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第3話

うーん、話の流れってムズカしいです。

もしかしたら、手直しするかもしれません。

 気を失っていた真央は目を覚ますと、自分がベットに寝かされていることに気が付いた。


「おじさん!!」


「神崎さん、落ち着いて下さい」


 慌ててベットから起き上がろうとする真央を白衣を着た女性が制止する。

 どうやら彼女は真央が目を覚ますのを待っていたようだ。


「ここは!? あ、あなたは……?」


 目覚めたばかりで、周囲の状況が分からない真央は、キョロキョロしながらベットの脇にいた女性に声を掛けたが、女性の非常に整った顔を思わず二度見して、言葉を失う。

 白衣の女性は歳は十代後半から二十代前半。髪は濡れたような艶やかな漆黒のストレートを腰までのばし、スラリとした細身だが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んだ、抜群のスタイル。非常に整った色白のかんばせに髪と同じ漆黒の瞳と形の良い紅い唇で、10人中9~10人位が振り返りそうな容姿だ。


 真央が驚いているうちに、女性は真央の脈拍等のバイタルをチェックし記録する。そして真央にいくつか問診する。


「落ち着いて下さい神崎さん、ここは私たちの拠点の病室です。ここは安全ですから心配いりません。それで体の調子はいかがですか? どこか痛いところや違和感などはありませんか?」


「……。 いえ、どこも痛くありません。 ……そういえば、なんだか体が軽い感じがします」


 なんとなく美人は声もキレイだなと考えていた真央は、急な問いかけにあわあわする。


「そうですか、それは良かった。 実は勝手で申し訳なかったのですが、神崎さんの体を精密検査させて貰いました」


「えっ!?」


 女性は花月かげつと名乗り、日本人だと告げる。そして医療班の自分が真央の精密検査を行ったと話した。


「理由その一として、当然神崎さんの現在の状態を知るため」


「次に、日本帰るにあたってに、この世界特有の未知のウィルスや病原菌などを持ち込むわけにはいかないので、その有無などの調査です」


 精密検査という思わぬ報告に、真央はアレを見られたと動揺するが、検査の必要な理由を聞き、更に幸い怪しげなウィルスや病原菌などは検出されず、また重篤な病気や怪我もなかったとのことで、ひとまず落ち着いた。

 その様子を観察しながら、花月は近くの電話の受話器をとり、どこかに連絡を入れる。どうやら電話の向こうの人物に、真央が目覚めたことを知らせている。


花月かげつです、神崎さんが目を覚まされました。……はい、……よろしくお願いします」


 真央はその声を聞きながら、なんとなく部屋を見渡した。その部屋は日本の・・・大病院の個室のように清潔で、壁際には高価そうな機器が並んでおり、その他にモニターや備え付けのキャビネットなどが置かれている。


 真央は召喚の儀式の生贄にされそうになり、「おじさん」と城から逃げ出したときに見た街の様子を思い出していた。

 その街は中世ヨーロッパのような街並みで、上下水道などのインフラも整ってはおらず、衣食住や医療や教育その他の文化レベルも、お世辞にも高いとは言えないものだった。

 そんな街並みに、当然のようにローブを着て杖を持った魔法使い然とした者や、剣、鈍器メイス、斧、弓などなど武器を持った剣士や戦士、狩人や神官がいて、どこか現実感の乏しい、現代日本人からすれば映画のために造ったセットのような街並みだった。

 当然だが真央にはその映画のような街並みに感動している暇はなく、街を出てからも魔法や魔物など異世界の代表のようなものに立て続けに遭遇し、心の奥底では認めていなかった異世界召喚の現実に打ちのめされ、否応なしに辛い現実に直面させられた。


 真央がそんな記憶を思い出していると、記憶にある人物が入室してくる。というか、真央はこんなにキレイな男性(?)を見たのは、助けられた時が人生初だ。忘れるわけがない。


「ご気分はいかがですか、神崎さん」


「はい、大丈夫です。 ……あの、あなたは私を助けてくれた人ですよね。本当にありがとうございました」


 話しかけられ、返事をしながら真央は頭を下げた。


「いえ、大事になる前に間に合って良かったです」


「それで……、いきなりで不躾ぶしつけですが、いくつか質問しても良いですか? ここは日本ではないのですか? それと私を保護しに来たとおっしゃいましたよね?」


 期待を抱いて要に問いかける真央。しかし要は首を横に振る。


「期待させてすみません。 ここはまだ神崎さんが召喚された世界です」


 要の返事を聞き、ぬか喜びにガッカリした真央は当然疑問が浮かぶ。


「順番に説明しますね。まずは改めて自己紹介します。私の名前は諏訪すわかなめ。日本政府直属の機関、異世界転移召喚事故対策部ファンタジー課・被害者奪回班のエージェントです」


