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記憶喪失の星  作者: 神風
第2章 始まり
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静かな街は…

少しずつ日が傾いてきた。三人はやや緊張した面持ちで店の中、外を見て回った。

彩菜「だれもいないね~。」

祐樹「だれもいないよ。」

御幸「そうだね。…二人ともこっちにおいで。」

御幸は周りを見ながら、ちょこちょこ走る二人の手を引いて歩いた。



誰かいないのか?

また光体が現れやしないか?

これからどうするべきなのか?

…一生懸命考えたものの、御幸の頭に名案は浮かばなかった。いや、そもそも最善策が何かなど、分かるはずもなかった。

空から降りてきた光体から身を守るために、一番安全だと思えた屋内にいたにもかかわらず、この有様である。考える前に絶望するのも致し方なかった。


だが、それでも、御幸は諦めていなかった。

御幸「(絶対この子たちは守ってあげなきゃ。父さんたちと約束したんだから…。)あ、そうだ。二人ともお腹空いてない?」

彩菜「え、…うん。」

御幸「じゃあ、私のうちでご飯食べる?ちょっとしたものなら作れるから。」

御幸は善意のつもりで聞いたのだが、ここは祐樹が拒否してきた。

祐樹「ダメ!…ぼく、先生から教えてもらったよ。知らないおじさんについて行っちゃダメだって。」

御幸「えっ!?…と、それは…。」


御幸は咄嗟に言葉を返せなかった。確かに、普通にそんな声かけをすれば、周りからは誘拐に捉えられてしまうだろう。この子たちを納得させるためには、しっかり考えなければ…。

しかし、今度は彩菜が自信たっぷりの表情で答えた。

彩菜「だいじょうぶだよ、にんにん。」

祐樹「え、なんで?」

祐樹は彩菜の言葉に不満そうに聞き返したが、その理由はあまりに単純だった。

彩菜「知らない〈おじさん〉について行っちゃダメって言われたんでしょ?じゃあ、〈おねえちゃん〉ならだいじょうぶだよ。」

御幸「(…え~、それって…)」

さすがに無理がない?…と言おうとしたが、止めて正解だった。

祐樹「あ、そっか!お姉ちゃんならだいじょうぶ、か!」

御幸「(…いいんだ、それで。)」

彩菜「それに…。お姉ちゃん優しそうだから。」

御幸「え!あ、ありがとう。…じゃ、行こうね。」

急に褒められて悪くない気持ちの御幸であった。



こうして御幸の家に向かい始めた三人だったが、…それにしても街を包む空気は異常だった。野良猫が歩き、鳥は飛んでいるのに、人がいない。車が走っていない。

改めて伝えておくが、ここは地方の田舎ではなく、東京・品川である。マンションや建物が一面を覆っている一大都市。それなのに、御幸たち三人だけが様子を伺いながら歩いているのだ。これ以上の不気味さはない。



しかし、何はともあれ二人をショッピングモールから自宅まで連れてきた御幸はほっとしていた。また光が現れたら、今度こそダメかもしれない。

だが、心配なことはもう一つあった。

御幸「(無事だといいんだけど、大丈夫かな。)」

そう思いながら自宅の扉の鍵を差し込んでみると…カサカサッと音がした。

彩菜「!!」

祐樹「お姉ちゃん、…何かいるみたい。」

びっくりする二人だったが、御幸は二人の肩に手を当ててやさしく答えた。

御幸「うん、大丈夫、無事だったみたい。」


そう言って玄関を開けてみると…、

【ワンワン!】

祐樹「あ、犬だ!」

彩菜「かわいい~。彩菜知ってるよ。これ、ダックスフンドでしょ?」

御幸「えーと、…チワワだよ。メイって言うの。(ダックスフンド、人気なのかな。)」

つい変なことを考えつつ、御幸は扉を閉めた。


御幸は自宅でチワワを何年も前から飼っていた。ただ、今回のことで家からいなくなってしまったのではないか、そして、初めて出会う見知らぬ子どもたちに驚きはしないか、不安に思っていたのだ。

しかし、蓋を開けてみれば、そんな心配も杞憂だった。子どもたちもメイもすぐに楽しく触れあっていた。

まったく幼い子たちはたくましい。さっきまで泣きそうだったのに、今は犬とはしゃいでいる。そんな二人を見ながら、御幸は感心しつつも、急に感情がこみ上がってきたのを感じたが、何とか我慢した。考えないようにした。

御幸「じゃあ、今からご飯作るね!」



…ところが、御幸はその時、ある大切な事に気がついた。

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