プロローグ3
敵を倒して帰ってきたのはいいが、じいいは家が破壊されたことを知ってるんだろうか。恐る恐るじじいに言った。
「じじいすまん。家壊されちまったんだ」
「はっはっは、冗談を言うならもっとまともな冗談にしろ」
「い、いやホントだって・・・」
少し歩くと自分たちの畑が見えてきた。畑のすぐ近くに家があるんだが、そこには消し炭になった家があった。
「・・・」
「気を落とすな、作り直せばいいだろ」
「そ、そうですセイン様。私も手伝います」
「気を使ってくれてありがと二人共、ちょっと行ってくるわい」
「お、おい!どこにだよ!」
「あのクソガキを神界じゃなくて地獄に送り返してやる」
「一旦落ち着け!」
俺は容赦なくじじいの顔にきついパンチを一発くらわせた。
「はっ!わしは一体何を・・・」
「お前は二重人格か」
「セイン様、そろそろお話をされた方が」
「そうだな、あれは敵の軍隊と戦っておった時。わしは先陣をきって敵と戦っておったが敵に不意をつかれ数回体を斬り込まれてしまった。結果的に勝利はしたもののわしは重症で起き上がれない状態でいた。そこに現れたのがお前の母親、治癒神アスクレピオス。わしは勝手にピーちゃんと呼んでおった」
(ピーちゃんはどうでもいい・・・)
「ピーちゃんはすぐにわしの傷を癒してくれてな、礼を言おうとしたがすぐに立ち去ってしまった。すぐに後を追いかけてピーちゃんが入っていった森にわしもはいったんじゃ。」
(じじい、英雄神なのにストーカー気質なんだな・・・)
「結局見つからず森を彷徨っていたところ偶然一軒の小さい家を見つけたんで、ピーちゃんがここいるか確かめに行った。そしたら中から悲鳴が聞こえたもんでドアぶち破ってたら傷だらけのピーちゃんと泣き喚く赤子、ピーちゃんの夫であろう男が血を流して倒れておった。二人共、状態が最悪じゃった・・・」
「俺の両親を殺した奴がそこにいたのか?」
「そうとも、まさにその最中だった。すぐさまわしはそいつを追い払ったが夫はもう意識はなかった。ピーちゃんは意識があったみたいだったから声をかけてんじゃ」
・・・・・・・・・・・
「ピーちゃん!大丈夫か、しっかりしろ!」
ピーちゃんの身体からは大量の血が出ていた。
「ヘラクレス、あなた何故ここに・・・」
「その話は後でいいから早く傷を自分を治癒の力で」
「自分には使うことができないのよ・・・ゲホッゲホッ!」
「くっそ・・・なんで・・・」
「優しいのねヘラクレス・・・、あなたなら・・・任せても大丈夫かしら・・・」
「ああ、なんでも頼んでくれ!やれることならなんでもする!」
「なら、この子・・・ある神様に頼んでこの状態のまま、時がくるまで保管していてほしいの・・・」
「保管って・・・」
「この子にはこの時代を生きて欲しくない・・・もっと平和な時代がきたら、その時にこの子の好きに生きて欲しいの・・・ゲホッ!」
「お、おい!しっかりしろ!」
「この子の名前はアイジス・クラウン・・・アイジスを、頼んだわ・・・」
「おい、おい!!ピーちゃん!まだだ!諦めるな!」
「・・・・」
「ピーちゃん・・・」
「アー!アー!」
「坊やがアイジスだね?・・・俺が、君を育ててやる。ピーちゃんと旦那さんのために、俺が・・・」
・・・・・・・・・・・
「母さん、父さん・・・」
頬に涙が流れ落ちた。あれ、俺泣いてるのか・・・
「今の時代はものすごく平和だからのう、まぁ、さっきよくわからん奴がでてきただがな。アイジスを今まで保管していた神様がアイリスのおじいさんなんじゃぞ」
「そうだったのですか・・・」
アイリスは自分のじいさんがなんだかあまり知らなかったようだった。
「今まで黙っておってすまなかった」
「いや、いいんだ。俺に気を使って言わなかったんだろ?」
「・・・これからもわしが責任もってお前を」
「その必要はない、俺は決めたんだ。」
じじいの話を聞いていて心の中で何かが俺に囁いていた。
殺せ
心の中に潜んでいる何かが同じ言葉を何度も何度も繰り返す。俺の父さんや母さんを殺した奴、それに関わったやつ。全員
「殺す・・・」
「・・ねん・・・少年!」
「っ!わ、わりぃ取り乱しちまった・・・」
「悲しい気持ちはわかるが少し冷静になったらどうだ」
俺の気持ちが分かられてたまるか、だが今はこの気持ちを伏せておこう。アイリスは俺を心配してくれているんだから。
「おう、悪い・・・」
「アイジス、お前まさか両親の敵討ちに行く気か」
「この話しされるまでこんな感情なかった。けど、今は違う。俺の母さんや父さんを殺したやつに復讐したいって気持ちでいっぱいだ」
「アイジス・・・」
「だがそれでは少年が犯罪者になるではないか」
「そんなの関係ない」
そうだ、関係ない。俺が犯罪者になろうと何になろうと今のこの気持ちは抑えきれない。
「わかった。お前の母さんには自由に生きて欲しいと言われておるからの・・・」
じじいは少し悲しい表情でそういった。
「ひとまず、お家直しましょうか」
