第9話
うーん、話の流れってムズカしいです。
もしかしたら、手直しするかもしれません。
6/17 第9話をストーリーはそのままに表現等を少しいじりました。
「さっさと三人の日本人を連れて来い」
「貴様っ……! 調子に乗るなよ」
コロン王は圧倒的格下の存在と思っていた要の不遜で挑発的な物言いに、思わずキレる。
普段の王ならば、これほどの証拠を見せられても、捏造だ、陰謀だ、訳の分からない道具でこちらを陥れる気か!とヌケヌケと切り返す位は当たり前で、けして非を認めず尻尾を掴ませないタヌキ親父だったはずだ。
しかし王は、次々と披露される高性能で馴染みの無い道具類に恐怖を感じ、突きつけられた証拠に逆上する。してしまう。
それが要の思う壺だとも知らずに。
「近衛兵、一人も逃がさぬように取り囲め、魔法兵団、生け捕りなどと生温い、殺れ!」
王の命令を聞き、要がニヤリと嗤う。
「花月、やれ」
花月に指示を出すと、すぐにそれは起こった。
ドン!! ドン!! ドン!! ドカーン!!
突然城の各所で大爆発が起こり、爆音が轟き閃光が奔る。
「キャー!」「だ、誰か、誰か来てー!」「う、うわー!!」「め、目が~!!」「ど、どうなってんだ!?」「部屋の隅の小さな樽が、小さな樽が、樽がいきなり爆発したぞっ!!」
爆発に伴い、各所から悲鳴や怒号が飛び交う。 一部にどこかの大佐のような悲鳴が混じっていた。
「な、何が起こったのだ!」「誰ぞ、見てまいれ!」「人をやって、報告させよ!」
コロン王や宰相、近衛兵団の者たちが、騒ぎ出す。
ドカーン!! ドカーン!! ドカーン!! ドカーン!!
爆発音は城だけではなく、城下の街の方からも聞こえてきた。
城はこの街を造る際に山を背にした高台に造られており、城下の街並みがよく見えるが、爆発は城下の街にまで広がっているらしく、派手に煙が上がっているのが見える。
「かぎや~! たまや~!」
要の威勢の良い掛け声が響いたが、若い真央には何の事だか分からなかった。 真央にはそれよりも気になることがあった。
「諏訪さん、城内の爆発と城下の街の爆発、ずいぶん大きく感じたんですが、怪我人とか出てませんよね?」
「神崎さん、拉致されてきたあなたが、この国の人々のことまで心配するなんて、あなたは本当に優しいですね。 ……勿論、大丈夫です。 この爆発は非殺傷の閃光音響手榴弾による爆音と閃光ですから、怪我人等はいません」
「そうですか、良かった。……後、城下町のほうは?」
「城下町の爆発ですが、城に来る前に街を見て回った時に、目星を付けていた建物に仕掛けました」
「打ち合わせにあった物件ですね」
「ええ、庶民を虐げる悪辣な上級貴族の屋敷と、その貴族と癒着しやりたい放題の悪徳商人の屋敷と店と倉庫、それとその商人の私兵と化した街の破落戸のアジト、さらに鼻薬をかがされて傍観していた街の警邏隊の詰所も吹き飛ばしました。 勿論、周囲に一般庶民がいないのを見計らって仕掛けてありますから、目立つ音や煙が見えても、火事も起こらないですし一般庶民に怪我人もいません。 吹っ飛んだのは悪人だけです。 狙ったところ以外には被害を出さない。 これくらいのことは、造作もないことです」
要と真央が小声で話しているうちに、王たちは動揺しながらも、この事態の首謀者が誰かわかったようだ。
「き、貴様か! 貴様がやったのか!?」「あぁ、私の屋敷が!」「まだ仲間がいたのか!」
どうやら爆発で吹き飛んだのは、サンドマンの屋敷だったようだ。
「花月、次のヤツ、やれ」
王の左右にいた近衛将軍と主席魔法使いが同時に構える中、要は花月に次の指示を出す。
近衛将軍は立派な剣を抜き、主席魔法使いも立派な杖を立てて魔法の詠唱に入る。
そんなゼント王国側のバタバタした対応を見て、真央だけが不安そうに要に身を寄せているが、要や部下たちは特に慌てるでもなく傍観している。
