飛来する生物に…
女性宇宙人が飛び去ったあと、幼い二人は座り込んでしまった。
メイ「助かった〜のね。」
彩菜「こわかったよー。」
祐樹「ぼくも〜。」
御幸「…うん、そうだね…。」
女性宇宙人やUFOの襲来の恐怖を口にする子どもたちをよそに、御幸の表情は険しさを増していた。
メイ「みゆ〜き?」
御幸「…あの人、泣いてた。」
彩菜「え?」
御幸にとっては木にぶつかった痛みよりも、女性宇宙人の言っていたことが気になった。そして…。
御幸「それより、メイ、どうして私たちはメイの声が分かるの?何か知ってる?」
メイ「ごめ〜ん。私にも分からな〜い。急に御幸たちの声が分かったんだ。」
鼻を舌で舐めながらしゃべるメイを見ながらかわいいと感じながら、御幸は聞き返した。
御幸「急に?」
メイ「思えば、あの宇宙人を助けたくらいから〜ね。」
三人と一匹は顔を見合わせた。が、祐樹が閃いた。
祐樹「分かった!宇宙人のパワーを手に入れたんだよ、きっと。」
御幸「宇宙人パワー?」
彩菜「えー!彩菜もにんにんも?」
祐樹「うん!」
御幸と彩菜は同時に首を傾げたが、メイは冷静だ。
メイ「…もしかした〜ら、何かのきっかけだったの〜かも。」
御幸「きっかけ、か。」
…その後、彩菜、祐樹、メイはいろいろな話をしていたが、御幸は一人考えていた。
昨夜の出来事、光の攻撃を防いだ自分の『力』、光の集団を消した女性宇宙人の言葉と涙…。そして、どこか不自然な街の変化。
今考えてみれば、すでに電柱がなくなっていたのになぜ自宅の電気は使えたのか?
そもそも昨日の人類を消滅させた光の攻撃で、自分たちが今日消えなかったのは何故か?
何か悪い夢でも見ているのか?
彩菜「お姉ちゃん?」
御幸「…。」
彩菜「…お姉ちゃん!」
御幸「!?…ご、ごめん。何?」
彩菜「…背中痛いの?」
御幸「…あ、うん。ごめんね。ちょっと考え事してた。…と、…とりあえず彩菜ちゃんのお父さんを探しに行こう。」
二人と一匹に提案した御幸だったが、その胸の内は晴れずにいた…。
?「…最低の文明の割にはきれいなところね。私たちの故郷ほどではないけれど。」
御幸たちとの接触をしたあと、女性宇宙人は日本の上空を飛んでいた。
?「とにかくミーシャを早く見つけて、準備しなきゃ。…それにしても、気配の反応が多い。邪悪じゃないし、誰か来たのかしら。」
京都・清水寺。
清水の舞台から…と言われる崖が、以前よりも深くなったように見えた。いや、間違いなくえぐれていた。
あまりに早い速度で崖に衝突したことにより、かえって周囲を激しく損傷することなくえぐった、と言うべきなのだろう。
その崖の様子を異形の姿をした二つの生命体が覗いていた。
一つは理科の実験で作られたスライムのような半固体で、一貫性のない動きをしている者。
もう一つは三角や四角の図形が宙に浮いていて、本体の外側をくるくる回っている者。
どちらも地球上の生物とはかけ離れた姿ではあったが、図形の体をした生命体が崖をえぐった者とコミュニケーションを始めた。
(なお、今後も宇宙人の言語として内容を記載しているが、決して正確な翻訳ではないことを陳謝したい。当然言語が日本語でされている訳でもない。)
図形「ミーシャ?死んでない?」
スラ「ミーシャ、『僕たち』のリーダー。簡単に死なない。」
図形「もう、『ユンピ』がゆっくり食べてたから、ミーシャを見失なったんじゃん。」
ユンピ「そんな〜、『スー』が『ラント』を壊した、いけない。」
スー「私のせいなの!?」
ザンッ。
たわいのない話をしていた矢先に、凄まじい音とともに縦に崖が割れた。いや、明らかに『斬られた』。
清水寺は一瞬にして崩壊し、瓦礫の山となった中から、巨大な剣が現れ、みるみるうちに黒い渦を作り、一つの生命体となった。その姿はまさに甲冑をつけた鬼そのものだった。
ユンピ「…うわっ、大きい。怒ってる。」
スー「ミーシャ、何かあったの?」
人間のような表情を持ち合わせていない2体に比べて、こちらは分かりやすい。口調も表情も荒れに荒れていた。
ミーシャ「くそっ、訳が分からねぇ。何があったか、こっちが知りたいぜ。
お前たち、…レイナと戦うことになるかもしれないぞ。」
スー「え?レイナ様と?」
ユンピ「レイナ様、何した?」
二人の口調は疑問と困惑が入り混じっていたが、ミーシャは説明するのも煩わしいようだ。
ミーシャ「あいつもこっちに向かっているみたいだが、まずはお前たちが無事で良かったぜ。…で、どうなんだ。あいつと戦えるのか?」
スー「待って。レイナ様と戦う訳を教えてよ。久しぶりに会ったばかりなのに、理由が分からない。」
ミーシャ「『あいつら』と何か計画していた。」
ユンピ「え、それ…!?」
スー「どんな計画なの?」
ミーシャ「知るか!だが、仮にどんな計画であろうと、あいつらと手を組むことがどれだけ恐ろしいことかは、あいつが一番分かってるはずだ。」
スー「だ…だったら、レイナ様にも何か考えがあるはずだよ。」
ミーシャ「それがあいつらの計画かもしれないんだぞ?」
ユンピ「え?もしかして、僕たちの、『共喰い』を狙って?」
ミーシャ「あり得るな。」
スー「…そんな。信じられない。レイナ様が裏切るなんて…。」
この宇宙人たちの会話が何を意味するのか。その答えはすぐ間近に迫ってきていた。
東京・品川。
御幸たちはより細心の注意を払いながら、彩菜の父を探しに、彩菜の自宅、避難所を見て回った。しかし、どこを探しても生存者はいなかった。彩菜にも疲れが見え始め、弱気になり始めていた。
彩菜「パパ、いない…。」
御幸「…彩菜ちゃん。」
祐樹「大丈夫、どこかにいるよ。」
メイ「そうだ〜よ。元気出し〜て!」
御幸「うん。…!?え、ちょっと待って!?」
御幸は、住宅街に、地球上に存在しないであろうものが着陸していることに気がついた。
明るい光だが、よく見ると地面から1メートルほど浮いていた。
そう、どう見ても円盤、UFOである。
御幸「あれって、UFOだよね。」
彩菜「怖いよ。また攻撃してくるの?」
ところが、次の瞬間。
ドゴーン!!
UFOはいきなり爆発し、周囲の住宅もろとも木っ端微塵になった。そして、その中から黄色と緑の光がまっすぐ御幸たちのもとに向かってきたのだった。
祐樹「うわっ。」
彩菜「いやだ!」
避ける間もなく、祐樹に緑、彩菜に黄色の光がぶつかり、何と消えてしまったのだ。