「異世界転移召喚事故対策部? 被害者奪回班??」


 真央は急に出てきた色々な単語に面食らう。 

 要の説明によると、ことの起こりは201X年、世界中で謎の失踪事件が相次いだことがきっかけだった。中でも飛び抜けて失踪者数が多かったのが日本だ。十代、二十代の失踪者が特に多く、ある高校の生徒たちなど、一クラス丸々行方不明になったこともあったが、その他の年齢層もいないわけではなかった。当然マスコミは連日大々的に報じ、警察も大がかりな体制を組んで捜査に当たったが、行方は杳として知れなかった。警察は大がかりな組織の身代金目的の誘拐事件の可能性から、宗教関係のテロや事故や集団自殺の可能性まであらゆる方面から捜査したが、一向に手掛かりが得られなかった。当然ネットやTVのワイドショーや週刊誌などで様々な憶測が流れた。神隠しやテロや某国の陰謀、宇宙人による拉致、異世界に召喚されたなどなど様々だった。被害者の家族や関係者の中には、政治家や著名人の息子であったり大物芸能人やセレブの娘などもおり、結果の出ない警察や政府に非難の矛先を向けた。事ここに至っては政府も重い腰を上げ、ついにある部署を立ち上げた。それが異世界転移召喚事故対策部だ。


「はい、日本政府直属なんて、言っている私が恥ずかしいのですが、あなたのように異世界に無理やり拉致された被害者の方を助け出すために新設された組織です」


 要の話を聞いた真央は自分なりに消化しようと、自分の中で必死になって整理する。


「私のように召喚された人が他にも、それもたくさんいただなんて」


「はい、しかも異世界召喚も、人数が一人の場合から高校の一クラス丸々なんてケースまで様々です。その他には、自然現象的に地球と異世界が偶然重なりつながってしまって、運悪くにあちら側に紛れ込んだりしてしまう人がいたりだとか、さまざまなケースが起きています」


 そこまで話して要はばつが悪そうに組織の内情を話す。


「そのようにな異世界に拉致されたり、運悪く事故のように異世界に紛れ込んだりした人々を救うため、異世界転移召喚事故対策部が編成されました。ただですね、言い訳じみていますが、何分新設された組織でまだ未熟であり、失踪者扱いになっている神崎さんのこともあるルートから情報を得て必死に捜索したのですが、対応に遅れが出たりや後手に回ることも多く時間がかかってしまって申し訳ございません。というのも召喚先がどんな世界でどんな倫理や目的で動いているのか等、情報が無く現地に行ってみるまで様子が分からない場合がほとんどなのです」


「それはそうですね、なんといっても相手は異世界なんですし」


「実際に被害に遭った神崎さんに、そう言っていただけるとホッとします」


「でも、どうやって私の居場所がわかったんですか?私自身が自分の居場所を良く分からないのに?」


「あまり詳しくは言えないのですが、私たちの仲間に自力で異世界から帰ってきた者や、逆に異世界から地球に渡来した者達がいます」


「自力で戻ってきた人もいるんですね、すごい!」


 驚く真央に要はうなずき、再び話始める。


「その異世界帰りの中に、失踪者を探すことに長けた者がおりまして、神崎さんの情報が出てきたので、こうして救出に来ました」


 そう言って要は真央に優しく微笑む。その笑顔を見て、頬が赤くなるのを自覚した真央。


「それでですね、神崎さん。ここからが本題です。 今回の被害者についてですが、この国には現在神崎さんを除くと、「おじさん」と他に二名の日本人がいることが分かりました」


「ッ、本当ですか!?」


 真央がハッとした顔をして要に聞き返す。それに要と花月はうなずいて、真央が一番知りたいであろう重要な情報を教える。


「本当です神崎さん。どうやら「おじさん」は捕まってしまったようですが、まだ生きていますから。これがその映像です」


 そこには真央が「おじさん」と呼ぶ中年男がいた。 両手を鎖につながれているし、服はボロボロであちこちに怪我をしている。一応は手当を受けた様子で、包帯でぐるぐる巻きになっている。


「この映像はライヴです」


「はぁー、取り敢えず良かった。 おじさん、きっと助け出すからね。あ、でもどうやって調べたんですか?」


「まず、先ほど神崎さんを襲った生ゴミ兵士たちの口を割らせました。方法については、女性に話すような内容ではないので省きますが、どれも生ゴミらしく汚物は消毒したとだけお伝えしておきます」


