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回想:Poof

 一般に子供の頃には魔法適正があっても魔法を使える者は少ない。

 しかし、生まれ持ったユニークスキルは異なる。

 魔法は大人から魔法の使い方を学ぶことで使えるようになるが、スキルは使い方が感覚的にわかるという。

 親は子供がユニークスキルを使えるとわかると、その使い方などについて教育し、大抵は使わないように(しつ)ける。

 だが、ドミニエルの場合は違った。

 

 ドミニエルはユニークスキルの強さが分かっており、親にバレないように森などで弱い魔獣相手にスキルの練習をして、そのスキルの使いかたを独学で研究していた。

 ドミニエルは正義感が強かった。

 自分が強くなれば多くの友達を守れると思っていた。

 そして、だんだんとスキルの扱い方が分かり始めてきた頃事件は起こった。


 


***ドミニエルがまだ小さい頃***


「じゃあ、気をつけて行ってくるんだよ」

「わかってるよ、お母さん」

「僕がいるから大丈夫だよ」


 今日マドロディとドミニエルは近所の友達と森へ遊びにいく約束をしていた。

 

「じゃあ、ちゃんとロディの面倒みてるんだよ」

「わかった。行ってくるね」

「いってきま~す」


 


 集合場所の噴水前にいくとまもなくドミニエルとマドロディの友達3人がやってきた

 体格が少し大きく、みんなのリーダーのような存在の男の子がラルス。

 少し茶色かかった髪を後ろで束ねている女の子がシェスカ。

 少し小柄で弱気そうなメガネの男の子がセベサ。


 この5人でよく近くのマヤトリ森に遊びに行く。

 春は山菜を採り

 夏は虫を採り、川で遊び

 秋は松ぼっくりやきのこを採り

 冬は雪で遊ぶ


 マヤトリ森はすでに5人の庭同然だった。


 しかし、一箇所だけ行ってない場所があった。

 かなり強いモンスターが住んでいるという、みんなが「魔獣の森」と呼ぶ場所。

 子供が好奇心旺盛といえど、雰囲気で近づいてはいけないとわかる場所だった。


 


「知ってる?最近突然人がいなくなっちゃうことがあるんだって。しかも私くらいの子たちが」


 5人で森を歩いているとシェスカがそんな話をしてきた。


「なんだそりゃ?怪物か?怪物なら俺が倒してやるぜ!」


 ラルスがそんなことをいいながら見えない敵に向かってパンチやキックをしていた。


「でも本当だったら怖いね」


 セベサは少し身震いした。


「気を付けないとですね」

「そうだね。この森のモンスターかもしれないよ?」


 ドミニエルは少しふざけた口調でそんなことを言っている。


「怖いこと言わないでよ」

「そうよ、あそこに近づかなければ大丈夫だってお母さん言ってたもん」

「結構近くでも起こってるみたいだよ?」

「怖いですね」

「なに、俺がいるから大丈夫さ」




 そんな会話をしていると、やがて目的地の川に着いた。


「やっぱり誰もいないな」

「今までだれかいたことないでしょ?」

「それもそうだった」

「僕たちはあっちで着替えるから、シェスカとロディは向こうの岩陰で着替えてきなよ」

「うん。そうする」

「いってきます」


 女の子2人は岩陰へ向かって歩いて行った。


「さて、俺たちも着替えようか」

「さっさと着替えて遊ぼうぜ」

「そうだね」


 みんな着替え終わり、水着になった。


「さぁ、遊ぼうぜ!」

「そうね。たくさん遊びましょ」

「私も遊びたいです」


 ラルスは ヒャッハー といいながら川へ飛び込んだ。


「僕もー」


 ドミニエルも続いて川に飛び込んだ。


 さらにシェスカ、マドロディ、セベサと続いて川に入った。


 5人は魚を採ったり、葉っぱを船にして流したり、石切をしたりなど色々な遊びをした。




 楽しい時間はあっという間に過ぎる。

 青かった空は真っ赤に染まり、風も冷たくなってきた。


「そろそろ帰らなきゃね」


 ドミニエルがそういうと


「帰りが遅くなると母ちゃんに怒られるからな」

「暗くなる前に帰りましょう」

「暗い道怖いから嫌だ。早くしようよ」

「もう、セベサはまたそんなこと言って」

「じゃあ、また着替えてここに集まろう」



 女子2人と別れ、男子たちも着替え始めた。




「今日も楽しかったな」

「そうだね。明日はどこ行く?」

「う~ん。虫取りでもしたいよね」

「いいな。そろそろいっぱい虫出てきたし」


 着替えながらそんな会話をしていると



「おにいちゃ~~~ん!!!!!!!」



 普段おとなしいマドロディが大声を出して走ってきたことに、男子たちは何事かと慌てた。


「ど……どうしたんだ?」

「ハァ……ハァ……。い……今。シェ……シェスカちゃんが……」

「シェスカがどうしたんだ!?」


 ただ事ではないマドロディの様子に男子たちに緊張が走った。

 

「シェスカちゃんが連れて行かれたのっ!!」

「「「ッ!!」」」


 あまりの出来事にとっさに3人とも返事ができなかった。


「どういうことだ?シェスカが連れて行かれたって」


 マドロディは呼吸を整え、話し始めた。


「さっき着替えてて、私少しトイレ行きたくなって、行ってくるねって言って、戻ってきたらシェスカちゃんが誰かわからない人に連れて行かれちゃったの。私怖くなって隠れちゃった」

「どんな感じの人だった?」

「すごく大きくて怖かった」

「顔とかは?」

「あまり見えなかったけど、顔にバッテンの傷があったの」

「まだ近くにいるかも知れない探してみよう」

「そうだな。いいか、絶対俺から離れるなよ」

「わかった」「うん」「はい」


 ラルスが先頭で進み、その後ろにみんなが付いていく。




 その日、空が少し暗くなるまで探し回ったが、全くシェスカを見つけることができなかった。



 シェスカがいなくなったことにショックを受け、暗い雰囲気の中家に帰った。


 事件のことを話し、みんな絶対に怒られると思ったが、どの親も真っ先に自分たちの心配をしてくれ、すぐに街の兵士に連絡し、捜索隊が派遣されたが、暗いこともあり発見には至らなかった。



 その夜、4人とも全く眠れなかった。





  読んでいただきありがとうございます


 今回からドミニエルの昔話になります。

 昔と今では印象が違いますね(当たり前ですが)。


 次話でシェスカはどうなってしまっているのか?

 次話もお楽しみに。

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