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第12話

日に日にPV数やブックマーク数が増えています。


これからも異世界転移召喚事故対策部ファンタジー課・拉致被害者奪回班(仮)をよろしくお願いします。


8/10 第11話の読んでいて分かりにくい部分に若干手を入れました。 大筋はいじっていません。


8/20 第11話に若干の修正を入れました。


8/25 ブリアーナの口調を修正しました。

「さあコロン王、異世界召喚の儀式に関するものをすべて、廃棄していただけますね」


 要は司祭の発言には触れず、コロン王に決断を迫った。


「グググ~~」


「あ、そうそう、これを見てください」


 悩むコロン王を無視シカトし、要はテーブルに地図を広げる。 航空写真を基にしたカラーの地図だ。


「なんだ、この地図は!?」「まるで風景をそのまま切り取ったかのような、こんな精巧な地図は見たことがないぞ!」「これは我が国か!?」「そうだ、ここが王都で、これが……」「しかし、この塔はなんだ!?」


 地図を囲んで騒ぐゼント王国側。 本来地図はその国の秘中の秘である。 精巧な地図は情報の宝庫と言え、他国に知られてはならないトップシークレットだ。 しかし、要からそれが出てくることに、ゼント王国側はもう誰もツッコミを入れなくなっていた。


「この国を取り囲む6本の塔がありますね、我々が建てたその塔が、あなた方の魔力を封じた光の粒と関係がある、とだけ申しておきましょう。 因みに今現在、魔力が封じられているのはこの城のみですが、この王都全体、この国全体と広げるなんてのは造作もないことです」


「なんと……!?」「ハッタリじゃないのか!?」「しかし、現にこの城で魔法が使えなくなっているのだぞ!」


「わかった。 召喚に関する物は全て廃棄する」


 コロン王がついに折れ、廃棄を約束する。 約束しなければこの国全体の魔法が封じられるかもしれない。 そうなれば、例えこの場はどうにかやり過ごせても、他国の侵略に魔法なしでは対抗できない。 王はガクッと項垂れて、その姿は急に何歳も年を取ったように見えた。 だからといって全く同情などしないが。 真央はむしろ、ザマミロと言いたい!


「ねえ、ねえ、今どんな気持ち? とるに足らないと思っていた相手にコテンパンにされて、要求も全部飲まされた気分はどう? 大陸で一二とか言って、魔法兵団をそろえて威張っていた過去の自分を振り返って、今なら過去の自分になんて言う? とんだ黒歴史だよね? 恥ずかしくない? ねえ?」


 だから真央は思わず声に出していた。 真央も相当イロイロ溜まっていたようだ。 途端に日本側のメンバーから大爆笑が上がり、ゼント王国側から怒りや憎悪と言った負の感情を含んだ歯ぎしりが聞こえる。


「諦めな! てめえらは負けたんだよ!」


 真央に負けじと尾崎が言葉を発する。 どうやら、要たちのことを真央に教えられたようだ。 要なんかは、よく信じる気になったもんだとも思うが、日本人が日の丸の旗を持って集団で助けに来たという夢のような状況は、逆に信じる気になるのかも、と思い直す。 まあ尾崎たちをハメるメリットは誰にも無いというのもある。


「じゃあ、壊そっか。 花月、やれ」


ドン!! ドン!! ドン!! ドカーン!! 


 突然城の数か所で爆発が起こり、さらに一か所で爆音が轟き渡る。


「うわっ!」「な、なんだ!?」「爆発っ!?」「ま、またか!」


 突然の爆音に訳も分からないゼント王国側と尾崎たちに、要が声を掛ける。


「心配はいりません。 今の爆発はこの城にある召喚の儀式を行う魔法陣を破壊し、関連書物や資料を燃やし、道具類を木端微塵にしただけです。 だから安心してください」 


「いやいやいや、資料燃やして火事は大丈夫なのか!?」

「いやいやいや、木端微塵にした「だけ」って言われても!!」

「いやいやいや、こんなんで心配いらないとか、安心してって言われてできるか!!」


 尾崎たちから盛大なツッコミが入る。 さすがに二十年来のパーティだ。 息がピッタリあっている。


「まあ、それはそれとして、あとは召喚の魔法に関わっていた司祭と魔法使いたちをどうするか」


 要はツッコミを軽くスルーすると、思案するように独り言ちる。


「な、なんてことをしてくれたんだ! 魔法陣や道具類も大事だが、この国で行った儀式の記録をすべて燃やすなんて!」


 思案する要に、真っ青になった司祭が食ってかかる。 どうやら部下から先ほどの爆発の被害状況の報告を受けたようだ。


「異世界召喚の儀式は、司祭ら教会主導で行われ、わが国の魔法使いは雑用以外一切触れさせてはもらっておらん。 なのでこの国の魔法使いでは、異世界召喚の儀式は出来ん」


 要のつぶやきに王が答える。 青い顔色の王を見るにつけ、王も司祭と同様の報告を受けたらしい。


「司祭殿、本当ですか?」


 それを聞き、要は儀式を行っていたサンバラ正教会の司祭に問う。


「クソッ! ああ、そうだ! 言った通り異世界召喚の儀式は、我がサンバラ正教会の秘儀だからな。 誰が儀式の全容を他の魔法使いに教えるものか! 神のご加護である教会の法力と、有象無象の魔法使いの魔法を一緒にしてもらっては困る! それと私はこの国の国民ではない。 この国の王に私の身柄をどうこうする権利はないぞ! 残念だったな、フフッ」


