第13話
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これからも異世界転移召喚事故対策部ファンタジー課・拉致被害者奪回班(仮)をよろしくお願いします。
8/25 第12話のブリアーナの口調を修正しました。
「神崎さんと尾崎さんたち、勿論怪我はないですよね」
「なんだよ勿論て!」「いてて、何が起きたんだ?」「ゴホッゴホッ、ほこりが。 天井が落ちて部屋が滅茶苦茶になってます」
要の確認に尾崎がここは怪我はないですか?だろ、なんで勿論なんだよと、周囲のガレキを退けながら愚痴る。 確かに怪我はないが酷いホコリだ。
「私たちは大丈夫ですけど、他のみんなは? それと一体何が起きたんですか?」
「要、今の攻撃で城が半壊しました。 ゼント王国側に死者重傷者多数、ガレキに埋もれている者も多いです」
真央が誰ともなく現状を確認する声を上げる中、花月の報告にうなずく要。
「心配はいりません。私の部下は皆無事です。 この程度でどうにかなる程ヤワじゃありません。 もっともゼント王国側は国王と司祭以外は、死者重傷者多数、ガレキ等に埋もれている行方不明者も多数いるようですが」
要が花月の報告を真央に伝えると、彼女は周りを見渡しコロン王と司祭他数名を確認する。
「それと何が起きたかですが、突然城の背後の山に、シスターの恰好をした女が現れ、大弓で狙撃して来ました。 女はブリアーナというらしい」
「狙撃だと!?」「シスターってことはサンバラ正教会か!?」「ってかサンバラ正教会の司祭もいるのに普通撃つか!?」
「ブリアーナだと!」
尾崎たちが口々に思ったことを話し騒いでいると、今まで茫然としていた司祭が、ブリアーナの名に大声を上げる。
「「知っているのか、雷電!?」」
要と尾崎が仲良くハモッた。 ハッと二人は一瞬顔を見合わせ、双方目を逸らす。 他のメンバーは?顔だ。 要の部下たちが声を出さずに忍び笑いをしている。
「……。 サンバラ正教会の聖騎士団は強い者ほど高い位を得る。 現在の最高位は10人おり、あの女はその一人だ。その強さは……」
要の方から司祭に尋ねたが、実は興味がなかったらしく、途中で司祭の話をぶった切る。
「花月、あの女は?」
「捕捉しています。 彼女は現在大弓を射た崖を離れ、こちらに向け移動中です。 どうやら自分の射た矢の威力に納得がいかないらしく、しきりに首を傾げながら、こちらの生死を確認しに来るようです」
「今この城には、魔法を封じる封魔陣を張ってあるのに、良く陣の外側から攻撃して城を半壊させたものだ。 まあいい、宣戦布告は受け取った。 花月、他に仲間がいないか確認してくれ。 次は俺たちのターンだ」
花月はうなずくと無人偵察機に周囲を探索させる。
「今現在、刺客は彼女一人の様です。 しかし、サンバラ正教会には遠くの場所へ瞬時に移動する手段がありますので、油断は出来ません」
「勿論、油断はしない。 ただ、封魔陣を張ってあるから、直接ここに乗り込んではこれないはず、引き続き城の周囲を見張ってくれ。 しかし、あの女の今の攻撃だが、魔力を使って攻撃力を上げたものだが、ひょっとしたら、気も混じっているのかも」
「この世界に気を使った業はないはずですが?」
花月が首をかしげる。 確かに事前に調べた限り、この世界に気はない。 しかし、なんにでも例外はある。 あの女がそうと知らずに使っている可能性もあるし、あの女だけではなく他にも自覚なしに使っている者がいるかも知れないが。
まぁ、あんな弱攻撃に多少気が混じったところで、どうでもよいことだ。
要がそう告げれば、花月もそうですねと同意する。
「さてと、反撃だ。 ブリアーナに向かって転移」
要の声に、すぐに要の頭上の空間がグニャリと歪み、光り輝く魔法陣のようなものが現れ、スーッと静かに頭から足へと降りてくる。すると魔法陣の過ぎた部分は消えていく。そして、完全に要の姿が消えると、魔法陣はゆっくりと消えていった。
「無詠唱の転移魔法だと! そんなことが出来る者は教会にもおらんぞ」
要が消えたあとを見て、司祭が茫然とつぶやく。
――――――――――――――
銀髪碧眼の修道女は、先ほど自身が射た者たちの生死を確認しようと山を降りていたところ、目の前の地面に突如浮かび上がった魔法陣に驚き立ち止まる。
ブリアーナが足を止め見つめる中、地面に浮かび上がった魔法陣と対になる魔法陣が地面から3メートルほどの中空に生まれる。 同時に上と下から魔法陣に挟まれた空間がグニャリと歪み、中空の光り輝く魔法陣が、スーッと静かに地面に向かって降りてくる。 すると魔法陣の通り過ぎた部分から要の頭、胴、腰、両足と姿を現していく。 要が完全に姿を現すと、魔法陣は空気に溶けるように消えた。
「「空間跳躍」ですって! 教会の他に使える組織がいたのですか!?」
「ただの瞬間移動だよ。 珍しくもない」
「あっ!」
ブリアーナは要の美貌を見て顔を赤らめる。 そんなブリアーナに構わず要はなぜ奇襲して来たのかを問う。
