『Door wars』
むかし、あるところに かんしゃくもち の王さまがおりました。
王さまは にんじんがきらいでした。
王さまは むしがだいきらいでした。
でも、もっときらいなものがありました。
それは『どあ』とよばれるものでした。
『どあ』はいたるところにありました。
王さまの おしろ にも『どあ』はたくさんありましたし、みんしゅうのいえにも『どあ』はありました。
それが 王さまには がまんなりませんでした。
王さまは『どあ』がきらいです。
『どあ』は王さまのてをはさんだり、王さまがめいれいしても かってにあいてくれません。
そんな いうことをきかない『どあ』が王さまはだいきらいでした。
だから、王さまはいいました。
「『どあ』なんぞ、もうこりごりだ! 」
「『どあ』をくにじゅうからなくしてやる! 」
そのひをさかいに、くにじゅうから『どあ』ががきえました。
ひとびとは こまりはてました。
『どあ』がないと きたかぜ がはいってきてこごえました。
むし や とり がはいってきて こまることもありました。
ひとびとは王さまに『どあ』をもどしてもらうよう たのみましたが、王さまは しらんぷり。
ひとり、『どあ』のなくなった くに をながめて、まんぞくそうにしていました。
ひとびとは なんども王さまに『どあ』をつくるようたのみました。
ですが、王さまはやはり きくみみをもちません。
とうとう がまんならなくなったひとびとは、うごきだしました。
『どあ』のなくなったおしろは どこからでもはいることができました。
ですから、ひとびとは王さまのおしろにおしよせ、ほうせきをとっていってしまいました。
このほうせきをうって『どあ』をつくるためです。
王さまは、ほうせきひとつなくなったおしろをみて、かんかんにおこりました。
ゆいいつ王さまにのこった ほうせき は王さまがつけている王かんだけでした。
王さまはたくさんのものがきらいでしたが、ほうせきはすきでした。
きらきらと かがやくほうせきをみていると、たのしくなってくるからです。
だから、王さまはさいごにのこった ほうせきの王かん をうばわれないようにするため、おしろをすべて かべ でおおいました。
王さまは、たったひとりでおしろのなかにいました。
しようにんも、だれもかれもしんじられなくなっていたのです。
ですが、うまれてからずっと なにかもほかのひとにしてもらっていた王さまは しょくじやきがえひとつ、まんぞくにできませんでした。
王さまは こまりはててしまいました。
だれもいないおしろで 王さまのいうことをきくものはいませんでした。
王さまは きづきました。
『どあ』は王さまのいうことをききませんが、王さまをずっとまもっていました。
『どあ』は王さまとひとびとをつなげるたいせつなものでした。
むくちでがんこな『どあ』は たしかに王さまにひつようなものだったのです。
王さまはこうかいしました。
とうとう王さまはそのひ、いいました。
「もうひとりはこりごりだ!」
王さまはおしろのかべをじぶんでこわしてしまいました。
かべのそとにはひとびとが みんな おこったかおでたっていました。
王さまはひとびとにいいました。
「『どあ』はもどそう!」
いままで すまなかった!
王さまはひとびとをまえに おおごえであやまりました。
そのひ、くにじゅうに『どあ』がもどりました。
ひとびとは たいへん よろこびました。
王さまが 『どあ』がふたたびできて、げんきになったまちをあるいていました。
王さまが ちいさな『だんさ』をのぼろうとしたとき、王さまは『だんさ』につまずいてしまいました。
そのとき、王さまは『だんさ』がだいきらいになりました。
だから、王さまはいいました。
「『だんさ』をくにじゅうからなくしてやる!」
やはり、王さまは王さまでした。