プロローグ
****4月某日****
――――廊下――――
見渡す限りの闇。
真っ暗だ。
さっきまでトイレに行こうと思って廊下を歩いていたはずなのに……
「……何も言わずついてきて……」
「……っえ?」
そして
時間は少し遡る
****4月****
校門前 ここに期待と不安を抱え込んで登校した少年がいた
「今日から高校生かぁ 不安すぎる……」
僕、円城寺 響。
成績は上の下、少しだけモテたことがある。幼稚園の頃に。
見た目はまぁ普通。黒髪を少し長めにして、ピアスとかはつけてない。
長かった高校受験もおわり、第一志望の高校へ入れた。
毎日の演習問題、土日の模試、やり直し、宿題の山……あぁ……思い出したくない。
今年の受験生のみんな!がんばれ!!
「おっと、さっさと入学式場にいかないと―――っとその前にクラス確認しないとね……3組か」
その後方、一人の少女が校門前の坂道を登っていた。
「あれ?あの子はもしかして響君かな?違うクラスか、まぁ仕方ないかな。ひひひっ、でも知ってる人が同じ学校でよかった」
入学式場は体育館ではなくアリーナと呼ばれる場所で行われている。
壁を紅白の布で覆い、いかにも式典ですという雰囲気だった。
眠くなるような校長先生やPTAの役員の話も終わり、担任の発表は行われた。
「2組の担任は・・・先生です。――――3組の担任は樽井先生です―――。4組は―――」
やばい、入学初日からすごく眠い。樽井先生……か、名前のとおり体型が樽みたいだ。でも悪い先生じゃなさそうだな。
「担任の先生方、クラスの列の前へお願いします」
「担任の樽井だよろしく。これから教室へ移動するぞ。教室に行ったら自己紹介してもらうからな!
何かひとつ芸を考えておけよ?ワッハッハッハー」
愉快な先生だな。嫌いじゃない。
先生の先導でクラスメイト全員教室へ移動した。
クラスではみんな思い思いに話している。早速女子と話してる男子がいる。
「コミュ能力の高いやつめ。」
響がそんなことをぼやいていると
「さっき言った通り自己紹介してもらうぞ!最初は出席番号1番からでいいよな。先生から自己紹介するから、その間に考えておいてくれ。
先生の名前は樽井 仁、今年で35歳だ。アラフォーだな。好きなものはカツカレーにカツどん。担当科目は体育だ。体育のときは厳しく行くからな?覚悟しておけ―――――」
長い。この後10分ほど奥さんとの出会い、子供のことがどれだけ可愛いか、教師を目指した理由などなどずっと話していた。
「少し短い自己紹介になってしまったが、出席番号1番、青木 恵理さん。いいかな?」
「大丈夫です。私の名前は青木 恵理、好きな物はerg―――」
自己紹介されても終わったら9割方覚えてられないんだよね。まぁ、話すときにまた聞くだろうし、自己紹介のときに全員覚えろというのも酷な話だろう。……ん?
「ただの人間には興味ありません、この中に―――」
その自己紹介を実際に聞くことになるとは思わなかったよ。ラノベは好きだから読んだことある。超有名な、長○がかわいいラノベだろ。あ~あ、途中から恥ずかしがって声小さくなってるし。女子の目線が痛いよ。
無難に自己紹介も終わり、簡単なこれからの日程を聞いて今日は下校となった。
****次の日****
入学2日目、まだ今日は授業はないらしい。離任式や部活動紹介で終わるそうな。
「本校の部活動紹介は以上となります。いい部活動は見つかりましたか?」
さて、中学時の部活の美術部を続けようか、でもサイクリング部も捨てがたい。文芸部か、楽しそうだなぁ
う~ん。部活見学行ってみようか。
この高校は部活動が結構盛んである。サッカー部は特に強いらしい。校風もかなり自由で、不良のようなひともほとんど見かけない、髪を染めたりする人はいるが。部活動もかなり自由で、体育系は充実してるし、文系の部活は変り種も少なくない。超常現象部やタロット部、昼寝部、世界遺産研究部部、艦隊司令部、P部、ラブライ部……etc
****帰り道****
「ラクロス部はいりませんかー」
「柔道部どうよ?おにいちゃんいい体してるね、ちょっとこっちこない?」
「タロット占いやってまーす」
「入ってみない?野球部。甲子園を目指そう」
「けいおん!新歓ライブを剣道場でやってまーす!ぜひきてくださーっゲホゲホ」
「サーバー開放今日の19時からです、提督になりませんかー」
「僕と契約してプロデューサーになってよ」
最後らへんのは絶対おかしいよね。なぜ設立できたんだろう?
自由にもほどがあると思う。
いろいろカオスな学校だなぁ。
****職員室****
職員室は新年度ということでかなり騒がしくなっていた。
コーヒーのいい香りがする。
そこに一人の1年生が尋ねていた
奥野 雪
黒髪でショート。スカートは少し長めで、いかにも清楚美人という感じである。
響とは家が比較的に近くて、幼稚園・小学校が同じだったが、中学では微妙に学区が違い別々の学校となってしまった。
「新しい部活の申請お願いします!」
「お?君は水間さんかな?新しい部活の申請をするにはまだ早いんじゃないのかね。まだ全部の部活動を見てないだろう。それらを見て回ってからでも遅くはないんじゃないのか?」
「私はこの部活をしたいんです。たしか、部員数が一人だと部費は支給されないが、部室は充てられるんですよね?」
「確かにそうだが、仮設という扱いで、1ヶ月以内に5人以上集めないと強制的に退却してもらうことになる」
「それでもいいんです。最低限必要なものは自分で用意します」
「わかった。この用紙に必要なことを記入して先生のところまで持ってきてくれ」
「わかりました先生」
ひひひっ、ここまでは順調。あとは、あの装置を学校に持ってきて響をうまく部活に誘えれば……
****数日後****
「こんなものかな。疲れた~」
ここは部室棟1階の教室である。雪は新しい部活を始めるため、必要な機材を持ち込んでいた。
2メートルはあろうかという大きな黒い箱、それは絶えずカラフルに光っている。その箱から太いケーブルが無数に伸びており、二つに分かれて教室に横倒しに、人が余裕を持って寝られるほどの大きさのカプセルにそれぞれ繋がっている。
これは雪の兄が趣味で作った体験型ゲームである。兄は極度のゲーム好きで、一人でこんなものを作ってしまった。しかし、兄は作っただけで満足してしまい、妹にそのまま渡したのである。
丁寧過ぎる説明書のおかげで雪一人でも接続することができた。ちなみに、ここまでは兄に持ってこさせた。
「響を連行してきますか、何かいいものないかな?ひひひっ、いいものあった」
そこにはカプセルを入れていた黒い大きな袋があった……
放課後の廊下、皆、部活動に行っているのか人通りは皆無だ
「決められないなぁ……」
響はいまだに部活を決められずにいた。
クラスにも馴染んできてる。名前もかなり覚えてきた。
まだ仮入部期間だが、クラスメイトはぼちぼち部活に入りだして、放課後は新しい部活に心を躍らせて向かっていく。
「今日はサイクリング部に見学しに行こう、その前にトイレ行っておくか」
小走りでトイレへ向かう
「トイレ、トイレー―――」
「みぃ~つけた」
バサッ……
「うわっ……?」
そして冒頭に戻る
まだ魔法世界に行ってません。
次回から魔法世界での冒険が始まります。
基本町を旅していきます。主人公が強くなるのは結構先になると思います。最初から無双だとだれてしまう気がするので。
気長によろしくお願いします