「貴様、たかが一司祭の分際で、わが国の魔法使いを愚弄するか!」


 司祭の暴言に、ゼント王国側から盛大なブーイングが上がる。 この世界では本格的な医療を担っているのは教会である。 確かに魔法使いにも治癒魔法は使えるが、それは怪我には効果があるが、病気は直せない。 教会の認めた司祭クラス以上の法力だけが、怪我も病気も治療出来るのだ。 誰もが怪我をしたり病気に罹るリスクを抱えており、その治療ができる教会は巨大な権力を持っている。 彼らは金払いのいい者しか相手にしないと花月からの情報があった通りである。 金のない者はモグリの町医者や怪しい民間療法を扱う薬師にかかるしかない。 そしてこの司祭は見た目通りの俗物であり、その本性は他の魔法使いを塵芥ゴミと蔑む教会至上主義者だ。


「おい! お前たちの目的は尾崎たちとこの国の儀式をやめさせることであり、その目的は果たしたのだろ、早く私の法力を使えるようにしろ!」


「いえ、我々の目的は、神崎さんや尾崎さんの奪還と、この世界から我々の世界への異世界召喚の儀式を行えないようにすることです」


「何!?」


 司祭は自分の聞いたことが信じられず、思わず聞き返す。


「何度も言わせないでください。 この世界の異世界召喚の儀式を完全に潰すことが目的だと言ったのです。 さもないと、同じことの繰り返しになりますから。 さあ、その教会とやらの本部に乗り込みますよ」


 要は自分の部下たちに号令を掛ける。 驚愕したのは司祭だ。


「き、貴様、自分が何を言っているのか分かっているのか? 教会はこの国だけではなく、世界中に支部がある世界最大の宗教だぞ。 それぞれの国でスカウトされた有能な人材が、サンバラ正教会への忠誠心を備え、その法力の強さや武の適正によって、幹部候補、布教活動をする一般の聖職者、聖職者を守護する聖騎士団等へ振り分けられる。 中でも聖職者を守護する聖騎士団は、武の才能ある子供を日夜訓練して高い戦闘技術を持たせた集団だ。 はっきり言うがこの国の近衛兵と魔法兵団300人なぞ、聖騎士一人で容易く制圧できる強さだぞ! そんな聖騎士団の中でも、更に精鋭中の精鋭が守護している教会本部に行くなんて、自殺行為だ!?」


 真央や尾崎たちとゼント王国側は司祭の話した内容に驚き、皆身動きできずに固まっている。 例外は要とその部下たちだ。 要はどうでも良さそうに聞き、部下たちは自分たちの仕事を黙々とこなしている。


「はあ、物は言いようだな。 子どもを攫ってきては、幼少の頃より薬と催眠術を併用して洗脳し、教会への狂信的なまでの忠誠心を植え付け、人を人とも思わぬ過酷な生存競争にさらし、死すらも恐れず戦う狂戦士を量産しているカルト教団だろうが。 だいたい、お前は異世界召喚の拉致実行犯だろうが、何を他人事のようなことを言っている? お前は逮捕・拘束するから自分の心配をしていろ!」


 要にそう告げられた司祭の背後に、要の部下が現れあっという間に司祭を身動きできないよう拘束する。

 まさに誰もが口を挟む間のない早業でり、ゼント王国側も尾崎たちも茫然と成り行きを見守るだけであった。


「な、何をする、は、放せ! だいたい私がいなければ本部には近寄れもせんぞ!」


「場所は知っていますし、案内はいらない。 正面から堂々と乗り込むだけだ」


「なんだと!」


 司祭が激昂仕掛けた、次の瞬間……


カッ!!


 城外から強烈な光が窓を突き破って、執務室に飛び込んできた。


「ッ!?」


 射線上にいるのは要とコロン国王他数人だ。 要はとっさにコロン国王と他一人を手加減して蹴飛ばし、その反動で自身も射線から外れる。


 その強烈な光は、窓は愚か周囲の壁も破壊して部屋に飛び込み、反対側の部屋の壁を貫通して城に大穴を開けていた。


「狙撃!? 花月、どこからだ?」


「要、攻撃は城の背後のアプダ山中腹です」


「何!」


 要が花月の言う方向へ鋭い視線を向けると、アプダ山の中腹に張り出した崖があり、その上に要達を睥睨する銀髪碧眼の女がいた。 要は、司祭の言うを聖騎士団の女だろうと察する。


 その姿は修道服ながら、その上から白を基調とした手甲ガントレット足甲グリーブス肩当スポールダー胸当てブレストプレートのようなものを纏っていた。そして頭に金属製の防具まで身に付けている。 どう見ても戦闘服だ。 とても尼さんシスターの恰好ではない。


 銀髪の女は、おもむろに両手を肩の高さでこちらに向けて突き出したかと思うと、左手を伸ばしたまま半身になって右手を顔の横まで引く動作をした。

 すると、彼女が纏っている手甲ガントレット胸当てブレストプレートなどの甲冑すべてが一瞬白く輝き、次の瞬間には、その両手に白い大弓が握られていた。

 彼女はそのまま白い魔力光を纏った大弓で、重さを感じさずに精確にこちらを狙ってくる。


 そして彼女はその大弓の矢を射る直前に何かつぶやいた。

 要は唇の動きを正確に読む。 誰かが見えんのかよとつぶやく声が聞こえる。


「サンバラ正教会へ仇なす下賤な者たち。 神に代わってこのブリアーナが討ちます。 死になさい!」


 それは宣戦布告だ。

 ブリアーナと名乗った女は、サンバラ正教会が送り込んだ聖騎士団の精鋭なのだろう。


 そしてゼント王国の王城は、かつて執務室のあった場所を中心に吹き飛び半壊した。




お読み頂き、ありがとうございます。


誤字・脱字、矛盾などのご指摘は、やさしくお願いします。


感想を書いたりブックマーク登録をしていただいた方、本当にありがとうございます。


次回もなんとか早くUPできるよう頑張ります!!

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