第14話
一年以上ご無沙汰してます。 なんとか生きております。
超不定期ですが、よろしければ時間つぶしに
見てやってください。
もしかしたら、手直しするかもしれません。
6/23 タイトルに不備がありましたので、修正しました
真央や尾崎たちが突然消えた要の身を心配していると、再び地面に浮かび上がった魔法陣と、対になる魔法陣が地面から3メートルほどの中空に生まれる。 同時に上と下から魔法陣に挟まれた空間がグニャリと歪み、中空の光り輝く魔法陣が、スーッと静かに地面に向かって降りてくる。 すると魔法陣の通り過ぎた部分から要の頭、胴、腰、両足と姿を現していく。 要が完全に姿を現すと、魔法陣は空気に溶けるように消えた。
ドサッ!
要は肩に担いでいた修道女の恰好をした女を地面に降ろす。
「諏訪さん、大丈夫ですか? いきなり消えたから何事かと思いました」
「おい、いきなり消えたかと思ったら、修道女を連れて戻ってくるとは、驚きだぜ」
「お帰りなさい、諏訪さん」
「狙撃犯は捕えた。 アイとマイ、拘束して武装解除しておいて。 あとで尋問するから」
「「御意」」
真央たちが掛けてくる声に答えながら、要がさも当然のように指示すると、要の後ろに跪く二人の人影が現れ答える。
「そんな……」「気配なんてしなかったぞっ!」「いつの間に」
要の連れてきた文官たちとは別に、唐突に現れた人影に尾崎たちが驚く。真央だけはもうそれくらいでは驚かなくなってきている。 現れたのはところどころにアニメのような奇抜なデザインの施された立派な西洋風甲冑に身を包んだ、名のある騎士の武威を纏った女性たちだ。 顔はヘルムで上半分が見えないが、アゴのラインや形の良い唇から相当な美女たちであると思われる。 彼女たちは短い言葉と共にテキパキと行動を開始する。
部下に指示を出した要は花月と連絡を取り合う。
「花月、視ていただろう。 ブリアーナは捕えた。 それと彼女が転移してきた山の中腹の崖も調べたが、転移用とみられるマーカーが見つかった。 どうやらサンバラ正教会の転移術は、行先にあらかじめマーカーを打つ類のもの様だ。 恐らくそのマーカーを、秘密裏に各国の王都に城を囲むように分散して仕掛け、有事の際は作戦によって一番有利な位置のマーカーに転移し敵を強襲する、もしくは最寄りのマーカーから味方を撤退させるなどに使うのが、奴らの魂胆だろう。 花月、この王都周辺のマーカーを探せ」
「はい、現在無人偵察機に、王都内と王都周辺のマーカーを探索させています。 それとブリアーナの転移時の観測データから、転移して来る際の空間の揺らぎを感知していますので、次の揺らぎを感知し次第要に位置情報を送ります。 ……要、早速来ました。 位置情報を送ります」
花月の報告に満足そうにうなずく要。 と、同時に要が見ている王都の地図に印が付く。
「今度は二か所同時か。 花月、城に近い方にミイとメイ、遠い方にケイとユイを送ってくれ。 ミイとメイ、ケイとユイ、お前たちなら楽勝だ。 ターゲットは生け捕りにしろ。 いけるな?」
要は新たに現れた四人の美女騎士たちを転移させるように花月に指示を出し、その美女騎士たちにも命令をだす。
「要様、お任せを」
「御意」
「生け捕りってのは面倒だね、まあ要のご指示に否はありゃしないが」
「すぐに帰ってくるから。そしたら褒めて褒めて」
言うが早いか、四人は魔法陣によって転移していく。
それを見送った要は、文官たちにガレキの山となった部屋は放置し、無事な部屋で交代で休憩するよう指示する。
「要さん、今休憩ですか?」
真央がこの状況で休憩をとって大丈夫なのかと疑問を呈すると、尾崎たちも真央に同意し要に疑問をぶつける。
「大丈夫です。 ここの周りは花月が警戒しているし、文官たちも半分は警護させています。 それよりも尾崎さんたちの怪我を手当して、軽食などを用意しますので真央さんたちも休憩しましょう」
襲撃された部屋を出た要は、真央たちを連れて無事な部屋を探しながら部下に指示を出すと、ほどなく見つけた部屋に勝手に入る。
要はテーブルと椅子に近づくと真央と尾崎たちに椅子をすすめ自分も座る。
椅子に座った尾崎たちは、要の部下からカプセルに入った薬と水のペットボトルを受けとる。 薬のカプセルもペットボトルもこの異世界には無いものであり、尾崎たちは地球を思い出して懐かしむ。
「尾崎さんたちは最初にこの薬を飲んでください」
「これは?」
「回復薬です」
「回復薬?」
回復薬というワードに若干不安になりながらも、尾崎たちはペットボトルの水で薬を飲む。
突然、尾崎たち三人の全身が光り出す。
「お、おい! なんだこれ!? ……っ! 全身の痛みが消えたぞ!?」「うわっ!? ボコられたとこの腫れが引いてる!?」「折れた歯が生えてる? うえっ!! ちょっと引くくらいの回復薬だな!?」
「治ったんですか、やったあ! 諏訪さんありがとうございます!」
真央は尾崎たちの回復を素直に喜んでいるが、当の三人はもちろん喜んではいるが、同時にちょっとあり得ない事態に動揺を隠せない。
要はそんな真央たちにおかまいなしに、部下にテーブルに人数分のランチョンマットを引くよう指示し、自分はどこからか取り出したタブレットを手に持ち操作する。
「ハイ、神崎さん、尾崎さんたちも聞いて下さい。 このタブレットに食事のメニューが表示されています。 この中から好きなメニューを選んで決定ボタンをクリックして下さい」
要は説明しながらタブレットを真央たちに渡す。
真央や尾崎たちは回復薬については一時棚上げすること(現実逃避してとも言う)にして、受け取ったタブレットを覗き込む。
「お、回るお寿司屋さんや居酒屋チェーン店なんかにあるやつだな。 なになに? 和食、洋食、中華、イタリアン、フレンチ、カレー、ロシア、タイ、ベトナムその他の料理に、フルーツにデザート、酒、ソフトドリンク、つまみに駄菓子まであるのか」
「私、サンドイッチにサラダと紅茶にします」「じゃあ、俺は……お、うな重にしよう」「おれはラーメン」「ラーメンもいいけど、俺はかつ丼だ」
わいわい言いながらそれぞれが選び、決定ボタンをクリックすると、それぞれの目の前に用意されたランチョマットに光と共に、おのおのが選んだ品が音もなく現れる。
「え!?」「っ!」「何!」「うわっ!」
真央たちは、目の前に現れた湯気をたて、おいしそうな香りを放つ品々に、度胆を抜かれる。 要はその様子をみてイタズラが成功した悪ガキのようにニヤニヤしながら、自分の分のから揚げ定食に「いただきます」といいながら箸をつけた。
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