まるで、この後どんな出来事が起きるのかを、知っているような落ち着きぶりだ。
彼等が王の命令で要たちに向けて、正に攻撃をしようとしたタイミングで、王の肩にフワリと降りてきたモノがある。
それは日本人なら見たことがある人も多いだろう、ホタルの光りに似たモノだが、勿論ホタルではない。だがこのホタルに似た正体不明の光りの粒は、空から次々にフワリフワリと舞い降りてくる。
「な、なんだ、この光りは?」
王や主席魔法使いが掌に受け止めた光は、雪のように溶けて消えるが、雪のように冷たくはないし、溶けて水になることもない。 ただ消えるのみだ。
これは何かの自然現象なのか、しかしそれにしてはこのタイミングは不自然だし、こんな現象は今まで見たことも聞いたこともない。
では何かの攻撃なのか、しかしそれについても痛みや毒等の状態異常もない。
突然の現象に、王も近衛将軍も主席魔法使いも空を見上げて戸惑い、どうするべきかとっさに判断できないでいた。
そうこうしているうちに、光は中庭全体に、ドンドン降り注ぐ。
「キレイ……」
真央がうっとりしながら両手で水をすくうように、光の粒を受け止めている。
「さて、もうそろそろかな? コロン王、熱くなっているようですが、あまり迂闊な行動は控えた方が良いですよ。 じゃないと、また爆発するかも知れませんよ。 吹き飛ばしたいところはまだありますので」
「き、貴様ぁ!」
真っ赤になって喚く王に、要はまるで聞き分けのない子どもを諭すように話す。
それがますます王の神経を逆撫ですることを分かっていながら。
「あんまり怒ると頭の血管が切れますよ? あなた方があまり軽々に行動すると、今度は一般人にも少なくない被害が出る、かも知れません」
「一般人等知ったことか! 何をしている! あいつらを殺せ!」
王が再度、部下に命じる。
「しかし、王! またもや街中で爆発したら、国民に被害が」
「愚か者! 爆発など嘘に決まっているだろう! でなければ、最初の爆発でもっと被害が出ておる。 あいつらの力はこれが限界よ!」
王が唾を飛ばして力説すると、宰相やサンドマン公爵たちも兵に攻撃を命じる。 王の説明を信じていないが、命令に逆らえない近衛将軍と主席魔法使い。
「対話と武力は交渉の両輪。 今度は我が国の武を見てもらおうか。 ス〇さん、カ〇さん、懲らしめてやりなさい!」
要の言葉に、敵兵に囲まれてもまるで動かなかった要の部下たちが、初めて動きだす。
それぞれが自分の得意な獲物を取り出す。 ある者は刀、ある者は二丁拳銃、ある者は弓と、ある者は槍と、遠近支援と各々がバラバラな武器だが、どれもよく使いこまれた銘品だ。
因みに部下たちが取り出した武器類だが、とっさの時に必要な武器や医薬品その他の道具類は、男女共に支給され現在身に着けている腕時計にしまわれており、持ち主の意思一つで瞬時に取り出せるようになっている。 さすがに四次元鞄のようにはいかず、しまえる物の大きさ、重さ、数等に制限はあるが、鞄にしまわれている膨大な数の物の中から、瞬時に自分の獲物を取り出すのは難しいので、この即効性の腕時計とほぼ無限収納の四次元鞄を皆が使い分けているのだ。
コロン王は剣や弓に混じって、またもや見慣れぬ道具を持ちだす者たちに気付く。
「やれっ、 一人も生きて帰すな!」
王の号令を受け、最初に魔法使いたちが魔法を放ち、そこに魔法で身体強化した近衛兵たちが突っ込む。
――いつも通り、そういう手筈で攻撃しようとして、やっと異常に気が付いた。
「ま、魔法が使えません! がっ!」「だ、駄目です、魔力が集まりません! う、うわあああああっ!」
「そんな、なんで装備品が一切反応しないんだ! グフッ!」「身体強化出来ません! ぎゃあああ!」
訳も変わらず騒然とする近衛兵団や魔法師団の団員たちに、容赦なく切り込み、なぎ倒し、ブッ放つ要の部下たち。
「正気かい!? 戦闘が始まっているのに、敵から目を反らすバカがいるかよ! ホイ一人目、次っ!」