「それよりも、何故あの城を射た? ゼント王国の国王や重鎮たちや、あんたのお仲間の司祭もいたんだぞ」
「た、ただの瞬間移動ですって? 貴方、いや、貴様は言い伝えの悪魔ですね?」
「質問しているのは俺だ、答えろ、俺が何者かも分からんうちになぜ射た?」
「理由ですって? フンッ、そんなものは決まっています。 我がサンバラ正教会が誇る「聖女」様が、神託を得ました。 その神託には本日中に、このゼント王国の王城に現れる一団が、この世界に遍く災いをもたらす、と」
ブリアーナは「聖女」の話題が出た途端に、赤らめた顔でやりずらそうにしていたことが嘘のように顎を上げ、尊大にいい放つ。 その表情は恍惚として、目はイッちゃている。 なんだかヤバい薬でもキメているようだ。
「「聖女」に神託だと? そいつが俺たちがこの世界に災いをもたらすと告げた?」
「下賤な悪魔ごときが、聖女様「そいつ」などという口を利いてはなりません! そしてその神託は正しかった。 貴様たちは、神のお力をお借りした私の矢を、どのような方法かは知りませんが、防ぎました。 こんなことは我らの神に敵対するという言い伝えのある悪魔にしか出来ません」
ブリアーナは要を悪魔と断じ、自分を正義の味方と考えているようだ。
ふむ、と顎に手を当て「聖女」と神託について考える要。
この世界には受動的スキルや能動的スキル等が無く、あくまで魔力を用いた魔法系のスキルがあるのみだ。
教会はその中でも、傷の治療や戦闘時の味方の強化、敵の弱体化等の支援系の魔法を法術と称し、通常の魔法使いが使う攻撃的な魔法とは別の魔法としていたが、神託もそうした法術の一スキルなのか?
それとも「聖女」とやらだけがたまたま占った結果が偶然当たっただけなのか、はたまた瓢箪から駒で口から出まかせで全くのデタラメいわゆるカタリか?
うーむ、情報が足りない。 ここはこの女を叩きのめして口を割らせるか。 もしあのパターンだとしたらメンドくせいからな。
「それで、王や司祭まで一緒に射た訳は?」
「彼の者は只の司祭。 替えのきく駒でしかありません。 生きていようと死んでいようと、どちらでもかまわない存在ですが、特に最近の彼の者の、教会の寄進の横領には目にあまるものがありました。 そういう意味では死んでくれた方が、教会にとってはプラスでしょうし、そもそもゼント王国など大陸に数ある国の一つに過ぎず、大陸をあまねく照らすサンバラ正教会にとっては、その国の国王もただの庶民と何ら変わりません」
まあ、そんなところだろうと要は思った。 正直、司祭などどうでも良いが、未成年である真央や尾崎たちを外国(異世界)に拉致した実行犯を見逃すという選択肢はないし、逮捕する必要があるので生かしているだけだ。
さて、本題だが、ここは手っ取り早く、あの女に選ばせるか。
「聞け女! 今すぐ降伏して聖女とやらについて詳しく話すなら痛い目を見ずに済むが、歯向かうならば腕の一本や二本は失う覚悟をしろ。 さあ、選べ」
要は傲然と顎をあげ、ブリアーナを挑発する。 その表情がお前なぞ眼中に無いと雄弁に物語っている。
「なんですって!? この私に向かって大きな口を叩きましたね。 身の程を知りなさい!」
ブリアーナの纏っている鎧が一斉に輝きだす。 その光がブリアーナの手に集まっていく。
今回の武器は弓ではなく、大剣のようだ。
白い魔力光を纏う長さ二メートルを下らない大剣は、凄まじい威圧感を放っている。
ブリアーナはその大剣を、小枝のように軽々と持ち素振りする。 その素振りも大剣が霞むような凄まじい速度で、振るわれる度に、ブォンブォンと風圧の突風が吹き荒れる。
満足のいくまで素振りしてから、ブリアーナは大剣を頭上に振り上げる。
いわゆる上段の構えと呼ばれる攻撃的な構えの形で静止する。 呼吸に少しの乱れも見られず、その構えにもまるでリキんだ様子はなく極て自然な構えだ。 彼女はその体勢から充分に魔力を練りあげたところで、要に向けて一足飛びに間合いを詰め、大剣を振り下ろすつもりなのだろう。 その魔力を纏った大剣が振り下ろされれば、どのような大破壊をもたらすか計り知れないだろう。 下手をすればこのゼント王国の城下町が消し飛ぶかもしれない。
「さあ死になさい、覇王大……」
魔力を練りあげたブリアーナが、必殺の大技を仕掛けようとした瞬間……
「うるせえよ」
「え?」
ドゴン!!
要に向けて飛び込むつもりのブリアーナの顔を、いつの間にか間合いを詰めた要が、正面から無造作にアイアンクローでガッチリと掴んで、地面に叩きつけていた。
「おい、聖女とやらについて詳しく…… チッ、気絶してやがる」
ブリアーナはどこかのスケ〇ヨよろしく、頭から地面に上半身を突っ込んで、二本の足を天に向かって高々と突き上げ、着ていた服がめくれて、修道女らしからぬハデなパンツが丸見えになっていた。
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