「そうだな・・・それにしても酷く成り果てたもんだ。この村」
残念がりながらなんとなく地面に触れた瞬間。あたり一面が光り始めた。眩しさにあまりの眩しさに目を閉じたが、光が消えて目を開けた瞬間。
「な、なんだこれ・・・」
「しょ、少年!一体どうやったんだ!」
さっきまで焼き焦げた家や畑しかなかったが、あの光に包まれた瞬間に村は元通りになっていた。
(ほほぉ、これはが治癒神の子供の力か。治せるのは二兎だけだと思っておったが、まさか村を直すとは大したもんだ)
「なんだかしらんがこれで寝る場所が確保できたな」
「そうじゃな、今日は疲れたわい」
「私も疲れました」
俺たちが直った家に入ろうとした瞬間。また、畑に黒い光が落ちた。
「もう勘弁してくれよ・・・」
「少年、私はもう動かないぞ」
「いや動けよ!死ぬぞお前!」
黒い光はさっきのやつのようだ。
「君たち、さっきはよくもやってくれましたね」
「なんでまたきたんだよ、もう疲れたから明日にしてくれないか・・・」
「黙れ!」
やつは家を壊した時のようなポーズをとった。
「やべぇ、また家が壊される・・・」
「くらえ!ダークボール!!」
「ネーミングセンスなさすぎだろ!!」
「少年!セイン様!右に避けてください!」
『うああああああ』
ドン!という音とともに家はまた、破壊されてしまった。
「きさまぁ!」
じじいが奴に殴りかかった。
「バカめ、私はさっきまでの私ではない!覚醒!」
「な、なんじゃ?!魔力が高まっているじゃと・・・」
「そして近代の神は覚醒する」
さっきまでと全く違う動きでじじいを圧倒する。
「オラオラ!どうしましたか!」
「グホッ!ガハッ!」
一方的にやられている、何とかしないとじじいが死んじまう。だが何もできない・・・。見てることしかできないのだ。
「・・・もう終わりですか。トドメですね」
敵は手から黒い剣をだしじじいに突き刺そうとしている。ダメだ!やめろ!
「じじいー!」
「まだ、終わらんよ・・・」
グッと剣を掴み、へし曲げ敵に強烈なパンチを打ち込んだ。
「ファイナルストライク!」
じじいの拳から炎が出てものすごい力で敵の顔にブチ込む。
「・・・その程度か」
「なんじゃと!?」
「それじゃ、さようなら。おじいさん」
敵はじじいの心臓を貫いた。
「っ!!ガハッ!!」
また・・・、また家族が消えていく。
「次は君たちの番だ」
「セイン様!」
「じじい!」
「死にたまえ」
敵に斬られかけられた瞬間
「ほんとに・・・世話のかかる家族じゃ」
そこに立っていたのはじじいだった。ブシュブシュと血しぶきの雨は止まず、じじいは斬られ続けている。
「まったく・・・歳は取りたくないものじゃ・・・」
そう言ったとたんにじじいはバタンと倒れた。じじいが俺に何か言おうとしている。
「アイジス、お前には母さんの力が宿ってる・・・治癒の力だ。さっき村を直したのもお前の力じゃ」
「俺にそんな力が・・・治癒能力なら今じじいを助け」
「助けなどいらん!」
何故?なんでなんだじじい。教えてくれ。なんで治療するのを拒む?
「そんな、なんで・・・」
「わしはもうそんなに長くない・・・さよならじゃ・・・」
「セイン様!しっかり!」
「アイリス、このバカ野郎を面倒見てやっておくれ・・・。アイジス・・・お前と過ごした時間は楽しかったよ・・・ありがとう」
俺は涙が止まらなくなった、なんせ最後の家族なんだから。
「バカ野郎!まだ死ぬんじゃねぇ!」
「アイジス・・・お前の中に潜んでいる闇は・・・きを・・・つけ・・ろ・・・」
じじいの手首に脈があるか確かめてみるが、やはりもうなくなっていた。
「少年・・・」
「家族ごっこはもう終わりですか?さあ早く続きを」
「だまれ!」
「・・・この私に命令するなぁ!覚醒!」
「お前も神で、俺も神だ。なら俺も同じ技が使えないわけないよな?」
「はい?君は何を言って」
「覚醒」
俺の体は神々しく光り始めた。感じる。力が強まっていくのが。
「そして俺は神になる」
「フッ!まさか本当に使えるなんて予想外です!ですが使えたところで状況は変わりませんよっ!」
敵の魔力の弾が次々飛んでくる。
「おそい・・・」
魔力の弾を華麗にかわし、敵の懐に入り込んだ。
(じじい・・・お前の力。借りるぜ)
「ファイナルストライク!」
ガッツリ顔にめり込ませた。骨が砕けるほど、いや、粉々になるほど。
「グフォ!!」
(さっきの奴とはまるで威力が違う!?これがあの神様の・・・)
「カハッ!」
敵はその場で倒れ込んで灰と化した。
「セイン様でも敵わなかった奴を一撃で!?少年、君は一体何者なんだ・・・」
「俺?俺はアイジス・クラウン。人間と神様のハーフだ」
満天の星を見ながら俺は思った。もう誰も失わないと・・・
「セイン、俺も楽しかった、ありがとう」
涙はいつの間にか頬から消えていた。
今回もプロローグということでしたが、何故か会話が多くなってしまっていたのだ!
次回もまたプロローグでやんす(´∀`)