「おやおや、どうしました? 魔力が使えない? それはさぞお困りでしょう、えい!」
「若いヤツラに実戦経験を積ませるのには、とても良い的だ。 お前ら落ち着いて、しっかり狙えよ!」
コロン王たちは今何が起きているのかが、全く理解できていなかった。
故に、彼らには自慢の近衛兵団と魔法師団が瞬く間に数を減らしていく様を、ただただ茫然と見ているしかできなかった。
「さて」
コロン王は自身のすぐ真横でした声に、思わずビクリと体を揺らす。 美しいが、今一番聞きたくない声であったからだ。
王がおそるおそる声のした方を見れば、すぐそばに泰然自若とした要とあまりに一方的な戦況に茫然自失の様子の真央が立っていた。
「早く近衛兵たちを引き上げさせた方が、良いですよ。 私の部下たちは、武器を持っている敵に、容赦しませんから。 あ、因みにいま暴れている部下たちは、国同士の話しあいに必要な事務方の文官だから」
要の姿にビクッと体を震わせる王に、要は親切にアドバイスする。
「文官だと? どう見ても歴戦の傭兵だろうが!」
王が吠えるように反駁する。 真央も不本意そうにしながらも王の言葉にうなずいている。
「いやいや、彼らは自衛のための訓練だけはクリアしたけど、正真正銘の文官。 もし私が武官が必要だと判断した場合、一声掛ければ日本国政府直属の機関、異世界転移召喚事故対策部ファンタジー課・被害者奪回班の精鋭エージェント5000人が集まってくるから。 彼らは正真正銘の精鋭だから」
要が街のヤンキーの頭のようなことを言うながら、ある方角を指差す。
「あ、それから伏兵に期待してもムダですよ。 うちの文官優秀だから。 ほら」
要が指差す方を見て、コロン王は見なければ良かったと後悔する。
そこには、宙に浮いた要の部下の文官たちが、二階の窓や死角となる屋根や柱の影に、携帯用ロケット弾を撃ち込みまくっている。 というか、「月までぶっ飛べ!」と叫びながら、壁に向けた両腕が肘から火を噴いてぶっ飛び、壁ごと伏兵をまとめてなぎ倒している豪の者までいる始末だ。
ついでに「クソ上司めっ、おれに対策部への出向押し付けやがって、覚えていろよ!」と涙目で言っている者、「この腕、ゴキゲンだぜ!」と笑う戦闘狂、「訓練ヤダ、訓練ヤダ、訓れ(以下略)」と虚ろな目で物騒な物をブッ放している者などが、そこここに見えたり見えなかったりした。 因みに王と真央はドン引きだ。
それでも王が躊躇っていると、要はその背を押す。
「ほらほら、早く三人の日本人を連れてこないと全滅ですよ。 因みに何が起こっているのか、説明する気はない。 が、あんたらの攻撃魔法や魔法の装備品が使えなくなったのは、光の粒と勿論関係があるし、我々はこの光の粒を王国全体に降らす準備があるとだけ言っておく」
その言葉を聞いた王はガックリとうなだれ、近衛兵団と魔法兵団に退かせ、そして地下の日本人三人を連れてくるよう命令する。
真央はこの言葉に、思わずガッツポースが出て、要とハイタッチまでした。
やがて心待ちにしていた尾崎進と他二名の日本人が連れて来られた。
要は部下の一人に命じて、日の丸の国旗を掲げさせる。 日本の使節団だと思わせ、尾崎たちに安心してもらうのが狙いだ。
連れてこられた尾崎たちは、日の丸を見て目を見開き、要の横の真央を見てさらに驚いている。
「おじさん、じゃない尾崎さん! この異世界に拉致された私たちを、彼らが日本から迎えに来てくれたんです! さあ帰りましょう」
「か、帰れるのか、俺たち……」
尾崎たちはそれを聞き、その場に崩れ落ちて泣き出した。
お読み頂き、ありがとうございます。 話しの進行が遅く、申し訳ありません。
誤字・脱字、矛盾などのご指摘は、やさしくお願いします。
感想を書いたりブックマーク登録をしていただいた方、本当にありがとうございます。
おかげ様でやる気がどんどん上がっております!!