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第10話

累計PVが4000を突破し、5000も間近です! ありがとうございます。


これからも異世界転移召喚事故対策部ファンタジー課・拉致被害者奪回班(仮)をよろしくお願いします。

 俺の名前は尾崎おざきすすむ

 他の二名の日本人と共に、日本から召喚という名の拉致をされ、このゼント王国に連れて来られた。


 あの日のことはよく思い出す。 俺は一日の仕事を終え、帰宅するために終電に乗っていた。 同じ車内には俺が座る座席の斜め向かいに、二人のサラリーマンがいるだけだった。 二人はどうやら同じ会社の先輩後輩のようだ。 まぁどちらも俺から見れば若いが、二人の話題は先輩からの仕事のアドバイスらしき内容で、後輩は熱心に聞き時折質問等して夢中で話込んでいる。


 俺はボーとしながらも、来月の子供の誕生日と再来月の妻の誕生日のプレゼントは何が良いか考えている。 こうして妻や子どものことを考えていると心が温かくなり、とても幸せに感じる。 自然と微笑みが浮かんでくるが、他人に見られると恥ずかしいので気を付けよう。


 そんなことを考えていると、突然車両の床に何かの図形が浮かびあがり、眩く光ったと思ったら、俺と二人のサラリーマンは何故か見知らぬ広間で見知らぬ兵士に取り囲まれていた。


 そして訳も分からない俺たちに、勇者としてこの世界を魔王の魔の手から救ってほしいと身振り手振りで説明されたが、この時俺たちはこの世界の言葉が分からなかったし、突然異世界なんぞに拉致されて兵士に脅されたまま誰が勇者なんぞを引き受けるかよ。

 当然、俺たちにそんなことは知ったことではなく、元の地球に帰すよう身振り手振りで話すが、身なりから王さまらしい男のそばにいた小物くさい男がヒステリックにキレて何かをわめいたため、兵士に牢屋に入れられた。


 それから俺たちは戦いを強要されたり、拒否すれば次の召喚の儀式の生け贄にされかけたりした。

 何とか逃げ出した後は、必死に言葉を覚え、この世界の習慣や常識を学び、また同時に身を守るために体を鍛え武器の扱いも学んだ。

 幸いと言って良いのか、俺たちにはこの世界の人間の平均を上回る魔力と、それぞれが違った分野の才能が、宿っていた。


 俺には戦士の才が、二人のサラリーマンの先輩の小川には盗賊シーフの才能が、後輩の渡辺には魔法使いの才能があった。 おかげで三人でパーティを組んで、何とか生き残ることができた。


 そして帰還の方法を求めて各地を転々とし、他の国まで行って調べたが、結局帰還の方法はつかめなかった。

 ただ、行った先で悪辣な貴族や悪徳商人がいれば襲い金目の物を根こそぎ奪い、その金は義賊を気取って庶民にバラ巻いてやったし、ムカつく兵士はゲリラ戦法で、さんざん懲らしめた。 賞金首になりお尋ね者になったが、それからもこの国の腐った連中にはさんざん煮え湯を飲ませてやった。 ザマアミロ!

 それから冒険者ギルドに加入し依頼クエストをこなしてギルドランクを上げ仲間も集めたし、ダンジョンにも潜ったりと、けっこう自由気ままな生活だった。


 夢中で駆け抜け、二十数年が経った。

 俺は地球で妻と子どもが俺の帰りを待っていると信じて、これまで何とかやってきたが、最初の頃は突然の俺の失踪で妻や子どもは大丈夫か、苦労していないか、病気や怪我をしていないかとか、メシはちゃんと食えているのかなどの心配ばかりして気が狂いそうになっていた。

 それから五年十年と月日が経つにつれて、この世界にも知り合いや仲間が増えていったが、家族のことを忘れたことはなかった。

 

 そんな時に、またこのゼント王国で勇者召喚の儀式を行うとの情報を得て、俺たちのパーティは急遽城に紛れ込んだところ、神崎真央という女の子が召喚された後であり、更にその子は無能扱いされ次の儀式の生贄にされそうになっていた。


 自分たちの都合で勝手に拉致しては、気に入らないと簡単に殺すなどと言う。こんな馬鹿げた話があるか! コロン王への憎しみが増すばかりだ。


 最早一刻の猶予もないと、止める小川と渡辺を振り切って、行き当たりバッタリで真央を助けたが、やはり上手くいかなかった。

 しかも結局俺に付き合って小川と渡辺も一緒に捕まってしまった。 スマンなと言うとあいつらは、尾崎さんと俺たちは仲間じゃないですか、水くさいですよと言ってくれ不覚にも涙が出そうになったのは、秘密だ。

 今は捕まった時に暴れた時に負った怪我に最低限の治療だけされて、牢にほったらかしにされている。 召喚の儀式の生け贄にしようと、スケジュールを調整しているのだろう。 

 そんな俺たちよりも、真央だけでも逃げきれれば良いが心配だ。 「おじさん」と言って慕ってくれ、俺の子より年は少し下かも知れないが、真央に自分の子を投影していてもたってもいられない気持ちになってしまった。 一応捕まったという話は聞かないので、うまく逃げてくれたんだろう。 


 そんなある日、城全体がざわついている。 牢番が話しているのを聞いたところによると、今この城にどこかの国の特使が来ているらしい。 そしてこの大陸でも一二を争う大国、ゼント王国の国王に抗議に来ているとのことだ。 どこの国か知らないが、この近隣にこの国に喧嘩を売るような度胸のある国があったかな? そんなことを考えていると、突然轟音が鳴り響いた。 地下牢にいても聞こえるなんて、どれだけ大きな爆発だったんだ!


 そうこうしているうちに、ますます爆発音や何かが壊れる音等がしてきて城全体が浮足立って、牢番もパニクッていやがった。 おいおい、こりゃどこかの国が攻めてきたのかと思っていると、それからいくらもしないうちに静かになり、近衛兵が降りてきて、俺たち三人をどこかに連れていくという。 一体どうなってんだ?


「おじさん!」


 地下牢から連れてこられた俺たちは、変わり果てた中庭に目を丸くしながら近衛兵についていくと、懐かしく二度とお目にかかれないと思っていた日の丸の国旗が目に入った。

 俺たちは見て目を見開き、信じられない面持だったが、さらに真央の姿を見て驚いた。


「おじさん、じゃない尾崎さん! この異世界に拉致された私たちを、彼らが日本から迎えに来てくれたんです! さあ帰りましょう」


「か、帰れるのか、俺たち……」


 尾崎たちはそれを聞き、その場に崩れ落ちて泣き出した。

お読み頂き、ありがとうございます。 話が短く、申し訳ありません。


誤字・脱字、矛盾などのご指摘は、やさしくお願いします。


感想を書いたりブックマーク登録をしていただいた方、本当にありがとうございます。


日に日にPV数やブックマーク数が増えています。 次回もなんとか早くUPできるよう頑張ります!!

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