遺跡にARRIVAL
湖を抜け、さらに奥へ進んだ。
強敵も増えてくるということで慎重に先へと進む。
「ん?かなり大きなものが……あれは何でしょう」
そう言った響の先には洞窟の高さの半分ほどの大きさもある大きな何かがあった。
「あれはアテマ・エレファント。かなりの巨体だが、性格はおとなしく、襲いかかってくることはほとんどない。刺激しないように進んでいこう」
アテマ・エレファントはこちらの気配に気がついたのか、むくっと立ち上がった。
「あれ?こちらに気がついたみたいですよ?」
と言ったのも束の間、アテマ・エレファントはこちらへ向き、走り出した。
「こっち向かって走って来てない?しかも、なんかやばい雰囲気……」
「退避だ!さっきの湖まで戻り、戦う」
「足止めになるかな?"アイシクル"」
アテマ・エレファントの足を引っ掛けるように氷のアーチを作った。
が、全く意味がなく、粉々に砕け散った。
「意味ないしぃ~、ならば!"グランド・ウェーブ"」
迫ってくるアテマ・エレファントの足元を揺らし、バランスを崩させる。
足がもつれ、そのまま転倒する。
どっしゃ~ん!
「雪ナイス!」
響たちは湖まで戻り、広い空間でアテマ・エレファント迎撃を行う。
「いいか、討伐が目的じゃない。弱らせる程度でいい。だが、あいつにはパr5アライズは効果が薄い。気絶させるんだ」
「わかりました」
「了解!」
雪が"グリーン・スパイラル"を使うと、アテマ・エレファントの足元から無数の植物のツタが生え、足を絡め取った。
動きが鈍ったところへ響がダッシュで駆け寄り、脳天へ[火焔刃]を叩き込む。もちろん威力は抑えてある。
一瞬グラッと体を揺らし、倒れた。気絶したようだ。
「もはや、私の出番はないようだ。2人とも強くなったな」
「ありがとうございます」
「ひひひっ、やった~」
「こいつも本来襲って来ることはないはずなんだが、この洞窟に一体何が起こっている」
「巨大化に凶暴化、なんなんでしょうね」
「もっと奥に進んでみたらわかるんじゃない?ここで考えてもわからないしね」
「ユキの言う通りだな。今は奥へ進んでみよう」
さらに奥へ進む一行。
洞窟に入ってからすでにかなりの時間が経っている。
その間にも、巨大化したコウモリ型のモンスターや全くの別種と言っていい程に変異した魔獣などと遭遇した。それらも殺さず、無力化していった。
「それにしても、この洞窟大きな道から小さな道が沢山できてますね」
この洞窟は例えて言うなら、たんぽぽの根のように、大きな道|(主根)|とそこから小さな道|(側根)|が沢山あった。
「小さな道同士くっついていることもあり、一度入ると迷ってしまうこともある。また、ほかのモンスターの寝床になっていることも多いから、入らない方のがいいだろうな」
「なるほど」
「そろそろ一番奥へ着いてもよい頃なんだが……」
「奥には何があるの?」
「大昔の遺跡があると聞いたことがある。なんでも、そこにはこの世界の創造主の1人の石碑があるらしい」
「創造主ですか……」
「創造主カーリディン。水を司り、枯渇した土地に潤いをもたらし、人々を繁栄させたという」
「実際にいたの?」
「ああ、この世界が完成したと同時に神世界へと帰ったと伝わっている」
「その創造主の石碑がある遺跡がこの先にあるんですね」
近づくに連れ、空間を満たす魔力が多くなるのを響は感じた。
さらに進むと、さきほどの湖よりは小さい空間があり、その中央には魔法陣があり、さらにその魔法陣を囲むように8本の柱がある。柱にも模様が入っていて、その模様はまるで文字のようだ。
その魔法陣の中央に
粉々に破壊された石碑があった。
その破壊された石碑からはキラキラと光が飛んでいた。その光は空中を漂い、空間を満たしていた。溢れ出した光はやがて遺跡からも出て、洞窟を漂う。
「これはどういうことだ。なぜ石碑が……」
「ひどい有様……誰がこんな……」
「溢れ出ているのは魔力でしょうか」
「ああ、間違いないだろう。これで全ての理由がわかった。おそらく、石碑が破壊されたことで、大量の魔力が溢れ出し、その魔力が洞窟を漂い、小さな道などに溜まり、そこを住処にしていたモンスターが魔力を多く吸収しすぎて、巨大化や凶暴化などの変異を起こしたんだ。さきほどの巨大魚は水に溶けた魔力を多く吸収しすぎたのだろうな。原因がわかればあとの対処もわかってくる。ユキは魔力吸収魔法も使えるか?」
「"マジック・ドレイン"を使えばできるよ」
「ならば、変異したモンスターから魔力を吸い出せれば、元のモンスターに戻るはずだ」
「じゃあ、助かるんですね」
「ああ、だが、この石碑から溢れる魔力をどうにかせねばならん。まぁ、それはギルドに任せればいい。この報告と、道中のモンスターだけでも元に戻しながら戻ろう。ユキに負担をかけるようで申し訳ないが、頼んでもいいか」
「もちろん」
「じゃあ、よろしく頼む」
読んでいただきありがとうございます。
次話では響と雪の旅の目的ができます。
次話もお楽しみに