第4話
説明回です。
うーん、話の流れってムズカしいです。
もしかしたら、手直しするかもしれません。
「でもあの国に、諏訪さんと花月さん二人で向かうのですか?」
「いえ、花月はここで私のバックアップをしてもらいます。行くのは私と私の部下たちです」
「部下の方たち?」
「はい、この手の敵地に潜入しての人質救出作戦は何度も行ってますし、大丈夫です」
私を逃がしてくれた尾崎さんは、真央が召喚された王都の地下の牢獄に、他の二人の日本人の人たちとともに囚われているとのこと。聞けば国王は、再度召喚の儀式を行う為に、真央の代わりに尾崎と他二人の日本人を生贄に使おうとしているそうだ。
要が告げた調査結果を聞いた真央はある決断をする。
「お願いします、諏訪さん。おじ……尾崎さん救出に、私を一緒に連れていって下さい、お願いします!」
要と花月が驚くなか、真央は自分でも無茶な頼みと承知していたが、それでも助けに行くという要に同行させてくれるように、ベットの上で必死に頭を下げ頼んだ。
「ふむ?」
腕を組んでじっと真央を見つめていた要は、ふうと息を吐いた。
「神崎さん、もう一度お聞きします。体の調子はいかがですか? どこか痛いところや違和感などはありませんか?」
急な話題の転換に、要の意図が分からず困惑する真央。
「……。 いえ、どこも痛くありませんし、目が覚めた時も感じましたが、なんだか体が軽い感じがします」
「そうですか。 では花月、神崎さんにD型装備を」
「要、よろしいのですか?」
「ええ、D型を装備して私のそばにいれば問題ないでしょう」
真央は要と花月の会話を聞き、あっさり自分の希望が叶えられると気づき、驚きつつも笑顔でお礼を言う。
「いえ、尾崎さんたちを保護する時に神崎さんがいらっしゃれば、尾崎さんたちも我々をすぐに信用してくれるでしょう」
「はい、がんばります!」
「では花月、私は席をはずすので彼女の着替えを手伝ってあげて」
要は花月がうなずくのを見て、部屋を出ていく。その後花月が真央の分のD型装備を用意しに、部屋を出ていった。
「待っていてください、尾崎さん!」
要たちが出ていった扉をなんとなく眺めながら、真央は改めて尾崎たちの救出を誓う。
真央がそんなことを考えていると、数分して花月がローラーの付いた等身大のマネキンを押して戻ってきた。
「これがD型装備です」
花月はそう言って装備の説明を始める。
マネキンが着ていたのは黒の乗馬服の上着とズボンに、材質の違うミニスカートを合わせ、靴は黒のロングブーツだ。その上から黒のロングコートを纏っている。こちらも黒ずくめだ。生地はなんだかすごく上等そうだし、目立たないがところどころにオシャレな柄が入っている。
真央は買え揃えたら値段は高そうだが、それ以外に何の変哲もなさそうな服を見て、これが装備?と訝しく思う。
「通常街歩きには、これに手袋、鞄が付きます。そして作戦を遂行する時は頭部保護のヘルメットがプラスされます」
真央が何と言ってよいかわからずマネキンを眺めていると、花月がビニールに入った黒のインナーを持って話しかけてくる。
「それでは神崎さん、今着ている物を全て脱いで、まずはこのインナーを着てください」
「え?全部?下着もですか?」
「はい、全部です」
真央は全身タイツみたいなインナーに顔が引きつるが、花月は真顔で押し付けてくる。
「き、着替えますから、外に出ていてもらえませんか?」
インナーを着る覚悟を決めた真央の懇願するような声に、労わる気持ちが十分に伝わるような声で花月が答える。
「神崎さん、胸からお腹にかけての古い火傷痕ですが、先ほど検査させていただいた際に消させていただきました」
「えっ!?」
何を言われたのか分からないという顔で、花月を凝視する真央。
「ですから、私から要に報告し相談した結果、若い女性の体には火傷の痕は不要と判断し、誠に勝手ながら消させていただきました」
真央は驚き、急いで着ていた服をたくし上げると、そこにはシミ一つないつるんとした、十代の若々しい肌が視えた。
