているようで、その口調も無念が滲み出ていた。そんなヤオイをハミナは気遣った。

ハミナ「ヤオイや。…もう良い。」

ヤオイ「しかし!」

穏やかな話しぶりからは想像できないほど、ヤオイは声を荒げた…。

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