表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ありがとう

作者: キリトン

「おばあちゃんお見舞いに来たよ〜」

「おやおや、今日も来たのかい。病院なんて面白いことなんて一つもないだろう」

「そんなことないよ。おばあちゃんのお話おもしろいよ」

「これはこれは、じゃあ今日もお話をしようかね」

「やったー、今日はどんなお話をしてくれるの?」

「そうだね、今日は少し昔話をしようかね」

「おばあちゃんの昔のお話?」

「そうだよ、お前がまだ産まれてなくて、おばあちゃんがピチピチだったころのお話だよ」

「わーい、どんなお話なんだろう」

「ありがとうのお話だよ。じゃあ、聞いておくれ」ーーーー



私は、お母さんから「感謝は言葉に表さないとわからない」と育てられた。

お母さんっ子だった私は、その言葉の通りどんなに小さなことにでも「ありがとう」を忘れなかった。

お菓子をもらえば「お菓子をくれてありがとう」

一緒に遊んでもらえば「遊んでくれてありがとう」

そして、ある時学校で「あなたたちのお母さんやお父さんはとてもあなたたちを大切に思い、また大切に育ててくれています。感謝の気持ちを忘れないようにね」という授業があった。

いつも「ありがとう」を忘れなかった私はもちろんその気持ちをお母さん、お父さんに伝えようと思った。

けれど、家に帰ってお母さんの顔を見ると「産んでくれてありがとう、育ててくれてありがとう」と言うのがなんだか急に恥ずかしくなった。

結局、言わないまま言おうと思ったまま長い月日が経った。

私も結婚して、お母さんの元を出て行き遠くで過ごしていた。

娘も大きくなったある日、その娘が家に帰ってきて「お母さん!いつもいつも、ありがとう」と言ってきた。

びっくりして「どうしたの?」と聞くと娘は、「学校の授業でお母さんは私を大切にしてくれてるから感謝の気持ちを忘れないようにって教わったの」と言われた。

その時、私はお母さんに伝えられていない、伝えなきゃいけないと思ったよ。

もちろんすぐにお母さんに電話した。

受話器に耳を当てて少し緊張しながら待っていたらお父さんが出た。

お母さんに変わってもらおうと思ったけどお父さんの様子がおかしかった。

「お父さん、どうかしたの?」

「ちょうどよかった。いま、お前に電話しようと思っていたところだったんだ。すぐにこっちに帰って来られないか?」

「何かあったの?」

「落ち着いて聞いてくれ、お母さんが買い物帰りに事故にあって………



今晩が峠だそうだ…。」

「えっ…」

その話を聞いた時、一瞬言葉の意味が理解できなかった。そして、理解した瞬間に頭が真っ白になったよ。

その後のことはよく覚えていない。気がつくと目の前には色んな機械に繋がれて意識のないお母さんがいた。

病院についた時は出来る限りの処置はされていて後は目を覚ますか覚まさないかを待つだけになっていた。

「相手の居眠り運転だったそうだ…。先生の話では今夜を乗り切っても恐らく目は覚まさないだろうって。」

「嘘…でしょ。この間帰った時はまだ元気だったじゃない。まだまだこれからだって、100歳まで生きてやるって言ってたじゃない…それなのになんで…」

「お父さんは少し電話してくるから、お母さんに話しかけてやっててくれ」

「わかった…」


「お母さん、大丈夫だよね?ちゃんと目を覚ますよね?だって怪我なんてしてなさそうだもん。血だって全然出てない。それに、まだ話したいことたくさんあるんだよ?そうだ、今日、娘が私のところに来て、ありがとうって言ってくれたの。学校で教わったんだって。それで、私も昔にそんな授業を受けて、お母さんにありがとうって言おうとして言えなかったの思い出したよ。だから、今日言おうと思ったんだよ。お母さん、私を産んでくれてありがとう。育ててくれて、愛してくれてありがとう。言葉だけじゃ足りないから色々とお母さんにしてあげたいことだってあるんだよ。だから目を覚ましてよ」

私はお母さんにずっと話しかけ続けた。ーーー



「それでおばあちゃんのお母さんはどうなったの?」

「お母さんはそのまま目を覚まさなかったよ。」

「………死んじゃったの…?」

「そうだよ」

「悲しくなかった?」

「悲しかったさ、お母さんが死んだことはもちろん悲しかった。何より最後まで恥ずかしくて感謝をきちんと言えてなかったことに後悔したよ」

「そっか…」

「そうだよ。だからお前は感謝をきちんと恥ずかしがらずに言葉にしないといけないよ?」

「そうだね!おばあちゃん、いつもお話ししてくれてありがとう!大好き!」

「あらあら、嬉しいことを言ってくれるねぇ。」

「そう?」

「あぁ、すごく嬉しいよ…」

「おばあちゃんどうかしたの?」

「少し話しすぎたかな。眠くなってきたよ」

「ほんと?じゃあ寝ないといけないね。」

「そうだね。少しだけ寝るよ」

「いい夢が見られるといいね!」

「そう…だね…。」

「大丈夫?早く寝ないと」

「あぁ…お母さんが待ってるみたいだからね…………」

「おばあちゃん?寝ちゃった?お母さんの夢見てるのかな?ちゃんとお話し出来たらいいね」





-お母さん-

-どうしたの?-

-いつもありがとう!大好き!-

-私も大好きだよ-


今度はちゃんと言えた。



-fin-


初めての創作、初めての投稿なので、文章、文法、ストーリー等拙い点が多いかもしれません。

しかし、がんばって書いたので多くの人に読んでいただき、感想など書いていただければ嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