「っ!!」
驚愕した真央は、信じられないと何度もお腹に触れて確かめる。そして夢じゃないと分かると、真央はいつしか泣き出していた。
「ははっ。こ、子供のころに、か、火事で、隣の家の火の不始末で、出た火が、ウチに燃え移って、それが原因で大火傷、したんです。グスッグスッ、あ、ありがとう、ございますぅ」
真央は小学生のころに大火傷を負い、奇跡的に一命を取り留めたが、長期入院せざるを得なかった。そしてその体には、胸から下腹部にかけて大きな火傷痕が残ってしまった。火事の前までの真央は、活発で誰にでも物怖じせずに話しかけられる前向きさを持ち、クラスの人気者だった。しかし退院後の真央は、持前の活発さはすっかり影を潜め、それまではクラスの友達と外で遊ぶことが多かったが、いつしか家で一人で本などを読んで過ごす時間が多くなった。そして召喚された日も、一人教室に残って本を読んでいなければ、もしかしたらこの世界に来ることはなかったかもしれない。
ただ、この異世界に召喚され、女性として貞操の危機に晒されることが多かったが、この火傷の痕を見るとどいつもこいつも皆抱く気が失せると言い、危機を脱することができたのは皮肉なものだと真央は思う。
数十分後、大泣きしたことに恥ずかしさを覚えながら着替えを終えた真央の姿に、腕組みして満足そうにうなずく花月。
「そ、それにしても、これがD型装備なんですか?」
「不審にお思いになるのも当然です。神崎さんの疑問に、今からお答えしたいと思います」
怪訝な顔の真央に、さも当然という顔で手に真央が着たものと同じインナーを持って花月が答える。
「まずこのインナーですが、機能は主に着心地に重点を置かれ、着用者がかく汗や皮脂などは速やかに吸収され不快感を抱かせませんし、通気性もバッチリです。そして汗やホコリやその他の汚れは自動でクリーニングされますので、一年中着たままでも全く問題ありません。それと気になる排泄時には、このようにしていただけますと脱がなくても邪魔にならずに着たまま排泄できます。それと装着者の状況に合わせて、今が平常時なのか緊張状態なのか、それともリラックスしている時なのかを自動で感知し、サイズも着心地も変化します。ちなみに補正下着機能も勿論あり、外見もキレイに見せてくれます」
「えっ?えっ?」
「次にこちらのマネキンが着ている服についてですが、普段はヘルメットをかぶりませんが、作戦時には手袋とメットと合わせて使用します。それでロングコートには、無人偵察機と同じように光学迷彩で姿を消す機能と、着用者の周りの気温を調節しいつでも快適に過ごせる機能があります。これは手袋を付けメットをかぶれば、例えば冬のエベレスト山に行こうが、赤道直下の砂漠に行こうが無問題という位です。それと防刃、防弾、耐火、耐熱、耐寒冷、耐毒、耐酸、耐衝撃、絶縁処理済みを施してあり、この辺の機能は乗馬服やロングブーツ等も同じです。あとロングブーツは特殊な靴底で完璧に足音を消してくれますし、例え氷の上でも滑らず歩けます。移動による足の疲労も抑えてくれます。あとコツをつかめば水の上も歩けるかもしれませんよ。おまけにすべて身につけるものは自動でピッタリのサイズに変わります」
「えっ? 光学迷彩? 防刃、防弾、水の上……? えっ?」
「さらには……」
バキッ!!
「このように、人口筋肉を備え通常の30倍の力を出せます」
そこには全身の筋肉が大幅に盛り上がった服を着たマネキンが……。
「ぶっ! いきなりマネキンがマッチョになった!」
ヴァン!!
「さらにドン! このように、バリアを発生させて全身を包み込むこともでき、この状態なら深海でも宇宙空間でもドンとこい……」
「いやいやいやいや、おかしいでしょ、こんなの! なんなのその出鱈目な服は! 責任者出てこい!!」
何がなんだかわからず、ついに真央はキレた。
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