新スキルGET
響、雪、ドミニエルは以前モーナット・グリズリーと遭遇した場所に到着した。
雪の"ライト"で洞窟を明るく照らしているものの、かなり不気味な雰囲気である。
洞窟の奥の方は全く見えず、不安を掻き立てる。
「さぁ、もっと奥深くに行ってみるか」
「あんまり気が進まないですが」
「まぁ、そういうな」
ドミニエルがそういうと、一行はさらに奥へと向かった。
しばらくは雑魚モンスターと時々遭遇する程度だった。
響も[火焔刃]が使えるようになったことで、雑魚モンスター程度なら全く苦労せず倒せるようになっていた。
ペタッ……ペタッ……
「え?え?足音?」
雪が音の原因を探そうとキョロキョロしている。
「この足音、イツラ・フロッグか?」
どんどん足音は近づいてきて、暗闇から姿を現した。なんと洞窟の壁に張り付きながら移動している。
イツラ・フロッグは蛙型モンスターで全身水気を帯びており、ぬるりとした液体が全身を濡らして、"ライト"の光を反射している。全体的に赤く、紫の斑点がいくつかある。
獲物を見つけて、舌を伸ばし、唾液が滴る。
「なんですか?あのモンスター」
「イツラ・フロッグだ。肉食性のモンスターでな。あいつももっと奥深くにある湖に住んでいたはずなんだが……」
「なんであいつ壁を移動できるの?」
雪はその不気味な姿に自分の肩を抱いている。
リアルな蛙は好みではないらしい。
「あれは固有スキル[ハンギング]だ。そのスキルによってあいつは壁を移動することができる」
「固有スキル?」
雪は頭に「?」を浮かべている。
「まぁ。基本的にはユニークスキルと同じものなんだが、同種のモンスターなどは同じ固有スキルをもつ。人がもつスキルをユニークスキル、モンスターなどがもつスキルを固有スキルと区別している」
「そうなんだぁ。覚えておこう」
「少し試してみたいことがある。雪、あいつを壁から打ち落とせる?」
「ううっ、少し気持ち悪いけど、魔法を使うならなんとか。それ!"ファイヤー・ストーム"」
炎の竜巻がイツラ・フロッグに向かって放たれる。
グァッ
危機を察知して回避しようとしたようだが、あっけなく炎に巻き込まれ、地面に落下する。
すぐさま壁に逃げようと走り出す。
「よしきた!」
響はセイバーに魔力を込め、壁を上り始めたイツラ・フロッグを切りつける。
次の瞬間、頭にあるイメージが浮かんだ。
(これは……セイバーじゃなく……僕?)
頭の中に壁を走る自分の姿が浮かんだ。
[壁脚風]
これが新しく手に入れたスキルのようだった。
そのスキルを使い、壁を疾駆する。
「おお~、これは楽しい!」
「楽しいのはわかるけど、早くその蛙倒してよぉ~、私そいつ苦手なんだからぁ……」
「わかったよ」
壁に逃げたイツラ・フロッグを自慢の俊敏性ですぐに追いつき、[火焔刃]で一刀両断した。
「うへぇ……」
雪がイツラ・フロッグの亡骸をみて、露骨に嫌な顔をする
響は雪たちのところへ戻り、セイバーへの魔力供給を止める。
「響、すごいね!」
「ああ、なんという便利なスキルだ。ユニークスキルだけでなく、固有スキルまで我が物とすることができようとは……」
「自分でも驚いています」
「私もすぐに追い抜かれてしまうなぁ……」
そんな話をしながら、さらに奥へと一行は進んでいった。
読んでいただきありがとうございます。
これから響もどんどん強くなっていくと思います。雪の成長にもご期待下さい
次話でももう少し洞窟探検が続きます。