 真央は要が非常に冷めた目付とは裏腹に、軽い口調でさらりと言った内容にゾッとし、そこは華麗にスルーした。真央の人生で最も華麗なスルーだと自分で自分を褒めたい。


「生ゴミ兵士たちの情報では信憑性に難ありなので、裏を取りましたが今回はアタリでした。ここを糸口に「おじさん」の情報について調べましたが、まず第一に召喚された日本人で間違いありません」


 真央はやっぱりという顔でうなずくが要の次の言葉で驚く。


「彼の名は「尾崎おざき すすむ」さん28歳で、拉致されたのは神崎さんの一ヶ月前です」


「え、28歳!本当にその人が「おじさん」ですか?こう言っては何ですが、「おじさん」は50歳前後に見えますが」


「ええ。実は地球とこの世界の時間の進み具合が同じではなく、この世界の方が速く時間が進み、さらに厄介なのが時間の進む速さが一定ではないのです。地球の一時間がこちらの一日だったり、一年だったりするときもあります」


「そんな!それじゃあ地球に戻っても、逆浦島太郎のように私やおじ……じゃなかった、尾崎さんだけが歳をとってしまっているんですか」


「そうなんですが、それに関しては解決する方法がありますので、そこは心配いりません」


 地球に戻れた後の心配をする真央に、要は自信たっぷりに解決する方法があるといい、仕方なく真央は問題を保留することにした。


「で、どうやって「おじさん」改め尾崎さんたちを見つけたかというと、これを使用しました」


 要がバッグから取り出した物は、バレーボール位のサイズの銀色の球体で、それを真央の手に乗せる。


「わっ、なんです、これ? 見た目は完璧金属製で、触った感触もやっぱり何かの金属なのに、ずいぶん軽いですね。風船みたい」


 真央は手で銀の球をためつすがめつ観察する。そうしていると銀色の球体は音もなくフワリと宙に浮かび上がった。


「それは無人偵察機です。それを大量にバラ撒き、映像を送らせて情報収集しています」


 言われて彼が指差した方に目をやると、大型のスクリーンが現れ分割された各画面に映像がでる。


「防犯カメラのモニターみたい」


 真央の感想にうなずき要は、無人偵察機の説明を始める。


「異世界は魔力マナが空気の中に含まれている世界が多く、この世界も例外ではありませんので、その魔力マナを取り込み空を飛ぶんです。動力は魔力マナを使い、サブ的に自家発電した電力も使用します。機能はまず広範囲に情報を収集するための各種センサーと、高性能カメラや集音マイクを持ち、潜入のために光学迷彩で姿を消し、消音性も完璧です。それに色々なサンプルを採取可能で、採取したサンプルはここへと送る機能付きです。これで色々なところに入り込んで情報収集し、さらにより狭いところにも入り込めるように、ハエサイズの子機もいくつか持っています」


 要や真央の周りをクルクルと回って、さらに無音で透明化する球に唖然とする真央。


「因みに名前は衛星サテライトです。これは透明化の他に、万一敵に発見された場合のために攻撃を防ぐバリアを持ち、攻撃(・・)機能としてレーザービームを備え、捕獲されそうになった場合や、何らかのトラブルでここへの帰還が困難になった場合は、証拠を残さないように、自爆(・・)を敢行します。ちなみに威力は家一軒吹き飛ばすほどです」


 嬉々として語る要の姿と、持っている物体の性能を理解すると共に、ドン引きする真央。


「冗談ですよね?そんなSFマンガやアニメに出てくるような物を造れる科学力無いですよね?」


「いえ、先ほど神崎さんの周囲にいた生ゴミ兵士たちにレザーを喰らわせたのもこの衛星サテライトです」


 引きつった顔で問う真央に、真顔で返す要。


「実は先ほど話にでた異世界帰りや渡来人なのですが、彼らからもたらされたものは異世界の知識や経験の他に、魔法や魔技なんかがあり、さらにその世界の技術と素材でできた武器や道具類などなど、まるでSFの世界かと思うようなものもありました。それらと地球の先端技術を融合させ、良いとこ取りしたハイブリットな魔導科学というべきものの研究が密かに行われています。この魔導科学で開発した武器や兵器は、異世界でも非常に強大な力を発揮します。今回も魔導科学の武器や兵器をありったけ持ち込みましたので、安心してください」


「そ、そうなんですか」


 真央には他にコメントのしようがなかった。


お読み頂き、ありがとうございます。

感想をお待ちしています。誤字脱字・矛盾などのご指摘はなるべく優しくお願いします。

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